1995 年 57 巻 4 号 p. 721-724
患者は82歳の女性。初診の約10年前に左側頭部に硬貨大の黒色結節と右下顎部に皮下小結節が生じていることに気付いた。自覚症状はなく, 放置していたところ共に次第に拡大した。初診時, 前者の大きさは5×4cmでドーム状, 後者は7×6×3cmであった。組織学的に前者は表皮直下から真皮深層にbasaloid cellが充実性, 腺様, 嚢腫様に増生しており, 基底細胞上皮腫と診断した。また臨床的には茸状型と考えた。後者は粘液様物質内に異型性を伴う小型の上皮性細胞が塊状, 索状に浮遊しており, 管腔状を呈する部分もみられた。以上の所見より後者をmucinous carcinoma of the skin or salivary glandと診断した。