西日本皮膚科
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57 巻, 4 号
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図説
綜説
  • —サイクリン·cdk複合体—
    猪原 慎一, 北川 恵子, 喜多野 征夫
    1995 年 57 巻 4 号 p. 687-695
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    近年サイクリンとサイクリン依存性キナーゼ(cdk)の複合体が, 癌抑制遺伝子蛋白であるRb蛋白をリン酸化することにより細胞周期を制御していることが判明してきた。この機構がケラチノサイトに対する種々の増殖因子や増殖抑制因子(UV, TGF-βなど)の作用機構に関与している可能性が考えられる。またケラチノサイトの癌化には癌抑制遺伝子であるp53の変異によるサイクリン·cdkのキナーゼ活性の亢進, サイクリンDの過剰発現, bcl-2の過剰発現など, 細胞周期制御機構の異常が関与している可能性も示唆されている。このように最近の細胞周期と癌抑制遺伝子の研究の飛躍的な進歩によりサイクリン·cdk複合体がケラチノサイトの増殖, 癌化の共通のターゲットである可能性が高くなってきた。
症例
  • 菅野 優子, 金森 正志, 清水 正之
    1995 年 57 巻 4 号 p. 696-701
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    20歳の男性。アトピー性皮膚炎の治療中にブデソニド(ブデソン®)軟膏を外用し皮疹が悪化した。同剤による接触皮膚炎を疑い他のステロイド軟膏に変更したにもかかわらず, 皮疹はさらに増悪した。同時に内服していた薬剤による薬疹も疑ったが, 成分パッチテストの結果からブデソニドによる接触皮膚炎と診断を確定した。また皮疹が完全に消退する2日前に施行したパッチテストではビスダーム®軟膏·マイザー®軟膏·デルモベート®軟膏·リンデロンVG®軟膏にも陽性反応がみられたことから, これまでしばしば報告されているアムシノニドをはじめとするステロイドとの交叉感作を疑った。しかし皮疹改善後に再テストを行った結果, これらの軟膏はすべて陰性であった。以上よりステロイド外用剤を変更した後の皮疹の増悪および最初のパッチテストにみられたビスダーム®軟膏·マイザー®軟膏·デルモベート®軟膏·リンデロンVG®軟膏の陽性所見は, excited skin syndromeと考えた。
  • 石原 剛, 木下 忠嗣, 木村 達, 小野 友道
    1995 年 57 巻 4 号 p. 702-704
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    40歳の女性。妊娠8ヵ月に激しいそう痒を伴う水疱·紅斑が全身に出現した。組織学的に表皮下水疱で多数の好酸球を認め, 蛍光抗体法で基底膜にC3の線状沈着を認めたため妊娠性疱疹と診断した。プレドニゾロン内服にて皮疹は完全に消退, 再発も認めなかった。また無事出産し, 児にも異常を認めなかった。
  • —下腿以外にも病変がみられた症例—
    後藤 由美子, 松崎 令子, 三砂 範幸, 幸田 弘, 大塚 容子, 山本 匡介
    1995 年 57 巻 4 号 p. 705-708
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    66歳の男性の限局性粘液水腫の症例を報告した。患者は2年前よりバセドウ病にて加療されており, 両下腿は瀰漫性に腫大し, 象皮病様の外観を呈していた。また顔面, 両手も腫大し, ムチンの沈着が認められた。ステロイドパルス療法を施行し, 皮疹は著明に改善した。下腿以外にも限局性粘液水腫をきたした症例について文献的考察を加え報告した。
  • 久保田 由美子, 今山 修平, 中村 恭子, 橋爪 民子, 堀 喜昭
    1995 年 57 巻 4 号 p. 709-720
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    われわれは過去5年間に壊疽性膿皮症の5例を経験した。大動脈炎症候群を合併した37歳の女性, クローン病を合併した32歳の女性, 慢性関節リウマチで金療法を受けていた52歳の男性, myelodysplastic syndromeを合併した57歳と61歳の男性で, いずれも下肢に病変を有し副腎皮質ホルモン剤の内服が有効であった。このうち2例では皮膚病変が先行し後に内臓病変(合併症)が確認された。経過観察から皮膚病変の重症度と合併症の病勢は並行しない傾向にあった。発症部位と病歴から皮膚病変の誘因として全例に外的刺激が考えられた。
  • 坂 昌範, 北島 康雄
    1995 年 57 巻 4 号 p. 721-724
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    患者は82歳の女性。初診の約10年前に左側頭部に硬貨大の黒色結節と右下顎部に皮下小結節が生じていることに気付いた。自覚症状はなく, 放置していたところ共に次第に拡大した。初診時, 前者の大きさは5×4cmでドーム状, 後者は7×6×3cmであった。組織学的に前者は表皮直下から真皮深層にbasaloid cellが充実性, 腺様, 嚢腫様に増生しており, 基底細胞上皮腫と診断した。また臨床的には茸状型と考えた。後者は粘液様物質内に異型性を伴う小型の上皮性細胞が塊状, 索状に浮遊しており, 管腔状を呈する部分もみられた。以上の所見より後者をmucinous carcinoma of the skin or salivary glandと診断した。
  • 野中 由紀子, 古賀 哲也, 利谷 昭治, 大慈弥 裕之
    1995 年 57 巻 4 号 p. 725-728
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    鼻部に発生した基底細胞上皮腫に対して, 腫瘍切除後の再建をaxial frontonasal flapを用いて行った結果, 術後鼻の変形もなく瘢痕も比較的目立たず, 整容的に満足が得られた。Axial frontonasal flapは鼻尖, 鼻背の基底細胞上皮腫切除後に対する全層性の欠損の再建に有用な皮弁と考えた。
  • 濱口 哲, 伴野 純代, 日比 泰淳, 荻山 幸子, 平岩 厚郎, 鳥居 修平
    1995 年 57 巻 4 号 p. 729-735
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    広範囲切除手術後の再建にMustardé’s switch flapを用いて機能的にも整容的にも良好な結果が得られた75歳の男性に生じた右上眼瞼脂腺癌を報告した。あわせて眼瞼脂腺癌の臨床的および病理組織学的特徴, 切除範囲および全摘術後の再建方法について文献的考察を行った。
  • 行徳 隆裕, 桐生 美麿, 豊島 里志, 今本 尚之, 中垣 博之, 占部 和敬, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 4 号 p. 736-740
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    62歳の男性。約4ヵ月前に頭頂部に自覚症状のない軟性腫瘤が出現した。Pilar cystを疑い, 皮膚切開したところ皮下に血管腫様暗紅色の嚢腫様腫瘤があり, また同部の骨欠損が認められた。生検標本の病理組織像で, 顆粒状の細胞質と大型の異型核を有する類円形の腫瘍細胞がシート状に増殖し, 肝癌の転移が疑われた。頭部CTで右頭頂部に境界明瞭な骨融解と腫瘤が, 体部CTで肝内に腫瘤が認められた。血液検査で軽度ないし中等度の肝機能異常と腫瘍マーカー(CEA, AFP, CA19-9)の高値が認められた。以上から本症例は肝癌が頭蓋骨へ転移し, 骨を破壊して皮下腫瘤として出現したものと考えられた。肝癌の頭蓋骨への転移は非常に稀であるが, このような悪性腫瘍が皮膚良性病変に類似する臨床像を呈することがあり日常の診察において充分注意が必要であると思われる。
  • 吉田 雄一, 永江 祥之介, 今山 修平, 堀 嘉昭, 久保川 賢, 名和田 新
    1995 年 57 巻 4 号 p. 741-745
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    48歳の男性。小児期より低身長であり30歳時に頭髪の脱毛, 37歳時に視力障害が始まり39歳時にWerner症候群の診断を受け, 以来糖尿病と低テストステロン症に対して治療中であった。1992年に左第一趾に小腫瘤が出現し徐々に増大, ’94年には疼痛を伴うようになり当科受診。病理組織学的に悪性黒色腫と診断されたがすでに肺転移をきたしていた。そこでparapratin, dacarbazine, vindesineによる化学療法を3クール施行し, 左第1趾にinterferon-βの局所注入療法を行ったところ原発巣, 転移巣ともに著明な縮小傾向を示した。
  • 小山田 亮, 北島 康雄, 米田 和史, 柳原 誠, 森 俊二
    1995 年 57 巻 4 号 p. 746-749
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    腱鞘巨細胞腫の1例を報告した。症例は56歳の女性。左第III指に大きさ13×11×5mmの半球状の腫瘤を認めた。病理組織学的に腫瘍は真皮中層から皮下組織にかけて存在し, 構成する細胞の大半は楕円形, 類円形の大型で淡明な核を有する組織球様細胞と小型で紡錘形の核を持つ線維芽細胞様細胞であった。さらに破骨細胞様の多核巨細胞が散在し, 腫瘍辺縁には多数の泡沫細胞の浸潤が認められた。
  •  
    赤木 竜也, 小池 俊一, 舟木 幹雄, 山田 義貴, 出来尾 哲, 地土井 襄璽, 東儀 君子
    1995 年 57 巻 4 号 p. 750-753
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    44歳の男性。7∼8年前に左下腿外側に小豆大の小結節が生じているのに気付いたが放置していた。1年前より徐々に増大し, 21×22×5mm大のポリープ状腫瘤となった。全摘後の病理組織学的検査では腫瘤の上3/4は幼弱な線維芽細胞と膠原線維とからなり, storiform patternを形成していた。下1/4には細胞成分は少数しかなく, ヒアリン化して硬化し索状に配列した膠原線維がみられた。これらの臨床的および病理組織学的特徴により自験例はRequenaら1)の記載したgiant dermatofibromaであり腫瘍下部で皮膚硬化性線維腫となったため, このような臨床的特徴を生じたものと考えられた。
  • —免疫組織化学的, 電子顕微鏡的検討—
    北村 尚久, 田中 克己, 津田 眞五, 長治 順子, 笹井 陽一郎
    1995 年 57 巻 4 号 p. 754-758
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    60歳の女性の左大腿部に生じたnodular fasciitisを報告した。病変は30×30mmの弾性硬, 表面常色の圧痛を伴う皮下結節で, 病理組織学的に皮下脂肪織深部に主に紡錘形の線維芽細胞様細胞で構成される細胞増殖巣として観察された。病変の辺縁部では粘液腫様の間質中に線維芽細胞様細胞がみられ, 毛細血管の増生や多数の赤血球, 多核巨細胞などもみられた。電顕的に病巣構成細胞には明瞭な核小体を有する不規則な核と, 細胞質に発達した粗面小胞体とアクチンフィラメント様構造を示す豊富な細線維を認めた。Dense patchや基底膜様構造もみられ, myofibroblastと思われた。また免疫組織化学的に抗ヒト筋線維アクチンモノクローナル抗体(HHF-35)で陽性所見がみられた。以上のことから病巣にみられた線維芽細胞様細胞は間質内の血管平滑筋などの間葉系細胞に由来する可能性が示唆された。
  • 上田 嘉乃, 名嘉眞 武国, 田中 克己, 津田 眞五, 笹井 陽一郎
    1995 年 57 巻 4 号 p. 759-762
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    患者は56歳の女性。右第4指の皮下結節を主訴に来院した。臨床的には軽度の圧痛を伴うわずかに隆起した淡紫色の皮下結節であった。組織学的には真皮に拡張した血管腔があり, その中に器質化過程にある血栓と乳頭状構造を認めた。また石灰沈着の所見がみられた。自験例はintravascular papillary endothelial hyperplasiaの典型例と考えられた。
  • 山本 正次郎, 今山 修平, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 4 号 p. 763-766
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    生後1ヵ月の女児。5生日に四肢, 躯幹の0.5mm大の紅色小丘疹に気付く。数日にて増数し個疹も増大してきた。入院時(31生日)には全身皮膚に0.5∼1.0mm大の紅色小丘疹を約160個認め, 口腔内にも同様の小丘疹を2個認めた。またMRI, 超音波検査にて肝臓に血管腫と考えられる腫瘍性病変を認めた。皮膚病変は組織学的には類上皮細胞様内皮細胞からなる毛細血管の増生であった。プレドニン8mg/日の経口投与にて皮膚の血管腫はわずかな色素沈着を残してすべて退縮し, 肝内の陰影も著明に縮小した。
  • 川村 邦子, 江口 弘晃, 花田 二郎, 山本 美保, 昆 みゆき, 堀越 貴志
    1995 年 57 巻 4 号 p. 767-770
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    68歳の女性の背部に生じた皮膚原発のKi-1リンパ腫の1例を報告した。初診の約10ヵ月前に左肩甲骨部に紅色丘疹が1個出現したが放置していた。初診時, 左肩甲部に32×17×3mmの弾性硬赤褐色の中心部に潰瘍を伴う腫瘤が存在した(なお潰瘍は同部にすえたお灸によるものであった)。表在性リンパ節の腫大, 肝脾腫はなかった。病理組織学的に真皮乳頭層から網状層に大型の腫瘍細胞の稠密な浸潤を認めた。著明な核分裂像も認めた。Reed-Sternberg細胞類似の多核巨細胞も散見された。表皮内浸潤はなかった。大型の腫瘍細胞はKi-1抗原, IL-2 receptor, transferrin receptorおよびHLA-DR陽性でTリンパ球, Bリンパ球のマーカー, epithelial membrane antigenは陰性。末梢血, 骨髄に異常細胞はなかった。抗ATLA抗体陰性。胸部X線, Gaシンチ, CTにて原発巣を示唆する所見はなかった。治療には免疫賦活剤である臨床治験薬のwhole peptidoglycanを局所投与した(総投与回数は56回, 総投与量は200mg)。平成6年12月現在(本剤投与終了後2年8ヵ月経過), 皮疹の局所再発, 臨床諸検査にて全身に再発病変はなく全身状態は良好。皮膚原発のKi-1リンパ腫は比較的予後良好であり, 文献的にも本症では化学療法を含む強力な治療をさけるべきであることが示唆された。
研究
  • 森 理, 蜂須賀 裕志, 笹井 陽一郎
    1995 年 57 巻 4 号 p. 771-773
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Transforming growth factor-β(TGF-β)は上皮系細胞の増殖を強力に抑制することが知られている。またミノキシジールは脱毛症の治療に用いられているが, その作用機序の詳細についてはいまだ不明である。われわれはマウス背部皮膚より得た培養毛根細胞に対するTGF-βの影響をDNA合成能から検討した。TGF-βを加えると, S期およびG2+M期の細胞は対照に比較して減少した。ミノキシジールをTGF-βと同時に加えると, 培養毛根細胞の細胞周期各期の割合は対照に近い値となった。このことはミノキシジールにはTGF-βによる培養毛根細胞増殖の抑制を解除する働きがあることを示唆する。
  • 中村 遊香, 森 智子, 渡辺 晋一, 高橋 久, 長谷川 篤彦
    1995 年 57 巻 4 号 p. 774-778
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    1990年から1993年までの4年間に帝京大学皮膚科外来において患者から分離したMicrosporum canis12株を皮膚糸状菌同定のための鑑別培地(DTM)で培養した。その結果, 5株では皮膚糸状菌で認められる培地の赤変がみられなかった。そこでこれら5株を4種類の培地を用いて継代培養を行ったところ赤変が認められるようになった。以上のことから皮膚糸状菌の中でもM. canisにはDTMでの培養で分離時赤変が認められない株が存在するが, これらの株でも継代培養の条件によってはDTMの赤変が認められるようになることが判明した。したがってDTMの赤変によって皮膚糸状菌かその他の真菌かを判別することは必ずしも適当ではなく, 皮膚糸状菌の肉眼的な集落形態を把握し, 鏡検によって形態学的同定を行うことが, 誤った判断を防ぐ上で重要であると考えられた。
  • 細川 篤, 上里 博, 野中 薫雄, 川津 邦男, 宮里 肇
    1995 年 57 巻 4 号 p. 779-781
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    らいの診断は皮疹, 知覚異常や神経肥厚及び皮疹スミアと組織の抗酸菌染色によるらい菌の観察でなされる。組織抗酸菌染色に過沃素酸·石炭酸パラロザニリン法(原田法)を使用する機会があり, 従来当教室で使用してきたZieh1-Neelsen(Z-N)染色法と染色成績を比較した。102例の標本のうち77例(76%)がZ-N陰性であり, Z-N陰性例のうち30例を原田法で検討した結果13例(43%)が陽性であった。したがって組織内らい菌の検出には原田法やFite-Faraco氏oil fuchsin法など他の抗酸菌染色法の併用が適当と考えられた。
  • —表皮内IL-1局在の変化を中心に—
    中山 樹一郎, 占部 篤道, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 4 号 p. 782-788
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    6例の乾癬患者に抗高脂血症剤プロブコールの内服療法を行い, 治療前後で皮膚生検を施行した。著効を示した2例において表皮肥厚の正常化がみられ, さらに抗IL-1抗体を用いた免疫螢光染色にて有棘層および顆粒層のみが陽性という正常皮膚の染色所見と同様の所見が観察された。中等度改善以下では治療前の乾癬表皮と同様に基底層も陽性に染色された。ヌードマウス可移植性乾癬皮膚に対するプロブコールの効果を検討する目的でプロブコールを含有する飼料をヌードマウスに与え, 4週後に移植した乾癬皮膚表皮のDNA合成能をBrdU取り込みで検討した。その結果コントロールに比べプロブコール投与群ではBrdU取り込みの低下がみられ, また免疫組織化学的にIL-1発現パターンの正常化がみられた。プロブコールはマクロファージからのIL-1分泌抑制作用が報告されており, 乾癬においてもプロブコールのIL-1産生抑制が皮疹に何らかの作用を及ぼしている可能性が示唆された。
講座
統計
  • 伊豆 知子, 桐原 義信, 安田 浩, 末永 義則, 旭 正一
    1995 年 57 巻 4 号 p. 796-799
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    産業医科大学皮膚科で15年間に経験した汗管腫の統計および組織学的検討をおこなった。総数50例中男性6例, 女性44例で, 40歳代までの発症が9割を占めた。発生部位は顔面37例, 汎発型11例, 外陰部2例で好発部位は下眼瞼であった。病理組織学的所見によって1)2層以上のclear cellをもつもの, 2)管腔の内側細胞1層のみclear cellのもの, 3)clear cellを認めないもの, の3種類に分類し, それぞれI, II, III型とした。PAS染色, アルシアンブルー染色, α-smooth muscle actin染色をはじめとする組織化学的検索をおこなった結果, I型のclear cellでは核が小型で偏在し細胞質内にはグリコーゲンを認め, 一方II型のciear cellの核は大型で内容物はムチンではないかと推測された。よって両者のclear cellは形態, 性質ともに違いが見られ澄明化する過程ではそれぞれ異なる機序によることが示唆された。
  • 弥富 美奈子, 高橋 雅弘, 幸田 弘
    1995 年 57 巻 4 号 p. 800-806
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    昭和57年から平成5年までの12年間に佐賀医科大学皮膚科外来を受診した皮膚悪性腫瘍(有棘細胞癌, 悪性黒色腫, 基底細胞上皮腫, ボーエン病, 乳房外パジェット病)の5腫瘍の症例を統計的に検討した。1)有棘細胞癌の患者総数は108例, 5年生存率は88.6%であった。平均年齢は74.3歳で, 男女比は1:0.69であった。2)悪性黒色腫の患者総数は32例, 5年生存率は66.5%であった。平均年齢は60.9歳で男女比は1:1.29であった。3)基底細胞上皮腫の患者総数は118例で再発率は13.6%であった。平均年齢は68.1歳で男女比は1:1であった。4)ボーエン病の患者総数は29例で術後1例に再発がみられた。平均年齢は67.2歳で男女比は1:0.53であった。5)乳房外パジェット病の患者総数は11例で遠隔転移により死亡した症例は1例であった。平均年齢は69.9歳で男女比は1:2.67であった。
  • —ペインクリニックの有用性について—
    浜中 すみ子, 氏原 真弓, 村川 敏介
    1995 年 57 巻 4 号 p. 807-812
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    1989年4月から1993年12月までの約5年間に山口労災病院皮膚科で入院加療された帯状疱疹患者211例について統計的観察を行った。男85例に対し女126例で女性に多く夏から秋にかけて多かった。年齢では60歳代に多く30歳代に少なかった。発症部位は躯幹, 頭部·顔面, 腰部·下肢, 胸部·上肢, 頚部·肩の順に多かった。汎発化は50例(23.7%)と高頻度にみられた。2例が死亡し, 6例に髄膜炎, 6例にRamsey-Hunt症候群, 18例に眼病変, 4例に筋力低下が合併した。アシクロビルの点滴投与, 外用療法を原則とし疼痛の強い116例に対しては, さらに神経ブロックを併用した。6ヵ月間の経過観察の結果, 神経ブロック併用は帯状疱疹後神経痛の軽減に有効であると考えた。
治療
  • —とくに血中IFN-γ, IL-4, CD23, IgE(RIST) IgE(RAST), IgG4に対する影響の検討—
    内田 尚之, 荒瀬 誠治, 山本 忠利, 宮本 洋, 佐川 禎昭, 久保 宜明, 原田 種雄, 斎藤 一夫, 定本 靖司, 池内 恒雄, 林 ...
    1995 年 57 巻 4 号 p. 813-821
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎患者92例を対象にケトチフェン(ザジテン®)の有効性と同時に末梢血好酸球数, 血清中IFN-γ, IL-4, CD23, IgE, IgG4とダニ, ハウスダスト, 卵白, 大豆, 牛乳の各特異IgE抗体におよぼす影響を検討した。最終全般改善度では中等度改善以上は72.8%, 軽度改善以上は92.4%であった。重症度別最終全般改善度は中等度改善以上では軽症は100%, 中等症は70.3%, 重症は50%であった。アトピー素因別の最終全般改善度は中等度改善以上ではアトピー素因「あり」群は73.4%, 「なし」群は71.4%であった。副作用は5例(5.2%)にみられ眠気が4例, 眠気と倦怠感が1例であった。有用度は有用以上71.7%, やや有用以上94.6%と高い有用度を示した。末梢血好酸球数は前値が6%以上群ではケトチフェン投与により有意に減少し, 本剤の好酸球減少作用を認めたが, 6%未満群では有意な変動はみられなかった。血清IgE, 特異IgE抗体(ダニ, ハウスダスト, 卵白, 大豆, 牛乳), IgG4値は投与前後で有意な変動はなかった。血清IFN-γ, CD23, IL-4に関しては, ほとんどの症例で検出限界値以下であった。今回の測定方法ではこれらのサイトカインに対するケトチフェンの効果は不明であった。
  • 堀越 貴志, 花田 二郎, 棟 千鶴美
    1995 年 57 巻 4 号 p. 822-824
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    改良されたフランドルテープSと旧製品フランドルテープSの両者の皮膚刺激性を健常人正常皮膚を用いて検討した。皮膚刺激性のパラメーターとして角質剥離量と経皮水分蒸発量を測定した。新フランドルテープSは旧製品に比較してテープ除去時にテープに付着する角質細胞の剥離量は有意に少なかった。フランドルテープ除去後の正常皮膚面からのTEWL(trans epidermal water loss: 経皮水分蒸発量)は新フランドルテープSが旧製品に比較してより少なかった。さらに新旧フランドルテープ貼付面からのTEWLは新フランドルテープSが旧製品に比較してより多かった。新フランドルテープS貼付面からのTEWL値は正常皮膚面からのTEWL値に近かった。以上より新製品は皮膚からの角質剥離量が少なく結果としてTEWL値が低値, すなわち皮膚傷害がより少ないことが示された。さらにテープ貼付面からのTEWL値は新フランドルテープSは旧製品に比べ高値であった。すなわちテープ貼付面の水分貯留による浸軟が少なくより生理的な状態に保たれていることが示された。皮膚科の立場からも新フランドルテープSは低刺激性の貼付剤として期待されると考えた。
  • —副作用発現の背景の検討—
    前田 学, 松原 勝利, 可知 久代, 森 俊二, 北島 康雄
    1995 年 57 巻 4 号 p. 825-828
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    プロスタサイクリン製剤(beraprost sodium)を投与した全身性強皮症(SSc)83例(男:女=14:69), SLE3例, MCTD2例, 皮膚筋炎3例の計91例を対象に副作用を解析した結果, 不明例を除く88例中, 頭痛などの副作用は41例(46.6%)にみられたが, 初回量(2錠/日)で継続可能な例は12例, 減量することで継続可能な例は19例, 投与中止例は7例であった。副作用(+)群を軽度, 中等度, 高度別にし, Raynaud(R)症状を寒冷R症状と温熱刺激時のR症状に分け, Wilcoxon検定を行うと副作用軽度例で温熱R症状が有意に多い結果となった(p<0.05)。なお重症度(石川のスコア診断)と爪廓毛細血管顕微鏡像およびプレドニゾロン(PSL)内服の3項目で傾向あり(p<0.1)との結果を得たが, 爪上皮の点状出血, シルマーテスト, 涙液層破壊時間(BUT), ローズ·ベンガルテスト, ガムテスト, 免疫グロブリン, 血清補体, 抗核抗体, 抗SS-A/B抗体および他剤併用の異常/有無別と副作用(+)および(-)群別間には有意差はなかった。温熱R症状はSSc軽症例に多いため, SSc軽症例の方が本剤に対する血管壁感受性の強いことが示唆された。
  • ラノコゾール軟膏剤研究会
    1995 年 57 巻 4 号 p. 829-840
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    ラノコナゾール1%軟膏の皮膚真菌症に対する有用性を検討することを目的として, 12施設よりなる研究班を組織し, 1日1回塗布により試験を実施した。投与総症例282例のうち245例について安全性を, 210例について有効性および有用性を検討した。皮膚所見および菌陰性化を考慮した最終総合効果判定(有効性)における有効率は足白癬で71.4%, 体部白癬で77.1%, 股部白癬で87.5%, カンジダ性間擦疹で87.5%, カンジダ性指間糜爛症で100%, カンジダ性爪囲炎で76.9%および癜風で97.0%であった。副作用は4例(1.6%)に認められた。その内訳は接触性皮膚炎および刺激感であったが, いずれの症例においても重度な副作用は認められず, 適切な処置により軽快した。有用性判定では足白癬で73.2%, 体部白癬で77.1%, 股部白癬で84.4%, カンジダ性間擦疹で87.5%, カンジダ性指間糜爛症で100%, カンジダ性爪囲炎で69.2%および癜風で97.0%の有用率であった。以上の成績からラノコナゾール1%軟膏は皮膚真菌症の治療に対して有用な薬剤であると考えられた。
  • 鳥巣 仁枝, 永江 祥之介, 松尾 真二郎, 後藤 多佳子, 辻田 淳, 中尾 知子, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 4 号 p. 841-844
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    熱傷の急性期における塩酸アゼラスチン(アゼプチン®)の熱傷の進展に対する効果を動物モデルを用いて検討した。背部にsuperficial dermal burn(SDB)を受傷させたラットにアゼプチン®を1mg/kg静脈内投与し, 組織内のLTB4濃度を測定した。その結果, 塩酸アゼラスチン投与群においては組織内LTB4濃度の有意な低下が認められ, 組織学的にも炎症細胞の浸潤の抑制が認められた。このことにより塩酸アゼラスチンは熱傷急性期の炎症を抑制し, 熱傷の進展防止に有用であると考えられた。
  • —用量設定試験—
    吉田 彦太郎, 原田 昭太郎, 川島 真, 山本 昇壯, 久木田 淳
    1995 年 57 巻 4 号 p. 845-855
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
  • 山本 昇壯, 高路 修, 堀内 賢二, 岡原 佳代, 坪井 賢朗, 西山 成寿, 森田 健司, 矢野 貴彦, 岡野 伸二, 秀 道広, 森 ...
    1995 年 57 巻 4 号 p. 856-862
    発行日: 1995/08/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    5歳以上11歳未満の小児アトピー性皮膚炎患児を対象として, TBXを1回5mg, 1日2回(10mg/日), 6週間の経口投与を行い, その有効性, 安全性および有用性を検討した。1. 総症例数34例のうち, 概括安全度については34例, 最終全般改善度および有用度については33例を採用した。2. 週別全般改善度において, 「改善」以上の改善率は2週後44.1%, 4週後53.1%, 6週後65.6%であり, 経時的な改善率の上昇がみられた。3. 最終全般改善度については, 「改善」以上63.6%であった。4. 本剤に起因すると考えられる副作用および臨床検査値異常は認められなかった。5. 有用度については, 「有用」以上63.6%であった。以上のことより, TBXは小児アトピー性皮膚炎に対して有用であり, かつ安全性の高い薬剤であると考えられた。
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