西日本皮膚科
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症例
Pilar Cyst様の臨床像を呈した転移性悪性腫瘍
行徳 隆裕桐生 美麿豊島 里志今本 尚之中垣 博之占部 和敬堀 嘉昭
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1995 年 57 巻 4 号 p. 736-740

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抄録

62歳の男性。約4ヵ月前に頭頂部に自覚症状のない軟性腫瘤が出現した。Pilar cystを疑い, 皮膚切開したところ皮下に血管腫様暗紅色の嚢腫様腫瘤があり, また同部の骨欠損が認められた。生検標本の病理組織像で, 顆粒状の細胞質と大型の異型核を有する類円形の腫瘍細胞がシート状に増殖し, 肝癌の転移が疑われた。頭部CTで右頭頂部に境界明瞭な骨融解と腫瘤が, 体部CTで肝内に腫瘤が認められた。血液検査で軽度ないし中等度の肝機能異常と腫瘍マーカー(CEA, AFP, CA19-9)の高値が認められた。以上から本症例は肝癌が頭蓋骨へ転移し, 骨を破壊して皮下腫瘤として出現したものと考えられた。肝癌の頭蓋骨への転移は非常に稀であるが, このような悪性腫瘍が皮膚良性病変に類似する臨床像を呈することがあり日常の診察において充分注意が必要であると思われる。

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© 1995 日本皮膚科学会西部支部
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