西日本皮膚科
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症例
白血病児の点滴シーネの当たった部位に生じた皮膚アスペルギルス症
—角層内菌糸の電顕観察を加えて—
佐藤 俊樹高橋 伸也富田 靖
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1995 年 57 巻 5 号 p. 1009-1013

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抄録

白血病児の点滴固定部に生じた皮膚アスペルギルス症の1例を報告した。患者は11歳の女児。9歳時に急性骨髄単球性白血病が発症し骨髄移植を受けたが再発, 化学療法施行中であった。点滴抜去時, 静注針固定用シーネが当たっていた右手掌小指球部に周囲に発赤·腫脹を伴う大豆大の壊死性潰瘍を認めた。鱗屑の苛性カリ直接鏡検でY字状に分岐する菌糸がみられ, 鱗屑および壊死組織の培養でAspergillus flavusが分離された。ポビドンヨード消毒とビフォナゾールクリームの外用1週間で略治した。病巣鱗屑の透過電顕観察では菌糸が角質細胞内に侵入している像がみられ, この菌がケラチナーゼを産生することを示唆する所見と考えた。1986年以降本邦で報告された原発性皮膚アスペルギルス症は自験例を含めて22例で, その過半数(12例)は白血病児の留置針固定部に生じた症例であった。原発性膿皮症様アスペルギルス症は5例であった。原因菌は留置針固定部に生じた症例では12例中10例でA. flavusであった。原発性膿皮症様アスペルギルス症の5例ではA. fumigatus2例, A. nigar2例, 両者の混合感染1例でありA. flavusによる症例はなかった。

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© 1995 日本皮膚科学会西部支部
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