西日本皮膚科
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57 巻, 5 号
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図説
綜説
症例
  • —自験2例を含む本邦132例の検討—
    福田 英三, 今山 修平
    1995 年 57 巻 5 号 p. 929-933
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド外用剤による接触皮膚炎については基剤あるいは配合剤によるものが多く, 主剤のステロイド剤によるものは稀と考えられていた。しかし近年ではステロイド剤そのものによる接触皮膚炎の報告が増加し, 本邦でも自験2例を含め132例の報告がみられる。そのうち95例は含有のステロイド剤によるパッチテスト(貼布試験)が陽性である。本稿ではブデソニド含有軟膏による接触皮膚炎の2例を報告し本邦報告例について検討した。さらにステロイド外用剤を薬効の強度と構造式の類似性(系列)の観点から区別した一覧表を作成した。
  • 山口 都美子, 工藤 芳子, 岡本 修, 藤原 作平, 高安 進, 新海 浤, 西園 晃, 加島 健司
    1995 年 57 巻 5 号 p. 934-938
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    50歳の男性の皮膚筋炎に合併した肝細胞癌の1例を報告した。4∼7時間の日光暴露後に露光部に紅斑を認め全身倦怠感が出現した。筋原性酵素の上昇を認め, 皮膚·筋生検は典型的な皮膚筋炎の所見を呈した。入院後プレドニゾロン70mg/日より開始し漸減。3ヵ月後にプレドニゾロン35mgにて退院。しかし血沈は中等度亢進したままであり5ヵ月後高熱のため再入院となった。腹部CTにて肝実質にlow density areaを多数認め肝生検により肝癌と診断した。発症8ヵ月後に多臓器不全にて死亡。剖検では骨髄·胃·心など多臓器の転移が認められた。RT-PCR法により肝及び初回入院時の患者血清よりHCVが検出された。皮膚筋炎と悪性腫瘍の合併については多くの報告があるが肝癌との合併はまれである。両疾患の関連について皮膚筋炎の再燃が腫瘍の進展と平行して生じたことからHCV感染が肝細胞癌を惹起しウイルス及び腫瘍抗原が皮膚筋炎を誘発したのではないかと推測した。
  • 森田 栄伸, 望月 満, 篠田 勧, 山本 昇壯
    1995 年 57 巻 5 号 p. 939-942
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    1989年から1994年までの6年間に広島大学医学部付属病院皮膚科で経験したベーチェット病患者は28例であった。性別は男性12例, 女性16例, 平均発症年齢は36.0歳であった。病型は完全型6例, 不全型22例で, そのうち2例は腸管型, 1例は神経型と診断された。HLAタイプでは完全型5例中3例, 不全型18例中8例でHLA-B51陽性であった。眼症状のある例では66%, 眼症状のない例では36%がB51を保有しており眼症状とB51の関連が窺われた。
  • 後藤 一史, 小関 伸, 近藤 慈夫
    1995 年 57 巻 5 号 p. 943-947
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    ビールを摂取した後に過量の向精神薬などの薬剤を服用しコンパートメント症候群とcoma blisterを生じた35歳の男性例を報告した。四肢に緊満性水疱と浸潤性紅斑を, 顔面·臀部に潰瘍を認めた。患者は左下肢のしびれと疼痛を訴えており, 同部は軽度の発赤と腫脹を示し, 左アキレス腱反射は消失していた。臨床検査成績では血沈の亢進, 白血球増多, CRP陽性, CPK, ミオグロブリン, アルドラーゼ, GOT, GPT, LDHの高値を認めた。水疱部の組織学的検索では表皮の壊死, 表皮下水疱とエクリン汗腺の導管および分泌部の壊死を認めた。CT, MRI検査では左大腿∼臀部の横紋筋融解症に一致する所見を得た。以上より本症例をコンパートメント症候群による左坐骨神経麻痺と横紋筋融解症を合併したcoma blisterと診断した。
  • 前山 泰彦, 津田 眞五, 宮里 稔, 笹井 陽一郎
    1995 年 57 巻 5 号 p. 948-952
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Lichen planus-like keratosisの5例(70歳の女性, 43歳の男性, 55歳の女性, 76歳の男性, 60歳の女性)を報告した。1例を除き, いずれも先行する露光部色素斑にそう痒を伴う隆起性病変を生じたもので臨床像は老人性角化腫あるいは脂漏性角化症に類似した。病理組織学的には基底層の液状変性, 表皮内異常角化細胞, 真皮上層の帯状または斑状のリンパ球浸潤などのlichenoid tissue reactionを示した。浸潤する小円形細胞を検討したところ, その大部分はTリンパ球で, これらを60歳の女性例で検討したところCD4, CD8の発現が同程度認められた。また病変部表皮のケラチノサイトはHLA-DRおよびintercellular adhesion moiecule-1(ICAM-1)を強く発現していた。これらの所見と一部の症例で自然消退傾向がみられたことより本症の発症や治癒過程には細胞性免疫による排除機構が密接に関与していると思われた。
  • 宿輪 哲生, 島崎 幸治
    1995 年 57 巻 5 号 p. 953-957
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    5歳の男児。1ヵ月前に発熱, 上気道炎様症状が出現し抗生物質の投与で軽快した後, 掌蹠, 肘頭および膝蓋に角質増殖を伴う紅斑および角化性丘疹が出現した。検査所見ではASOの上昇を認めたがマイコプラズマ, 単純疱疹, EBウイルスなどの抗体価および血液生化学的検査での変化はみられなかった。ビタミンA軟膏や副腎皮質ホルモン外用剤で改善がみられないため副腎皮質ホルモン外用剤(0.05% difluprednate): 活性型ビタミンD3(0.002% tacalcitol)軟膏=1:2混合軟膏を塗布したところ1週後より改善傾向がみられた。さらに活性型ビタミンD3軟膏の外用を3ヵ月間行い皮疹は略治した。副作用はみられなかった。活性型ビタミンD3軟膏療法は小児の毛孔性紅色粃糠疹の治療に安全かつ有用な治療法のひとつと思われた。
  • 檜原 理子, 森田 栄伸, 篠田 勧, 山本 昇壯
    1995 年 57 巻 5 号 p. 958-961
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    1993年1月から1994年1月までの1年間に当科を受診した乾癬患者104例のうち家系内発症例を調査したところ6例(5.7%)で家系内に乾癬患者があった。発症の遺伝素因を明らかにする目的で2例について家系内の発症者のHLAクラスIタイピングを行うとともにHLAクラス1分子内のα1ドメイン上の9番目のアスパラギン酸の保有を検討した。症例1ではA2, B70, Cw7を共有, 症例2ではA2, B35を共有していた。Cw7を保有している症例1とその父親, 症例2の父親で9番目のアスパラギン酸特異塩基配列がみられたが症例2では検出できなかった。
  • 大竹 直樹, 田中 昭人, 菅 隆史, 濱田 洋, 三好 逸男, 川平 正公, 金蔵 拓郎, 瀬戸山 充, 神崎 保
    1995 年 57 巻 5 号 p. 962-967
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    当科において過去20年間に経験した疣贅様表皮発育異常症の3例について報告した。3例とも幼少時から扁平疣贅様皮疹あるいは癜風様皮疹が出現しはじめ, また比較的若くして皮膚悪性腫瘍が発症し典型的な疣贅様表皮発育異常症であった。同症は長い経過をたどる疾患であり, その間に皮膚悪性腫瘍が多発してくるため慎重な長期にわたる経過観察が必要であると考えた。
  • 安永 眞代, 永江 祥之介, 清水 信之, 桐生 美麿, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 5 号 p. 968-972
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    出生時より右乳房の位置異常, 副乳および両側の手指·爪の欠損·変形を認め, さらに側弯症, 二分脊椎を有しPoland症候群と診断された18歳の女子の1例を報告した。本症候群の臨床症状について自験例を中心に述べ, 若干の文献的考察を加えた。
  • 加藤 恵子, 津田 眞五, 田中 克己, 楠原 正洋, 笹井 陽一郎
    1995 年 57 巻 5 号 p. 973-977
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    62歳の男性に生じた脂腺癌を報告した。臨床像は右鼻翼部から鼻腔内にかけてみられる12×8×3mmのドーム状に隆起する淡黄色の結節で病理組織学的に真皮内に基底細胞様細胞, 胞体の明るい泡沫状細胞, 両者の移行部からなる細胞巣があり, そのいずれにも異型性や核分裂像がみられた。Sudan III染色陽性。電顕的に腫瘍細胞は明瞭な核小体を有し胞体内には微小な脂肪滴が散在していた。滑面小胞体も豊富で部分的にミトコンドリアの膨化や変性像, 増加したライソゾームとその融解像などを認めた。マイボーム腺以外に発生した脂腺癌は比較的まれなため文献的考察と併せて報告した。
  • 村田 宏爾, 石倉 直敬, 塚田 貞夫
    1995 年 57 巻 5 号 p. 978-982
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    58歳と53歳の女性の両側足底に生じたplantar fibromatosisの2例について報告した。HE染色において線維組織間に長紡錘形の核を有する線維芽細胞様の細胞増殖が認められ小結節を形成していた。これらは抗ヒトα-smooth muscle actin抗体を用いた免疫組織化学的染色に陽性像を示し, 電顕像においてmyofibroblastの特徴を有していた。Plantar fibromatosisの増殖細胞としてmyofibroblastが存在することが確認された。
  • 中込 常昭, 南光 弘子, 溝尾 朗, 井上 泰, 朴 杓允
    1995 年 57 巻 5 号 p. 983-989
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Primitive neuroectodermal tumor(以下PNETと略す)はEwing肉腫·神経芽腫などとともに病理組織学上小細胞肉腫に含まれ若年層に好発するまれな腫瘍である。最近われわれは突然に皮下結節として出現したPNETの21歳の男性例を経験した。皮膚科領域の報告としては本邦2例目(転移としては1例目)と思われるが, 自験例では骨盤内原発で大腿軟部組織への浸潤, 皮下(腹部)·胸膜·傍大動脈リンパ節および表在リンパ節転移を認めている。皮膚科領域ではなじみの少ない腫瘍であり病理組織学的な診断法の進歩に伴い今後次第に報告例が増えることが予想されるため報告し, その位置づけ等につき若干の文献的考察を加えた。
  • 花田 二郎, 山本 美保, 江口 弘晃, 堀越 貴志, 福島 道夫
    1995 年 57 巻 5 号 p. 990-992
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    70歳の男性。約5年前に右側陰嚢に拇指頭大の有茎性の腫瘤出現。病理組織所見(HE染色)にて表皮の乳頭状増殖と真皮乳頭部の泡沫細胞浸潤を認めverruciform xanthomaと診断した。スダンIIIによる脂肪染色では真皮乳頭層の泡沫細胞に一致して赤色の陽性所見を認めた。in situ hybridaization法を用いてhuman papillomavirus(HPV)16, 18, 33型の遺伝子の検索を行ったが, ウイルス感染を示唆する所見は得られなかった。verruciform xanthomaの臨床, 組織学的特徴, 成因について若干の文献的考察を加えた。
  • —高齢患者に対する治療法の検討—
    中村 徳志, 前川 嘉洋, 安野 佳代子, 野上 玲子
    1995 年 57 巻 5 号 p. 993-998
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    外陰部Paget癌の2例を経験した。症例1は82歳の男性。陰茎周囲に腫瘤を形成しており, 皮膚·筋肉·骨·リンパ節·肝臓への浸潤転移を認めたため局所治療のみを施行した。症例2は93歳の男性。陰茎周囲から下腹部にかけて広範囲に色素斑と糜爛面を認めた。遠隔転移はなく広範囲切除術を施行した。外陰部Paget癌の治療についての考察を含めて報告した。
  • 行徳 隆裕, 桐生 美麿, 牛島 正博, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 5 号 p. 999-1002
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    15歳の男性の大腿から臀部にかけて生じた巨大脂肪腫の1例を報告した。10歳頃に左大腿後面の軟性腫瘤に気付いたが, その後徐々に大きくなったため切除した。手術時, 皮下に鵞卵大の腫瘤と臀筋内に手挙大の腫瘤を認め, これらは大腿筋膜貫通部でくびれて連続しており肉眼的にダンベル型であった。組織学的には成熟脂肪細胞の増殖が主であり, 一部に脂肪芽細胞も認められた。腫瘍間質は厚い結合組織よりなり, 一部粘液腫様であった。通常の脂肪腫は成長が緩徐であるといわれているが時に急速な増大や局所再発を起こすものがあり, それらは自験例と同様の組織像を示すことが多い。自験例はいわゆるatypical lipomaと考えられるがlipoma-like well differentiated liposarcomaの名称とともに好ましい名称であるとは思われない。本症は単なるlipomaの増殖能の強い一亜型である可能性もあるが形状, 発生部位, 組織像などにやや違いがあり再発に注意しながら経過観察する必要があると思われる。
  • 馬場 由佳理, 井上 靖, 田嶋 公子, 福代 良一, 池田 重雄, 石川 恵子
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1003-1008
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    71歳の男性。3年前より再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis)のためステロイド内服中であった。半年前に右大腿に皮下膿瘍出現, 同時期に呼吸困難と喀痰増加が出現。筋肉内にあった膿瘍を摘出した。組織学的に膿瘍壁の病変内にグラム陽性の繊細な糸状物が認められた。膿瘍の組織片と膿汁から培養陽性。胸部のX-PとCTで右肺に浸潤影あり数回の喀痰培養陽性。これらの培養は全てNocardia brasiliensisと同定された。ST合剤とセフェム系抗生剤の併用で呼吸器症状は軽快したが, 薬剤性肝障害のため2ヵ月で投与中止。1ヵ月前, 右大腿の手術瘢痕部に膿瘍再発, 膿汁内にグラム陽性糸状物が認められ, 膿汁からもN. brasiliensisが検出された。DICと肝不全で死亡。剖検で肺に膿瘍数個, そこにグラム陽性糸状物が見出された。
  • —角層内菌糸の電顕観察を加えて—
    佐藤 俊樹, 高橋 伸也, 富田 靖
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1009-1013
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    白血病児の点滴固定部に生じた皮膚アスペルギルス症の1例を報告した。患者は11歳の女児。9歳時に急性骨髄単球性白血病が発症し骨髄移植を受けたが再発, 化学療法施行中であった。点滴抜去時, 静注針固定用シーネが当たっていた右手掌小指球部に周囲に発赤·腫脹を伴う大豆大の壊死性潰瘍を認めた。鱗屑の苛性カリ直接鏡検でY字状に分岐する菌糸がみられ, 鱗屑および壊死組織の培養でAspergillus flavusが分離された。ポビドンヨード消毒とビフォナゾールクリームの外用1週間で略治した。病巣鱗屑の透過電顕観察では菌糸が角質細胞内に侵入している像がみられ, この菌がケラチナーゼを産生することを示唆する所見と考えた。1986年以降本邦で報告された原発性皮膚アスペルギルス症は自験例を含めて22例で, その過半数(12例)は白血病児の留置針固定部に生じた症例であった。原発性膿皮症様アスペルギルス症は5例であった。原因菌は留置針固定部に生じた症例では12例中10例でA. flavusであった。原発性膿皮症様アスペルギルス症の5例ではA. fumigatus2例, A. nigar2例, 両者の混合感染1例でありA. flavusによる症例はなかった。
  • —限局性白癬菌性肉芽腫を疑った1例—
    坂 昌範, 前田 学, 藤広 満智子
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1014-1017
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    79歳の女性。初診の1ヵ月前に腕時計を装着した部位(左前腕遠位部)に一致して紅斑が生じ, 金属による接触皮膚炎を疑った。吉草酸ベタメタゾン含有亜鉛華軟膏を外用したところ紅斑内に固い紅色の小結節が散在性に出現した。病理組織学的に真皮に核塵を伴い好中球主体の著明な炎症細胞浸潤からなる肉芽腫形成を認めた。巨細胞は存在せず連続切片で肉芽腫内に散在するPAS染色陽性の胞子および毛嚢構築を伴わない毛幹部における多数の菌要素がみられた。サブロー平板培地とスライドカルチャー像より原因菌をTrichophyton rubrumと同定した。塩酸クロコナゾールクリーム外用, イトラコナゾール(50mg/日)内服にて9週後に略治した。当初限局性白癬菌性肉芽腫を疑ったが真皮内に菌の増殖像が認められず, 生毛部急性深在性白癬と診断した。臨床的に炎症症状が弱く, ステロイド誤用により修飾されたものと考えた。
  • 山岸 雄二, 大槻 典男
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1018-1021
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    41歳の男性。約1年2ヵ月前から慢性膵炎でメシル酸カモスタットを内服中。内服開始約4ヵ月後より頭部·顔面·上背·手背に浸潤を触れる紅斑が出現し徐々に増数してきた。臨床検査では白血球増多以外に異常はなかった。組織像は角質増殖, 毛孔性角栓, 表皮肥厚, 基底層の一部に液状変性, 真皮上層の血管周囲と毛包周囲にリンパ球が主体で好酸球の混在した細胞浸潤を認めた。蛍光抗体直接法で毛包基底膜部にC3の細顆粒状沈着がみられた。メシル酸カモスタットによるパッチテストは陰性, スクラッチパッチテストは陽性であった。またメシル酸カモスタットによるリンパ球幼弱化試験も陽性であった。メシル酸カモスタットの使用を中止してステロイド軟膏外用約2ヵ月後に皮疹は消退した。
  • 石川 武人, 村田 雅子, 西岡 和恵
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1022-1027
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    塩酸ヒドロキシジン(アタラックス®), オキサトミド(セルテクト®), および塩酸チアラミド(ソランタール®)による薬疹の1例を報告した。症例は72歳の男性。初診は平成4年6月25日。同年6月23日に腰部脊柱管狭窄症の手術を受け, 術後2日目頃に全身に紅色皮疹が出現。ついで同年7月に接触皮膚炎に対し投与されたオキサトミドを内服の翌日, 同様皮疹が出現。さらに平成6年4月に感冒に対し投与された薬剤を内服の2日後, 再び全身に紅色皮疹が出現。皮疹出現時に投与された薬剤について施行したパッチテストで塩酸ヒドロキシジンは5%, 10%, 20%の, 塩酸チアラミドは10%の濃度で陽性。内服テストでは塩酸ヒドロキシジンは常用量の3分の1で, 塩酸チアラミドとオキサトミドは常用量内服で皮疹の再現をみた。これら3種の薬剤はピペラジン環を共通に有しており, これが抗原決定基と推測した。次いでピペラジン環を持つ他の薬剤3種および試薬1種についてパッチテストを行ったところ抗うつ剤であるマレイン酸ペラジン(プシトミン®)の10%, 20%の濃度で陽性反応を認め本剤に対しても注意が必要と考えた。
研究
  • —臨床的意義について—
    原 典昭, 藤澤 崇行, 田端 英之, 山崎 雙次
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1028-1033
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    当科における進行性全身性強皮症(以下PSS)39例の血漿中エンドセリン値を測定した。血漿中エンドセリン値はacrosclerotic type25例中11例, diffuse scleroderma14例中9例に高値を示し同一症例では夏期に比し冬期に, また肺線維症やpitting scar or ulcerを伴う症例に高値を示す傾向がみられた。また皮膚潰瘍の増悪·改善に相関してエンドセリン値も変動した。一方, 予想に反し指趾切断例は正常値あるいはわずかに高値を示したのみであった。血漿中エンドセリンの測定はPSSの皮膚潰瘍, 肺病変の予後の判定に有用であると考えた。
  • 野村 和夫, 梅木 薫, 佐々木 千秋, 原田 研, 高木 晴美, 玉井 克人, 沢村 大輔, 三橋 善比古, 橋本 功
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1034-1037
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    タイプIおよびタイプIIケラチン遺伝子群は, それぞれ第17あるいは第12染色体上でクラスターを形成して存在している。このことを利用して先天性掌蹠角化症の3家系について異常ケラチン遺伝子のケラチンタイプ同定を試みた。タイプI, IIケラチン遺伝子の近傍DNAマーカーとして, それぞれI型コラーゲンα1鎖(COL 1 A 1), II型コラーゲンα1鎖(COL 2 A 1)遺伝子領域をPCRで増幅しCOL 1 A 1についてはMsp I切断パターン, COL 2 A 1については増幅サイズにて多型を判定した。その結果, 優性遺伝を示した1家系と優性か劣性か現時点では判断できない1家系について優性遺伝とみなした場合にタイプIIケラチンとの連鎖は除外され, 原因遺伝子はタイプIケラチンであることが推察された。本多型は本邦家系でも応用可能であり遺伝性ケラチン異常症の遺伝子変異検索のためのスクリーニングとして有用と考えられた。
  • —症例報告ならびに患者真皮のグリコサミノグリカンおよびプロテオグリカン発現の検討—
    武田 孝爾, 籏持 淳, 荒川 雅美, 渡辺 圭介, 植木 宏明
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1038-1043
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    57歳の男性に生じたlichen myxedematosus(LM)の1例を報告し病変部組織中のムコ多糖成分量およびプロテオグリカン遺伝子発現を検討した。病変は上背部から後頭部にかけての苔癬型丘疹であり患者は肝障害を伴っていた。病理組織は典型的であった。病変組織中では正常対照に比べウロン酸量およびヒアルロン酸/デルマタン硫酸比の増加が認められた。また抽出したtotal RNAをもとにプロテオグリカン(decorin, biglycan)mRNA発現をreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)法にて測定したところプロテオグリカンmRNA発現は著明に増加していた。本疾患では病変部組織中でヒアルロン酸量の増加とともにプロテオグリカン発現が増加していることが示唆された。
講座
統計
  • —鹿児島大学医学部皮膚科における過去10年間の経験—
    大竹 直樹, 西 正行, 金蔵 拓郎, 瀬戸山 充, 神崎 保
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1049-1052
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    1985年1月から94年12月までの10年間に, 鹿児島大学医学部附属病院皮膚科において経験した熱傷瘢痕8例について, 統計的観察を行い既報告例と比較検討した。同時期に経験した全有棘細胞癌に対する熱傷瘢痕癌の割合は5.7%, 男女比は5:3で男性に多かった。熱傷受傷年齢は平均15.7歳, 熱傷受傷範囲は平均5.1%, 受傷部位は頭部2例, 躯幹2例, 上肢3例, 下肢1例で頭部, 四肢に多くみられた。受傷原因は, いろり7例, 25年間にわたる蒸しタオル療法1例と, いろりによるものが圧倒的多数を占めた。癌診断確定年齢は53.4歳, 熱傷受傷から癌診断確定までの期間は平均37.8年, 癌診断時病期はステージIが1例, IIが4例, IIIが3例だった。このうち3例の患者が熱傷瘢痕癌を原因として既に死亡している。病理組織学的に8例とも有棘細胞癌(以下SCCと略す)でその中の2例にエックリン汗腺系への分化を示すものがみられた。これらいずれの結果も既報告例と同様の傾向を示した。
  • 小山田 亮, 神谷 秀喜, 北島 康雄, 米田 和史, 柳原 誠, 森 俊二
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1053-1058
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    1975年から1994年までの20年間に岐阜大学医学部附属病院皮膚科を受診したPaget病の患者47例(乳房Paget病10例, 全例女性, 乳房外Paget病37例, 男性23例, 女性14例)について統計的な考察ならびに治療と予後についての検討を行った。発症平均年齢は乳房Paget病は66歳, 乳房外Paget病は70歳であった。また乳房外Paget病において発生部位は外陰部が33例と最も多く, 腋窩部は9例, 肛囲部は3例, 乳房部は2例, 臍部は1例であった。多発例は8例(22%)であった。治療は手術療法, 放射線療法, 免疫療法, 化学療法およびその併用を行った。本腫瘍死は3例であった(6.4%)。
治療
  • 金蔵 拓郎
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1059-1061
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    SLEをはじめとする種々の皮膚科疾患に伴う末梢循環障害に対する人参養栄湯の有効性, 安全性, 有用性について検討し以下の成績を得た。1)対象症例は31例で最終全般改善度は「改善」23例74%, 不変8例26%, 悪化0例であった。2)概括安全度については人参養栄湯に起因すると思われる副作用は認められなかった。3)有用度は「有用」23例74%, 「無用」8例26%, 「有害」0例であった。
  • —Gentiana Violet洗浄と白糖-ポビドンヨード配合軟膏外用の併用局所療法に関する基礎的検討—
    中山 樹一郎, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1062-1069
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    1993年1月から12月までの福岡県筑豊地域の一病院における褥瘡および喀痰中のMRSA感染の推移について統計学的に検討した。MRSA感染褥瘡は2月以降各月とも全褥瘡の75%を占め9月では100%であった。MRSA感染喀痰は3月に50%を越え, 以後30%台から70%台で推移した。褥瘡および喀痰のMRSA重複感染率はMRSA感染褥瘡患者の52.1%(38名/73名)が喀痰中にもMRSA感染が検出され, またMRSA感染喀痰を有する患者の44.2%(38名/86名)がMRSA感染褥瘡を有していた。すなわち全MRSA陽性患者の約半数が褥瘡および喀痰の両方にMRSA感染がみられた。MRSA感染褥瘡患者の予後はきわめて悪く, とくに重複感染のある患者はほとんどが年度内に死亡していた。褥瘡に付着するMRSAのin vitroでのピオクタニンおよびユーパスタ®による最小殺菌濃度はそれぞれ10,000倍, 16倍希釈であった。0.1%ピオクタニン軟膏およびユーパスタ®のMRSA感染褥瘡に対するin vivo効果を検討した。前者は4週後に菌の陰性化がみられたが褥瘡表面の性状は改善がみられず, 一方後者は菌の陰性化はみられず褥瘡の改善は明らかに観察された。以上の検討によりMRSA感染褥瘡に対しては10,000倍希釈ピオクタニン液の洗浄とユーパスタ®外用の併用療法が有用ではないかと考えられた。
  • 中島 由起子, 田中 敬一, 山之内 寛嗣, 西本 勝太郎
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1070-1073
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    尋常性乾癬患者16例(男12, 女4)に対してタカルシトール軟膏外用による治療を行い12例(男9, 女3)に対し有効の結果を得た。副作用として1例のみに使用直後よりの刺激感を認め治療中断した以外, 特記すべきものはなかった。有効例, 無効例ともに年齢, 性別, 罹病期間, 既往治療, 部位など特定の傾向は認められなかった。
  • 太田 浩平, 中山 樹一郎, 堀 嘉昭, 竹下 盛重, 菊池 昌弘
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1074-1077
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性。昭和50年頃に左大腿内側にそう痒を伴う紅斑が出現。その後上下肢と躯幹に紅斑と丘疹が出現してきたため平成4年6月24日九州大学医学部附属病院皮膚科を受診した。初診時は略全身に紫紅色の丘疹を伴った紅斑局面が散在し, 一部は融合して地図状を呈していた。上肢の丘疹を生検したところ病理組織学的に真皮から脂肪織にかけての異型リンパ球の瀰漫性浸潤がみとめられた。浸潤細胞はT細胞形質(CD 4陽性 helper/inducer)並びにOKla-1, Tac陽性で一部の細胞はKi-1も陽性であった。B1, B4はいずれも陰性であった。菌状息肉症と診断し治療としてIL-1β(大塚製薬提供)を週2日, 7.5×104JRU/日皮下注射したところ皮疹の著明な改善をみとめた。
  • —電話法による無作為化比較試験—
    小川 秀興, 坪井 良治, 西山 千秋, 松本 忠彦, 吉池 高志, 栗谷 典量, 荒瀬 誠治, 市橋 正光, 川島 真, 小玉 肇, 塩原 ...
    1995 年 57 巻 5 号 p. 1078-1088
    発行日: 1995/10/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    角質増殖型足白癬に対しアトラント®クリームODT療法(ODTと略)の有効性, 安全性, ならびに有用性についてアトラント®クリーム単純塗布(SAと略)を対照とし全国17施設の共同研究による電話中央管理法による無作為化比較試験を実施した。(1)総投与症例126例のうち真菌学的効果, 皮膚所見総合判定, 総合効果判定, および有用性は96例(SA群44例, ODT群52例), 安全性評価は112例(SA群54例, ODT群58例)が解析対象であった。(2)最終菌陰性化率はSA群が52.3%, ODT群では75.0%となり両群間に有意な差が認められた。(3)最終皮膚所見総合判定は「改善」以上でSA群が59.1%, ODT群では80.8%となり両群間に有意な差が認められた。(4)最終総合効果判定は「有効」以上でSA群が52.3%, ODT群では73.1%となり両群間に有意な差が認められた。(5)副作用はSA群に54例中1例(発現率: 1.9%), ODT群に58例中1例(1.7%)発現した。症状はSA群の1例は中等度の「そう痒感」, ODT群の1例は中等度の「接触性皮膚炎」であり, いずれも投与中止により軽快しており試験薬剤との関連性は「多分関係あり」と判定された。(6)安全性はSA群が「安全である」96.3%, ODT群では「安全である」96.6%であった。(7)有用性は「有用」以上でSA群が50.0%, ODT群では73.1%となり, 両群間に有意な差が認められた。以上より難治性といわれている角質増殖型足白癬に対しアトラント®クリームのODT療法は単純塗布より有意に優れており内服薬を併用する必要も無く, 今後試みる価値のある療法であると考えられた。
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