抄録
移植免疫抑制剤(cyclosporin A, CyA)による重症の成人型アトピー性皮膚炎(AD)の治療は1987年より施行され, 適応のある患者を選択し, 経過観察を厳密に行えば長期投与でも満足のいく効果を得られるとされる。我々は, 1992年よりステロイド内服を必要としていた重症AD患者30人(男性19人(19∼63歳), 女性11人(3∼58歳))の同意を得て, CyA内服療法を行ってきた。総投与期間は1∼42ヵ月(M)(平均12.4M: 6M以下13人, 7∼12M 6人, 13∼24M 9人, 25M以上2人)であった。治療成績は, 軽快後CyAを中止したまま既存の治療で良好な状態のものは14人(46.7%), 再燃時にのみ再投与するという間歇的投与を行ったものは7人(23.3%)で, そのうち4人は既存の治療で経過良好, 2人は再燃時に他施設での別の治療法を選択した。現在もCyAの継続治療中のものは5人(16.7%), CyA中止後ステロイド内服に戻ったものは3人(10%), 皮疹の増悪や血圧上昇のためにCyA内服を中断したものは2人(6.7%)であった。有効以上の効果のあったものは23人(76.6%)であった。全例において現在までCyAの長期内服によると思われる副作用は認めない。