西日本皮膚科
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症例
妊娠の経過中に疱疹状天疱瘡の像を呈した尋常性天疱瘡の1例
阿南 隆波多野 豊伊勢 知子藤原 作平高安 進駒田 信二
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2000 年 62 巻 2 号 p. 167-171

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抄録
36歳女性。5年前より全身にそう痒性皮疹および舌の潰瘍が出現した。天疱瘡の診断のもと最大量40mg/日のプレドニゾロン(プレドニン®)内服によって皮疹はコントロールされ,2年前よりステロイド離脱し,小康状態であったが,妊娠4ヵ月頃より皮疹が再燃した。皮疹の臨床像はジューリング疱疹状皮膚炎に類似し,組織学的には基底細胞層直上部に棘融解細胞を伴う表皮内水疱と好酸球性海綿状態を認めた。蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgGとC3の沈着を認めたことから疱疹状天疱瘡と診断した。ヒト表皮抽出物を用いた免疫プロット法では,患者血清は130kDaおよびそれより低分子量の蛋白と反応を示し,またELISA法(Dsg 1, 3ELISA Kit, MBL社)による抗デスモグレインDsg 3抗体および抗Dsg 1抗体のindex値はそれぞれ200, 64であった。プレドニゾロン40 mg/日の内服により皮疹は著明に軽快するとともに血清抗表皮細胞間抗体価も低下した。妊娠36週で出産したが新生児には皮疹,粘膜疹を認めず母体の皮疹の増悪も認められなかった。以後順調にプレドニゾロンの減量が可能で,10ヵ月後再び離脱した。
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© 2000 日本皮膚科学会西部支部
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