西日本皮膚科
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62 巻, 2 号
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図説
綜説
症例
  • 渋谷 和治, 倉持 朗, 土田 哲也, 倉持 茂
    2000 年 62 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    61歳の女性。初診の約6年前より両下腿部の浮腫と紅斑が出現した。約2年前からはリベドが,また6ヵ月前からは右下腿部に潰瘍,両下腿部背側に皮下結節が出現,同時に両膝·足関節痛を伴うようになった。右下腿部の皮下結節は,組織学的に壊死性血管炎の所見であった。さらに腹部血管造影で肝·腎に多発性小動脈瘤を認め,以上より結節性多発動脈炎と診断,PSL 30 mg/day内服開始。以後,症状の軽快に伴い漸減した。本症例は橋本病を合併しており,右足趾の変形,左外反母趾,X線上右第2,3趾MTP関節の背側脱臼,右第4趾MTP関節の背側亜脱臼,右第4趾PIP関節の前方脱臼が認められた。下腿潰瘍が上皮化した後に退院し,外来にて経過観察中であるが関節痛の軽快,増悪,下腿潰瘍の治癒,再発を繰り返している。
  • 水野 尚, 吉仲 真, 小林 裕子, 佐々木 哲雄, 山本 聡, 山本 紫, 一山 伸一
    2000 年 62 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    22歳の女性。5年前より自覚症状のない,幅2~7cm前後の,表面がやや萎縮陥凹した褐色の線状皮疹が胸部左側,左上肢内側に多発した。胸部左側の皮疹は心窩部から左乳房下部,側胸部にかけての線状の皮疹と,心窩部から左乳房内側,左腋窩部にかけての弧状の皮疹であった。皮疹は触診にて明らかな硬化を認めず,Blaschko線に一致していた。血液検査では抗核抗体が640倍,核小体型である以外異常なく未梢血好酸球数,血清IgG値,抗ssDNA抗体,抗Borrelia burgdorferi抗体は全て基準値範囲内だった。組織学的に,表皮はやや萎縮し,基底層にはメラニン色素が増加し,真皮は浅~中層の血管周囲性炎症細胞浸潤,深層の膠原線維の増生肥厚を認めた。Atrophoderma of Pasini and Pieriniの線状型では皮疹の走行は明らかに神経の走行に一致するが本症例では皮疹はBlaschko線に一致することより除外された。臨床的にはlinear atrophoderma of Moulinが考えられたが,抗核抗体陽性である点と真皮深層の膠原線維の増生肥厚を認める点が非典型的であった。以上より触診で明らかな硬化を認めない点で問題は残るが,線状強皮症と診断した。線状強皮症がBlaschko線に一致するか否かについては一定の見解が得られてないようであるが,最近一致する症例が報告されている。その後,経過観察中に妊娠,出産したが皮疹に著変なく24歳の時点で皮疹は,やや軽快傾向にある。
  • —血中抗デスモグレイン1抗体と臨床症状の相関について—
    金子 栄, 江木 素子, 矢野 貴彦, 立山 義朗, 林 雄三, 森田 栄伸, 杉田 康志
    2000 年 62 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    34歳,女性の落葉状天疱瘡の1例を報告した。ステロイド内服に抵抗性で二重膜ろ過法による血漿交換療法および免疫抑制剤内服も併用した。初回入院時の病理組織像では顆粒層における水疱形成であったが,5回目の入院時の病理所見では有棘層での棘融解がみられ,さらに蛍光抗体直接法で有棘層へのIgGの沈着を認めたため,尋常性天疱瘡への移行が疑われた。しかし,血中抗デスモグレイン(Dsg)抗体価は全経過を通じてDsg 1優位のままであり,自験例は落葉状天疱瘡の難治例と診断した。ステロイド内服,血漿交換療法ならびに免疫抑制剤による集学的治療により皮疹は軽快し,同時に測定した血中抗Dsg抗体値は低下を示した。血中抗Dsg抗体値の測定は診断の確定のみならず,病勢の把握にも有用と考えられた。
  • 阿南 隆, 波多野 豊, 伊勢 知子, 藤原 作平, 高安 進, 駒田 信二
    2000 年 62 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    36歳女性。5年前より全身にそう痒性皮疹および舌の潰瘍が出現した。天疱瘡の診断のもと最大量40mg/日のプレドニゾロン(プレドニン®)内服によって皮疹はコントロールされ,2年前よりステロイド離脱し,小康状態であったが,妊娠4ヵ月頃より皮疹が再燃した。皮疹の臨床像はジューリング疱疹状皮膚炎に類似し,組織学的には基底細胞層直上部に棘融解細胞を伴う表皮内水疱と好酸球性海綿状態を認めた。蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgGとC3の沈着を認めたことから疱疹状天疱瘡と診断した。ヒト表皮抽出物を用いた免疫プロット法では,患者血清は130kDaおよびそれより低分子量の蛋白と反応を示し,またELISA法(Dsg 1, 3ELISA Kit, MBL社)による抗デスモグレインDsg 3抗体および抗Dsg 1抗体のindex値はそれぞれ200, 64であった。プレドニゾロン40 mg/日の内服により皮疹は著明に軽快するとともに血清抗表皮細胞間抗体価も低下した。妊娠36週で出産したが新生児には皮疹,粘膜疹を認めず母体の皮疹の増悪も認められなかった。以後順調にプレドニゾロンの減量が可能で,10ヵ月後再び離脱した。
  • 小林 佳子, 森田 明理, 榊原 代幸, 辻 卓夫
    2000 年 62 巻 2 号 p. 172-174
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    7ヵ月の男児。平成10年7月から頭部に黄色丘疹が出現し,9月頃からは頭部,背部に比較的大きな紅色丘疹が出現した後増大し,中央部が一部自潰した。背部の紅色丘疹の病理組織では真皮に組織球の密な増殖と多核巨細胞がみられた。免疫組織ではHAM56陽性, CD 1 a陰性で,電顕像ではバーベック顆粒はみられなかった。検査結果は正脂血症で,眼の異常はなかった。Langerhans cell histiocytosisとの鑑別を要したが,最終的に若年性黄色肉芽腫と診断した。
  • 平井 俊二, 宮田 高雄, 栗崎 道紀
    2000 年 62 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    ベラプロストナトリウム錠(プロサイリン®錠)を併用し,良好な経過を認めた褥瘡の3例を経験したので報告する。褥瘡の予防および治療においては,1.全身状態の改善(栄養療法),2.潰瘍部の肉芽の管理(外用療法)と共に,3.局所の圧迫の軽減(体位変換)が重要と考えられている。ベラプロストナトリウムの併用は,末梢血管の拡張,血栓形成の抑制および赤血球の変形能の改善作用などにより,褥瘡の治療に効果があったものと考えた。糖尿病の急増を認める近年,このような基礎疾患を有する患者の褥瘡の予防および治療において,末梢循環の改善を目的とした内服療法の併用は有効と考えられた。
  • 藤沢 康弘, 石井 良征, 伴野 朋裕, 立石 毅, 藤澤 裕志, 今門 純久, 大塚 藤男
    2000 年 62 巻 2 号 p. 179-181
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1:48歳,男性。5年前より前腕,体幹に淡紅色小丘疹が出現した。症例2:42歳,女性。10~15年前より前腕と腹部に淡紅色小丘疹が出現した。両者とも表皮突起の延長,基底層の液状変性と真皮上層のリンパ球浸潤を認め光沢苔癬と診断した。過去の集計例を含む1968~1996年の光沢苔癬159例を検討したところ,自験例のように成人で淡紅色調皮疹を呈しかつ汎発する例は稀であった。
  • 細川 裕子, 森田 明理, 小林 佳子, 辻 卓夫
    2000 年 62 巻 2 号 p. 182-185
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    非常に経過が長く,難治性尋常性乾癬の2例に対しPUVA-bath療法を行った。症例1:54歳の男性。罹患歴は10年。全身に境界明瞭で赤みの強い大きな局面がほぼ全身にみられた。入院期間60日,PUVA-bath療法を21回·計27.4J/cm2照射した。一部丘疹や軽い色素沈着を残したが,皮疹はほぼ改善した。症例2:54歳の男性。罹患歴は16年。全身に鱗屑を伴う紅色丘疹·局面がみられた。入院期間36日,PUVA-bath療法を7回·計4.1J/cm2照射した。上肢では一部丘疹を残したが,皮疹はほぼ改善した。症例1·2について,これまでの入院の外用PUVA療法との比較を行った。入院日数平均,1回の入院の治療回数,1回の入院の総照射量すべて,外用PUVA療法よりPUVA-bath療法の方が少量で効果があった。
  • 雄山 瑞栄, 和泉 智子, 清島 真理子
    2000 年 62 巻 2 号 p. 186-188
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    48歳,男性。10年前より糖尿病のためインスリン療法を受けている。数年前より項部に皮膚硬化が出現し,上背部に拡大した。初診時,同部位にそう痒のあるさざ波様の色素沈着を伴う硬化性局面を認めた。HE染色では真皮の著明な肥厚,膠原線維の膨化,線維間の間隙がみられた。真皮乳頭にはダイロン染色で赤橙色,コンゴレッド染色で淡紅色を呈するアミロイドの沈着が,また膠原線維間にはアルシアンブルー染色陽性の酸性ムコ多糖の沈着を認めた。以上より,本症例を糖尿病性浮腫性硬化症に合併した斑状アミロイドーシスと診断した。これらの疾患の合併の機序につき文献的考察を加えた。
  • 北島 康之, 伊藤 美保, 槙坪 康子
    2000 年 62 巻 2 号 p. 189-191
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    59歳の女性。初診の約20年前に下口唇に不整形で境界明瞭な色素斑に気付き,半年前から口腔内にも色素斑が多発してきた。来院時には口唇,口腔内の他,指尖にも米粒大までの黒褐色斑が認められた。口唇粘膜の病理組織学所見では,基底細胞層のメラニン色素の増加を認めたが,メラノサイトの増加は認められなかった。Peutz-Jeghers症候群, Addison病を疑ったが,消化管ポリポージスを認めず,遺伝性も欠くこと,副腎皮質機能低下を認めないことより両疾患を否定し,Laugier-Hunziker-Baran症候群と診断した。
  • 小見 浩子, 佐々木 哲雄, 長谷 哲男, 中嶋 弘
    2000 年 62 巻 2 号 p. 192-195
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    24歳,男性。Recklinghausen母斑症(NF 1)。8歳頃,顔面右側の灰青色斑に気付き,成長し有毛性となった。22歳時に当科を受診し右頬部から側頭下に硬毛を伴う太田母斑様の灰青色斑を認めた。組織学的には真皮メラノサイトの増殖と真皮下層から皮下脂肪織に主として線維芽細胞様細胞とSchwann細胞からなり,メラニン顆粒を有する細胞を混じた腫瘍塊を認めた。NF 1患者の有毛性色素沈着性神経線維腫と診断した。NF1に伴う皮膚腫瘍は多彩な色素性変化を伴うことを示す貴重な症例と考え報告した。
  • 藤井 俊樹, 木根渕 智子, 阿部 真也, 松井 裕, 柳原 誠, 石崎 宏, 元谷 喜久夫
    2000 年 62 巻 2 号 p. 196-198
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    57歳,女性。初診の約2年前から右足背に自覚症状のない径約1cmの表面凹凸不整,扁平隆起性腫瘤に気付いていた。組織学的には,表皮は不規則に肥厚し,その中に基底細胞様細胞の塊状増殖を認めた。腫瘍巣は周囲の表皮細胞と明瞭に境界され,表皮内に限局し,表皮内上皮腫の組織型を形成していた。また,腫瘍巣に隣接して,ひも状の細胞索が表皮から連続して,真皮方向に細長く伸びていた。細胞索を形成する細胞は基底細胞様細胞で,たがいに吻合しながら網状構造を形成し,免疫組織学的には汗管の性質(EMA陽性,34 βE 12陽性)を示した。この構造物は,真皮のfibrosisや炎症性細胞浸潤の結果生じた汗管細胞反応性の変化であると考えられた。
  • 四方田 まり, 石井 文人, 西岡 昭二, 名嘉真 武国, 森 理, 橋本 隆
    2000 年 62 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    83歳女性の頭頂部および90歳女性の背部に発生した眼瞼外脂腺癌を報告した。症例はHE染色では泡沫状細胞と好塩基性細胞の2種類からなり,泡沫状細胞の細胞質はズダンブラック染色陽性を示した。また電顕では泡沫状細胞は,その細胞質内に多数の脂肪滴を認め,好塩基細胞は核細胞質比が大きく,細胞内小器官が発達していた。脂腺癌の診断において,HE染色,ズダン染色,電顕だけでは脂腺分化を伴う基底細胞癌との鑑別が困難なことがある。私共はAnsaiらの報告の追試験を行い,まず予備実験としてhuman milk fat globules (HMFG) subclass 1および2が基底細胞癌には陰性であると確認した。自験脂腺癌症例は2例ともHMFG 1, HMFG 2の両方に陽性所見を示し,脂腺癌の診断に矛盾しない結果を得た。本邦における眼瞼外脂腺癌は自験例の2例を含め72例であった。好発部位は頭部,顔面で全体の約75%を占めた。
  • 雄山 瑞栄, 和泉 智子, 清島 真理子
    2000 年 62 巻 2 号 p. 204-206
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    57歳,男性。12歳時に右上肢に圧痛のある紫青色丘診が数個出現した。病理的組織所見では,真皮中層から下層にかけて1層の内皮細胞で囲まれた拡張した血管腔を認め,その周囲に大型の類円形の核と,エオジン好染の細胞質を有する1~数層の腫瘍細胞が存在した。免疫組織化学的染色において,α-smooth muscle actin,およびvimentinは腫瘍細胞で陽性,第VIII因子関連抗原は内皮細胞で陽性,desmin,myosin,およびS-100蛋白は陰性であった。
  • 角田 孝彦, 堀内 令久, 河西 達夫, 帷子 康雄
    2000 年 62 巻 2 号 p. 207-209
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    1986年に角田らは,帯状疱疹の皮疹が背部の正中線を少し越す所見を約10%の患者に認めたと報告した。今回,帯状疱疹の皮疹が背部の正中線を越え,反対側に点々と弧状または上下に1肋間の間隔をもって存在する2例を報告した。これらは,1982年に角田が報告した正中線上の皮神経の交叉や吻合,すなわちdermatomeのcrossed overlapにより生ずると考えられる。
  • 増野 賀子, 渡邊 亜紀, 松村 文子, 久保田 由美子, 古賀 哲也, 中山 樹一郎, 桐生 美麿
    2000 年 62 巻 2 号 p. 210-213
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    40歳の男性。1998年12月中旬に顔面の紅色丘疹に気付いた。皮疹は徐々に全身に散在性に拡大するとともに一部潰瘍化し,痂皮形成を伴ってきた。同時期より発熱,全身倦怠感が出現し,1ヵ月間に約10kgの体重減少もみられた。CD 4陽性Tリンパ球数は65/μlと低下し,HIV抗体陽性,血清梅毒反応陽性,局所滲出液のパーカーインク染色にてスピロヘータ陽性であり,病理組織学的所見と合わせて典型的malignant syphilisと診断した。本邦でもHIV感染患者の増加に伴って本症が今後増加する可能性があり,注意を要すると考えた。またmalignant syphilis患者においてはHIV感染も疑う必要があると思われた。
  • 清井 起鵬, 前川 嘉洋, 國武 裕子, 田中 敬子
    2000 年 62 巻 2 号 p. 214-217
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    28歳の中国人の女性。生食を好み,中国·日本において蛇·蛙·スッポン·蟹·魚等をよく生で食していた。1998年1月頃より右下腹部に痛みを伴う皮下腫瘤が出現,同年4月7日当院外科にて黒色虫体を摘出した。その後クエン酸ジエチルカルバマジン(商品名スパトニン®)を投与するも軽快せず,4月10日当科紹介となった。臨床症状·臨床経過·血清反応より顎口虫症と診断され,肺吸虫症も合併していることが判明し,6月17日よりプラジカンテル(商品名ビルトリシド®)の投与により症状は軽快した。
研究
  • 加藤 卓朗, 谷口 裕子, 西岡 清
    2000 年 62 巻 2 号 p. 218-221
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    手掌および手指腹を直接圧抵するhand-press培養法(以下HP法と略す)を用いて手白癬について検討した。対象は1996~98年に済生会川口総合病院皮膚科を受診した直接鏡検が陽性の未治療の手白癬患者17例で,内訳は男14例,女3例,年齢は31~81歳,平均57.1歳であった。17例中16例に他の部位の白癬の合併を認めた。通常の試験管培養とともにHP法を行った。すなわち243×243×18 mmの滅菌シャーレに5-fluorocytosineなどを添加したサブロー·ブドウ糖寒天培地を作製し,この培地上に被験者の手掌と指腹を十分に圧抵した後培養した。結果は試験管培養は17例中16例(94.1%)が陽性で,Trichophyton rubrum 13例, T. mentagrophytes 3例であった。HP法は17例中6例(35.3%)(T. rubrum5例, T. mentagrophytes 1例)が陽性で,集落数は9,3,2コロニー各1例,1コロニー3例で,合計17コロニー,平均1.0コロニーであった。17例中両法ともに陽性が6例,試験管培養のみ陽性が10例,両法ともに陰性が1例であった。筆者らの検討によると足白癬患者のfoot-press培養法は113例中76例(67.3%)が陽性で,集落数は100コロニー以上の例もあった。これに比較すると,手白癬は菌の散布率,散布集落数ともに少なく,足白癬に比較して感染源になりにくいと結論した。また手白癬患者からの本人および他人の皮膚への直接感染も,手白癬の頻度が低いことも合わせて,実際には少ないと推測した。
  • 王 黎曼, 王 建中, 林 春, 蘇 素玉, 王 卓浩, 李 佩華, 芝 紀代子, 峰下 哲
    2000 年 62 巻 2 号 p. 222-225
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    中国南方地区における72名のハンセン病患者及び138名の健常者にっいて血漿TNF-αを測定し,本疾患の病型や病態形成における関与について検討した。WHO-MDT分類に基づいて分類すると72名のうち51名はMB型に21名はPB型に属していた。患者と健常者の血漿TNF-α値はELISA法(Predicta®TNF-αキット)により測定した。血漿TNF-α濃度は患者群では142.7±17.1pg/mlで,その内訳はMB群では162.2±21.2pg/ml, PB群では95.4±25.7pg/mlであった。この値は健常者(18.1±1.6pg/ml)に比較していずれも有意に高値を示した。一方,罹病期間との関係についてみるとTNF-α値はMB型では10-19年, PB型では30-39年の群に高い傾向が認められた。
講座
統計
  • 小松 奈保子, 清水 千博, 大槻 典男
    2000 年 62 巻 2 号 p. 230-234
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    当院皮膚科で,1993~1996年及び1998年に,風疹,麻疹,溶連菌感染症などの典型的なウイルス性,細菌性発疹症などを除外し,中毒疹と診断した入院患者159人を対象に原因検索及びその解析を行った。薬剤性と推定された患者は91人(57.2%)と最も多く,次いで感染性が44人(27.7%)であった。感染性はウイルス性,細菌性,マイコプラズマ性などに分類し,その内,ウイルス性が最も多かった。薬剤性と推定された患者91人中21例は,薬剤の他,感染症など複数の要素が推定原因とされた。薬剤テストを施行した薬剤330種類中,77種類で薬剤テスト陽性であった。薬剤性と推定された患者91人中63人で,薬剤テスト陽性であった。薬剤テストが陽性であった被疑薬剤77種類のうち,69種類(89.6%)でスクラッチパッチテストが陽性を示し,薬剤テストの中で特にスクラッチパッチテストの有用性が示唆された。推定原因とされた薬剤は,消炎鎮痛剤,抗生物質,総合感冒薬など使用頻度が高く,かつ市販薬として入手が容易な薬剤が上位を占めた。また,病型は個々の症例で異なることが多く,病型から薬剤を推定することは困難と思われた。当院における中毒疹の実態調査から,薬剤テストが原因検索の検査法として有用であることが示唆された。中毒疹の原因の推定には各種検査を必要とし,最終的には検査結果や臨床経過,主治医の経験などから総合的に推定するしかなく,今後も薬疹の診断基準,検査方法などについて,症例を重ねさらに検討していく必要があると思われた。
治療
  • 大久保 ゆかり, 小宅 慎一, 竹尾 千景, 入澤 亮吉, 大井 綱郎, 古賀 道之
    2000 年 62 巻 2 号 p. 235-244
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬の患者を対象として,very strongのステロイド外用剤,0.05%酪酸プロピオン酸ベタメタゾン(アンテベート®軟膏)および本剤に10%サリチル酸ワセリンを等量で混合した製剤を12週間投与しその有用性を検討した。対象は36例で,患者のpsoriasis area and severity index(PASI)スコア平均は17.5±11.3(SD)の主として中等症以上の症例である。最終全般改善率は,アンテベート®軟膏群(15例)で,改善以上53.3%,やや改善以上86.7%,またアンテベート®軟膏+10%サリチル酸ワセリン群(13例)では,改善以上30.8%,やや改善以上76.9%で,両群ともに尋常性乾癬に対し優れた臨床効果が認められた。PASIスコアの算出方法に準じた重症度スコアは両薬剤群ともに有意な減少を認め,その変化率は両薬剤群に有意差を認めなかった。副作用は両薬剤群で各1例認められ,毛嚢炎および毛細血管拡張,皮膚萎縮であったが,いずれもステロイド外用剤として既知の副作用であった。以上よりアンテベート®軟膏は,尋常性乾癬に有用な薬剤であり,また本剤にサリチル酸ワセリンを混合した製剤も,同等の有効性を示し,より広範囲の病巣を有する場合には適用しやすいものと思われた。
  • 白方 裕司, 橋本 公二, 町野 博
    2000 年 62 巻 2 号 p. 245-254
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    タカルシトールクリームの乾癬被髪頭部に対する有効性·有用性を検討した。愛媛大学皮膚科及び町野皮フ科外来を受診した被髪頭部に中等度以上の病変を有する尋常性乾癬患者40例について検討した(有効評価症例数39例)。最終全般改善度は「かなり軽快」以上69.2%(27/39)であった。これを患者の塗布状況で層別比較してみると,うまく塗れた例では「かなり軽快」以上で92.9%(13/14),まあまあうまく塗れた例を合わせると「かなり軽快」以上で82.1%(23/28)であった。一方,うまく塗れなかった例では「かなり軽快」以上で25.0%(2/8)と低い値であった。さらに,タカルシトールクリームの乾癬被髪頭部への塗布においてチューブアダプターが塗布時の補助器具として有用であった。
  • 西岡 和恵, 瀬口 得二, 冨永 和行, 藤井 英雄, 倉田 佳子, 大村 明子
    2000 年 62 巻 2 号 p. 255-260
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    高齢者のそう痒性皮膚疾患に対するフマル酸エメダスチン(レミカット®カプセル)の有効性および安全性について検討した。登録症例は54例で,そのうち「初診以降受診せず」の12例を除いた42例について,有効性および安全性の解析を行った。副作用は4例に発現し,その内訳は眠気が2例,口渇,紅斑性発疹が各1例で,いずれも重篤な症状ではなかった。発現率は9.5%で,これまでの発現率11.2%に比べわずかに低い値であった。最終全般改善度は,改善以上の割合が73.8%(31/42)であった。概括安全度は,「ほぼ安全である」以上の割合が95.2%(40/42)であり,有用度では,有用以上の割合が73.8%(31/42)であった。以上のことから,レミカット® は高齢者のそう痒性皮膚疾患に対して有用であることが確認された。
  • 中山 樹一郎
    2000 年 62 巻 2 号 p. 261-262
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    82歳,男性。多発性脳梗塞,痴呆で寝たきりとなり,平成10年11月に福岡県筑豊地方の社会保険病院に入院。入院時すでに背部に褥瘡変化あり。壊死除去術および肉芽形成促進剤の外用するも極めて難治であった。平成11年7月再び壊死除去術を施行,その後蛋白分解酵素製剤のブロメライン軟膏を塗布。外科的手術後に残存した小さな壊死組織が消失し,褥瘡表面の性状も著明に改善した。その後肉芽形成促進剤の外用に変更し4ヵ月後の現在,褥瘡表面の良好な肉芽形成状態が続いている。ブロメライン軟膏の塗布による褥瘡周囲の発赤などの刺激症状はみられなかった。褥瘡治療において,エレース®-C軟膏が製造中止された現在,ブロメライン軟膏はエレース®-C軟膏にかわる強力な蛋白分解酵素製剤と考えられる。
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