当院皮膚科で,1993~1996年及び1998年に,風疹,麻疹,溶連菌感染症などの典型的なウイルス性,細菌性発疹症などを除外し,中毒疹と診断した入院患者159人を対象に原因検索及びその解析を行った。薬剤性と推定された患者は91人(57.2%)と最も多く,次いで感染性が44人(27.7%)であった。感染性はウイルス性,細菌性,マイコプラズマ性などに分類し,その内,ウイルス性が最も多かった。薬剤性と推定された患者91人中21例は,薬剤の他,感染症など複数の要素が推定原因とされた。薬剤テストを施行した薬剤330種類中,77種類で薬剤テスト陽性であった。薬剤性と推定された患者91人中63人で,薬剤テスト陽性であった。薬剤テストが陽性であった被疑薬剤77種類のうち,69種類(89.6%)でスクラッチパッチテストが陽性を示し,薬剤テストの中で特にスクラッチパッチテストの有用性が示唆された。推定原因とされた薬剤は,消炎鎮痛剤,抗生物質,総合感冒薬など使用頻度が高く,かつ市販薬として入手が容易な薬剤が上位を占めた。また,病型は個々の症例で異なることが多く,病型から薬剤を推定することは困難と思われた。当院における中毒疹の実態調査から,薬剤テストが原因検索の検査法として有用であることが示唆された。中毒疹の原因の推定には各種検査を必要とし,最終的には検査結果や臨床経過,主治医の経験などから総合的に推定するしかなく,今後も薬疹の診断基準,検査方法などについて,症例を重ねさらに検討していく必要があると思われた。
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