抄録
70歳,男性。1999年3月に感冒様症状が続き,口腔内に小潰瘍が多発した。ヘルペス性歯肉口内炎と診断され治療中であったが,上部消化管内視鏡検査にてサイトメガロウイルス食道炎も指摘された。また数年前より四肢および体幹に皮疹を認めており,HTLV-1抗体陽性であったため成人T細胞性白血病(ATL)との関連を疑われて当科紹介受診。初診時,体幹部,下肢に軽度そう痒を伴う紅色丘疹があり,下口唇には径1cmほどの白色の厚い鱗屑のついた局面がみられた。下口唇の局面のKOH鏡検では疥癬虫,虫卵が多数みられたため,疥癬と診断した。その後,急性型のATLと診断された。下口唇に疥癬が寄生した症例は見当たらず,ATL患者に生じる疥癬には特異な皮疹を呈することがあると考えられた。