西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
研究
2001年1月から6月までに経験した成人麻疹20例の検討
加藤 陽子東 直行川名 誠司
著者情報
ジャーナル 認証あり

2003 年 65 巻 1 号 p. 54-57

詳細
抄録

2001年1月から6月まで当科で経験した成人麻疹20例について,臨床検査所見,麻疹ワクチン接種歴の有無,流行抑止のための対策などについて検討した。当科では2001年1月から成人麻疹患者が多く認められ,1月から6月の上半期で前年上半期の12名を上回った。全国的にも麻疹患者が多数発生した。皮疹は全例典型的で,大半の症例で白血球,血小板の減少,異型リンパ球の増加,肝機能障害を認めた。患者は,麻疹ワクチン任意接種世代(現在およそ25歳から35歳)10人,定期接種世代(現在およそ24歳以下)9人とほぼ半数ずつをしめた。麻疹ワクチンは不明2例を除く18例中8例が既接種,10例が未接種で,未接種者は任意接種世代が10人中4人(40%),定期接種世代が9人中5人(56%)であった。自験20例を検討した結果,今回の成人麻疹流行の要因として,1)ワクチン任意接種世代の低接種率に加えて定期接種開始後の患者世代における低接種率,2)ワクチン既接種者におけるprimary or secondary vaccine failureを考えた。我が国においては,近年のワクチン普及に伴う麻疹感受性密度の低下により流行の周期は延長したが,いまだ地域的な小流行に加え1)2),今回の様な全国的な流行の発生を認める。今後の麻疹流行の抑止には,ワクチン接種率の向上,またワクチン2回接種制度の導入が必要と考えられた。

著者関連情報
© 2003 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top