2004 年 66 巻 4 号 p. 360-363
症例は67歳の女性。初診の約3年前より右下眼瞼の慢性眼瞼炎の診断で眼科の加療を受けていたが, 皮膚生検の結果, 脂腺癌であることが明らかとなった。第1回目の腫瘍切除術では, 紅斑局面を眼瞼粘膜を含め充分な範囲で切除したが, 病理組織を確認すると, 内眼角術中迅速部と切除部内眼角断端に腫瘍細胞を認めた。再度の切除範囲を決定する目的で, mapping biopsyを施行し, 再切除した。術後1年3カ月が経過した現在, 局所再発や転移等の所見を認めない。自験例では腫瘍主病巣から十分に離れた部位でのmapping biopsyの組織像で, 正常皮膚を介し毛包部位に腫瘍細胞を認めたことから, 多中心性の浸潤発生形式を取った可能性が考えられた。境界不明瞭な局面を呈するものは, 多中心性の浸潤形式も考慮に入れ, mapping biopsy等にて切除範囲を決定する必要性があると考え報告した。