抄録
44歳の女性。原発巣と思われる腰背部腫瘍は他院にて切除され病理組織像は不明であったが,皮膚およびリンパ節転移を主訴に1998年2月当科初診。初診時右腋窩・右側頚部に腫瘍を認めた。同年3月に右腋窩・右側頚部・右鎖骨下リンパ節郭清術を施行し,病理組織より悪性黒色腫stage IIIc(TxN2M0)と診断した。化学療法を5回行ったが,半年後に小胸筋内への転移を認めた。腫瘍摘出および化学療法の変更を行い,合計9回の化学療法の後,一時来院せず,2002年5月に皮膚多発転移を認めたため再来。筋・腹部大動脈周囲リンパ節,肝,胃十二指腸,脳に転移を認め,皮膚腫瘤切除を行った。切除組織の病理組織像にballoon cellが認められ,免疫組織化学染色でS-100染色陽性,HMB45染色陰性であり転移後balloon cell melanomaと考えられた。4回の化学療法を施行したが2003年1月に永眠した。Balloon cell melanomaの本邦報告例は11例のみであり,そのうち9例は女性であり,8例は49歳未満であった。自験例と比較し報告する。