西日本皮膚科
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67 巻, 2 号
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図説
症例
  • 豊田 美都, 今福 信一, 瓜生 美樹, 師井 洋一, 占部 和敬, 古江 増隆
    2005 年 67 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    60歳の男性。58歳頃から頭部,顔面に痒性の紅斑が出現し四肢に拡大した。ステロイド外用,抗アレルギー薬内服で改善なく,顔面に色素沈着および脱失を伴い,白斑黒皮症様の臨床像を呈した。UVAで8J/cm2と最小反応量(MRD)の低下,UVBで0.03J/cm2と最小紅斑量(MED)の低下が認められた。病理組織像は表皮肥厚,錯角化,海綿状態が見られ,真皮上層の血管周囲に炎症細胞の浸潤が認められ,慢性皮膚炎の像であった。以上より慢性光線性皮膚炎(CAD)と診断した。UVA 8J/cm2×3日間連続の反復照射試験部位には紅斑を生じ,同部の病理組織像は病変部のものと類似していた。顔面,頚部の紅斑は遮光とタクロリムス軟膏の外用で著明に改善し,以後9ヵ月間フォローしているが経過は良好である。タクロリムス軟膏はCADの治療に有効であると考えられた。
  • 石黒 洋明, 駄馬中 公美, 池田 光徳, 小玉 肇, 井坂 公
    2005 年 67 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    著明な色素沈着を伴う疣状扁平苔癬を生じた58歳の男性例を報告する。初診の2年前より血液透析を受けており,7ヵ月前より数種類の薬剤を内服していた。5ヵ月前より背部を主体に全身性,左右対称性に紫紅色丘疹が多発し,次第に黒色丘疹と疣状の灰白色小結節および局面が擦過部位に目立つようになった。病理組織像は扁平苔癬に合致し,黒色丘疹部では表皮内メラニンの増加とメラノファージ浸潤が著しく,灰白色局面では表皮肥厚が顕著で,表皮内メラニンは乏しく,メラノファージも少なかった。薬剤誘発性と考え,血液透析は継続しつつ,内服薬を中止または他剤に変更し,プロピオン酸クロベタゾール軟膏の外用を行うことにより皮疹は消退し,再発しなかった。パッチテストおよび内服誘発試験では原因薬剤は特定できなかった。著明な色素沈着は,血液透析で除去されず体内に高濃度に蓄積されたβ-lipotropinがメラニン産生を著しく増強させた結果と考えた。
  • -Lichen Planus Pigmentosusとの異同について-
    山本 哲也, 松浦 浩徳, 岩月 啓氏, 妹尾 雅明
    2005 年 67 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    79歳の女性。2001年2月頃から左前胸部に褐色斑が出現し,ついで左側顔面,左側腹部および左側腰部と片側性に拡大してきたため,当科を受診した。皮疹は正中線で明瞭に境された自覚症状のない茶褐色の色素斑で,下顎の病変は灰青色を呈していた。病理組織所見で,表皮の菲薄化,基底層の液状変性とCivatte bodiesを認めた。真皮ではメラニンの滴落,メラノファージ,軽度の血管周囲性リンパ球浸潤が認められた。片側性に斑状皮疹が配列した特徴的な所見からunilateral ashy dermatosisと診断した。Lichen planus pigmentosusとの異同について考察を加えた。
  • 安念 美雪, 松葉 よう子, 比留間 政太郎
    2005 年 67 巻 2 号 p. 106-108
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    59歳の女性。初診の1年前から出現した右顔面,頚部の発汗低下を主訴に当科を受診した。縮瞳,眼瞼下垂を認め,発汗試験により顔面,頚部の右半分に無汗部分が見られた。頭部MRI,MRangiography,頚部MRI,CTにて明らかな異常は認められなかったが,瞳孔点眼試験の結果と合わせて,節前障害によるHorner症候群と診断した。原因は不明であった。本症候群は各科領域より過去10年間で213例の報告があるが,皮膚科領域では,後天性の症例としては最初の報告である。
  • 小松 里恵, 敷地 孝法, 滝脇 弘嗣, 荒瀬 誠治
    2005 年 67 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    Pasini-Pierini型進行性特発性皮膚萎縮症(APP)と線状強皮症の病変が同一患者にみられた31歳,女性例を報告する。14歳頃に躯幹と左上肢に褐色斑を生じ放置していたが,左前腕にしびれを生じたため来院した。躯幹の褐色斑は周囲より境界鮮明に浅く陥凹し,組織学的に真皮の菲薄化を認め,弾性線維に異常を認めずAPPと診断した。一方,左上肢の褐色斑は手背~手関節にかけて表面に光沢を伴い,筋萎縮も伴った萎縮性局面であり,線状強皮症に一致する特徴を呈した。自験例はAPPと線状強皮症が近縁疾患であるという説を支持する症例と思われた。
  • 荒尾 友美子, 幸田 太, 中村 恭子, 濱田 学, 師井 洋一, 占部 和敬, 古江 増隆
    2005 年 67 巻 2 号 p. 113-115
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    66歳の女性。1999年より径2~3cmの皮膚の陥凹が両上腕に出現。徐々に前腕・胸背部へと拡大してきた。高血圧症および高脂血症以外に合併症はなし。免疫学的検査にて抗SS-A抗体・抗SS-B抗体陽性。病理組織像では深部脂肪織の炎症性細胞浸潤および脂肪を貪食したマクロファージが認められた。表皮真皮境界部には免疫グロブリンの沈着および補体の沈着は認められずlocalized lipoatrophy,inflammatory typeと診断した。本症はlipoatrophic connective tissue panniculitisとも呼ばれ原因不明であるが抗核抗体陽性例も多く,自己免疫学的な機序で発症すると考えられている。
  • ―表皮内にも黄色腫細胞を認めた1例―
    村上 信司, 橋本 公二, 石川 徹, 浜川 裕之
    2005 年 67 巻 2 号 p. 116-119
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は64歳の男性。1992年上顎癌にて,化学療法,上顎骨切除,頚部リンパ節郭清を受けた。2002年3月,胸部CTにて肺野の多発性結節と頚部リンパ節腫大が出現,生検にて扁平上皮癌の転移と判明した。同年3月中旬頃より,前額から眉間部に自覚症状のない結節が多発し,病理組織学的に,黄色腫と診断した。血中脂質は正常。初診の約2ヵ月後,化学療法を受け,リンパ節および肺の結節の縮小を認めると同時に,顔面の結節の著明な消退を認めた。上顎癌の頚部リンパ節転移に伴う顔面の浮腫が本症例の黄色腫の発症機序として考えられた。また本症例では表皮内に黄色腫細胞の表皮内浸潤を認めており,表皮向性黄色腫として文献上2例目の症例と思われた。
  • 五月女 聡浩, 籏持 淳, 山崎 雙次, 鴇田 勝哉, 三谷 絹子
    2005 年 67 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    65歳の男性。約6年前より両下肢のしびれ,脱力感にて整形外科を受診し第4胸椎の圧迫性病変を指摘され,外科的療法を受けた際に病理所見より形質細胞腫と診断された。初診の約1年前に右肩痛を生じ,右上腕骨に同腫瘍が認められた。その後当院にて入院精査の結果,うっ血乳頭,髄液蛋白上昇,M蛋白血症がみられ,皮膚症状も合わせて,Crow-Fukase症候群と診断された。2003年6月9日当科初診時,四肢遠位部を中心とした色素沈着と手背から前腕にかけての著明な皮膚硬化,四肢の多毛,下腿の浮腫,背部の暗紅色結節を認めた。左前腕部の病理所見は,真皮全層特に中層の膠原線維の膨化と増生,血管周囲性のリンパ球浸潤を呈し,また背部の暗紅色結節の病理所見は,大小様々な血管の増加と内皮細胞の増生がみられた。免疫電気泳動にてIgGλ型のM蛋白と,血中の血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)の増加が認められた。
  • 彭 志中, 大塚 勤, 籏持 淳, 山崎 雙次, 栗原 みどり
    2005 年 67 巻 2 号 p. 125-127
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    69歳の女性。37年前帝王切開時に輸血歴あり。1992年よりC型肝炎による慢性肝機能障害を指摘され,経過観察中であった。1999年3月にエコー所見にて肝細胞癌が疑われ,エコー誘導下経皮的吸引肝生検を施行し,病理所見より肝細胞癌と診断された。1999年10月までに計8回の純エタノール注入療法(PEI)を行った。2000年5月頃右季肋下のPEIの刺入部に10×20mmの皮下結節が出現した。その局在部位と病理組織所見よりneedle tract implantationと考えられた。
  • 仙波 京子, 竹内 善治, 波多野 豊, 甲斐 宜貴, 片桐 一元, 藤原 作平, 園田 忠重, 野柳 俊明
    2005 年 67 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    44歳の女性。原発巣と思われる腰背部腫瘍は他院にて切除され病理組織像は不明であったが,皮膚およびリンパ節転移を主訴に1998年2月当科初診。初診時右腋窩・右側頚部に腫瘍を認めた。同年3月に右腋窩・右側頚部・右鎖骨下リンパ節郭清術を施行し,病理組織より悪性黒色腫stage IIIc(TxN2M0)と診断した。化学療法を5回行ったが,半年後に小胸筋内への転移を認めた。腫瘍摘出および化学療法の変更を行い,合計9回の化学療法の後,一時来院せず,2002年5月に皮膚多発転移を認めたため再来。筋・腹部大動脈周囲リンパ節,肝,胃十二指腸,脳に転移を認め,皮膚腫瘤切除を行った。切除組織の病理組織像にballoon cellが認められ,免疫組織化学染色でS-100染色陽性,HMB45染色陰性であり転移後balloon cell melanomaと考えられた。4回の化学療法を施行したが2003年1月に永眠した。Balloon cell melanomaの本邦報告例は11例のみであり,そのうち9例は女性であり,8例は49歳未満であった。自験例と比較し報告する。
  • 高木 磨美, 小林 桂子, 磯村 巌, 森田 明理, 沼田 時男
    2005 年 67 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    25歳の女性。約3ヵ月前から左側腹部に圧痛が出現し増強。初診時,皮膚表面に異常なく,皮下の硬結がわずかに認められるのみであった。MRIで皮下組織に1.2×1.0cmの分葉状の病変を確認。手術時,末梢神経に巻きついた径約7mmの2個の数珠状結節がみられた。病理組織像で被膜を認め,腫瘍内に紡錘形細胞,軸索がみられた。構成する腫瘍細胞は免疫組織化学染色でS-100陽性であった。病理学的所見から神経線維腫と診断した。Recklinghausen病を疑う臨床所見はみられなかった。
  • 小楠 優子, 米村 真由, 平 嘉世, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2005 年 67 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    68歳,女性。初診の16日前より口唇のかさつきと腫脹を認め,その後口腔内びらんが出現,次第に増悪し38℃台の発熱を認め,摂食困難となったため当科に入院した。初診時上下口唇は腫脹して痂皮が付着し,口腔内にびまん性,舌に地図状のびらんがあり,疼痛が著明であった。薬疹を疑い,薬剤を全て中止し補液と含嗽薬のみで経過をみたところ,次第に症状は改善した。経過中,皮膚症状の出現を認めなかった。原因として,症状出現5日前に内服開始されていた冠血管拡張薬であるロコルナール®(トラピジル)が最も疑われた。パッチテストおよびDLSTは陰性であった。内服テストにて,ロコルナール®内服後口唇の腫脹,眼球結膜充血,肛門の違和感が出現し,陽性と判定した。以上よりロコルナール®による薬疹と診断した。粘膜部に限局した薬疹について考察を加えた。
  • 久保田 由美子, 中山 樹一郎
    2005 年 67 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    市販鎮痛剤による多発性固定薬疹の2例を報告した。症例1は31歳の女性。12歳頃より生理痛にて市販鎮痛剤を毎月内服していた。29歳頃より四肢,肛囲の同じ部位に内服後痒性紅斑が出現し色素沈着を残すということを繰り返していた。皮疹部のパッチテスト(PT)でイブ®A,ニューカイテキ®Z,アリルイソプロピルアセチル尿素(AIAU)が陽性。DLSTはニューカイテキ®Zで陽性。以上よりAIAUを原因と確定した。症例2は33歳の男性。23歳頃より片頭痛にて月に1回,バファリン®,30歳より新セデス®錠を内服していた。初診の半年前より内服後,口腔内と両手に痛痒い紅斑が出現し,色素沈着を残すということを繰り返し,2日続けて内服後,重症の粘膜症状が出現し,ステロイド内服を必要とした。皮疹部のPTで新セデス®錠,セデリン®,エテンザミドが陽性。DLSTは新セデス®錠で陽性。以上よりエテンザミドを原因と確定した。2症例とも病歴より原因薬剤は特定できたが,原因成分の特定には皮疹部PTが有用であった。
研究
  • 柴田 智子, 村上 義之, 師井 洋一, 永江 祥之介, 占部 和敬, 古賀 哲也, 古江 増隆, 中山 樹一郎
    2005 年 67 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    1993年から1998年の間に当科では,四肢原発の悪性黒色腫21例(のべ25例)に対し,患肢の局所温熱灌流療法(HILP)を行った。19症例についてはリンパ節郭清を含む拡大切除術施行時にadjuvant療法としてHILPを施行,また免疫化学療法も併用した。症例1,12については拡大切除後に認めたin-transit metastasisに対して,HILPを施行した。現在まで,HILP施行後に再発,転移を来したのは7症例であり,そのすべてがHILPの施行時もしくはそれ以前に既に所属リンパ節に転移を認めたstage IIIの症例であった。この7例中,HILP施行時にin-transit metastasisを認めたのは6例であった。本邦における悪性黒色腫の統計と比較して,5年生存率では若干,高い傾向がみられ,また局所の腫瘍抑制効果を認めた。また予後に関与すると考えられる免疫学的パラメーターについて再発例と非再発例を比較したところ,再発例ではNK細胞活性が灌流中,灌流後に低値を示す傾向を認めた。
治療
  • 柴垣 直孝, 猪爪 隆史, 安藤 典子, 北村 玲子, 水谷 三記子, 長阪 晶子, 清水 顕, 島田 眞路
    2005 年 67 巻 2 号 p. 152-159
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    ジアミド誘導体を配合した入浴剤のアトピー性皮膚炎患者に対する有用性を検討するために,合成擬似セラミドなどの油性保湿成分とユーカリエキスおよびオーツ麦エキスを配合した入浴剤を対照処方とし,この対照入浴剤処方にジアミド誘導体を配合した入浴剤処方を用いて二重盲検法による入浴での使用試験を行った。対象はアトピー性皮膚炎患者21例(ジアミド誘導体配合入浴剤使用群13例,対照入浴剤使用群8例)で,入浴剤を3~6週間使用させ,身体部位の乾燥症状や痒みに対する効果を検討した。その結果,1.対照入浴剤使用群では「乾燥」および「落屑」において有意な改善効果が認められたのに対し,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群では「乾燥」,「落屑」に加え,「そう痒・そう破痕」および「角層水分量」において有意な改善効果が認められた。2.特に高頻度(毎週4回以上)の使用患者では,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群(7例)において「入浴中のかゆみスコア」の改善傾向と「入浴後のかゆみスコア」の有意な改善が認められたのに対し,対照入浴剤使用群(7例)においてはいずれも有意な改善を認めなかった。また,「入浴後のかゆみスコア」の改善を示す症例数は,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群の方が対照入浴剤使用群と比較し,有意に多かった。以上の結果より,ジアミド誘導体を配合した入浴剤の使用は,アトピー性皮膚炎の治療において一つの有用な補助療法となる可能性が示唆された。
  • 龍 敦子, 山本 和司, 牧野 武利, 藤田 淳史, 多田 讓治
    2005 年 67 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    高率・高密度に黄色ブドウ球菌が定着しているアトピー性皮膚炎では,その除菌によりある程度の皮膚炎の改善が得られる。われわれは12-メチルテトラデカン酸を約15%含んだラノリン脂肪酸分画物に黄色ブドウ球菌に対する選択的静菌・殺菌作用を見出し,本分画を2%含有する白色ワセリン軟膏(LFA軟膏)と基剤のみのプラセボ軟膏を作成し,アトピー性皮膚炎患者での黄色ブドウ球菌に対する影響と皮膚炎に対する有効性・安全性について,二重盲検無作為化群間比較試験を40例(男性21例,女性19例,平均年齢22±14)で施行した。LFA軟膏あるいはプラセボ軟膏を1週間外用して,その前後で菌量と臨床症状を比較検討し,黄色ブドウ球菌が10cfu/10cm2以上検出された22例(LFA軟膏群12例,プラセボ軟膏群10例)で解析を行った。LFA軟膏塗布群では,プラセボ軟膏塗布群に比べ黄色ブドウ球菌の菌量が有意に減少した。いずれの軟膏もコアグラーゼ陰性ブドウ球菌には全く影響しなかった。臨床症状の改善は両群ともに認められ,両群間に有意差はなかった。LFA軟膏は,アトピー性皮膚炎治療に補助的な効果が期待できるスキンケア外用薬として非常に有用と考えられる。
  • 片桐 一元, 谷口 一男, 藤岡 利生, 柴田 興彦, 山邉 素子, 山本 千恵子
    2005 年 67 巻 2 号 p. 166-172
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    DDS(drug delivery system)の概念を取り入れて開発された経皮吸収型鎮痛消炎貼付剤は炎症部位に近接した皮膚から薬剤が安定的に浸透作用し,消化器症状などの副作用がないために汎用されている。その一方で,同一部位に繰り返し貼付されることから,皮膚への高い安全性が求められる。今回我々は市販されている経皮吸収型鎮痛消炎貼付剤,(1)フェルビナク含有プラスター剤(フェルビナクP「EMEC」)(被験薬剤A)(2)インドメタシン含有プラスター剤(セラスター®)(被験薬剤B),(3)ケトプロフェン含有プラスター剤(モーラス®テープ)(被験薬剤C),(4)フルルビプロフェン含有プラスター剤(ヤクバン®40)(被験薬剤D),および(1)の基剤(被験薬剤E)が皮膚に及ぼす影響について検討した。78名の被験者に被験薬剤を連続貼用し,2日,4日,6日後に視診,マイクロスコープによる拡大写真,経皮的水分蒸散量,皮膚角質水分量などを記録・測定評価した。これら5被験薬剤は経皮的水分蒸散量,皮膚角質水分量が高い被験薬剤C,Dと低い被験薬剤A,B,Eに分けられた。この違いは製剤の製造法の違いに起因している。また,これら検査値の高値は貼付剤によりふやけた状態(maceration)になったことを示し,潜在的な皮膚への刺激反応になると考えられた。発赤などの刺激反応等を総合するとEを除外した市販されている4製剤の中では被験薬剤Aが最も安全性が高いと考えられた。医療材料の安全性の評価には視覚的検査以外に経皮的水分蒸散量,皮膚角質水分量などによる評価も検討するほうが望ましい。
  • 近藤 直子, 花田 勝美, 榊 幸子, 松中 浩
    2005 年 67 巻 2 号 p. 173-178
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/25
    ジャーナル 認証あり
    皮膚の乾燥症状を有するアトピー性皮膚炎または乾皮症の患者26例に対し,オリゴマリン®をそれぞれ含んだ3種類のスキンケア製剤(ローション,ボディクリーム,ハンドクリーム)の使用試験を実施し,その安全性と有用性を検討した。オリゴマリン®は,海水からナトリウムなどを減量し亜鉛やセレンなどの微量元素を多く含む化粧品(医薬部外品)原料である。8週間の使用において,ボディクリームを使用した乾皮症の1例に軽いそう痒と炎症を認めたが,それ以外のすべての症例で安全性を確認した。また有用性は,皮膚所見,表皮角層水分量および角層細胞の形態観察にて評価した。その結果,本試験に供した3種類のスキンケア製剤は,乾燥性皮膚に対し安全に使用でき,かつ皮膚症状を改善するとともに,角層のバリア機能を向上させ得ることが明らかとなった。
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