DDS(drug delivery system)の概念を取り入れて開発された経皮吸収型鎮痛消炎貼付剤は炎症部位に近接した皮膚から薬剤が安定的に浸透作用し,消化器症状などの副作用がないために汎用されている。その一方で,同一部位に繰り返し貼付されることから,皮膚への高い安全性が求められる。今回我々は市販されている経皮吸収型鎮痛消炎貼付剤,(1)フェルビナク含有プラスター剤(フェルビナクP「EMEC」)(被験薬剤A)(2)インドメタシン含有プラスター剤(セラスター
®)(被験薬剤B),(3)ケトプロフェン含有プラスター剤(モーラス
®テープ)(被験薬剤C),(4)フルルビプロフェン含有プラスター剤(ヤクバン
®40)(被験薬剤D),および(1)の基剤(被験薬剤E)が皮膚に及ぼす影響について検討した。78名の被験者に被験薬剤を連続貼用し,2日,4日,6日後に視診,マイクロスコープによる拡大写真,経皮的水分蒸散量,皮膚角質水分量などを記録・測定評価した。これら5被験薬剤は経皮的水分蒸散量,皮膚角質水分量が高い被験薬剤C,Dと低い被験薬剤A,B,Eに分けられた。この違いは製剤の製造法の違いに起因している。また,これら検査値の高値は貼付剤によりふやけた状態(maceration)になったことを示し,潜在的な皮膚への刺激反応になると考えられた。発赤などの刺激反応等を総合するとEを除外した市販されている4製剤の中では被験薬剤Aが最も安全性が高いと考えられた。医療材料の安全性の評価には視覚的検査以外に経皮的水分蒸散量,皮膚角質水分量などによる評価も検討するほうが望ましい。
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