西日本皮膚科
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治療
アトピックドライスキンにおけるバリアー障害の回復の意義
—バリアークリームの塗布と無塗布との比較解析—
松木 勇人
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2006 年 68 巻 4 号 p. 413-421

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抄録

アトピー性皮膚炎(AD)ではその無疹部皮膚(アトピックドライスキン)においてもバリアー障害が継続し抗原や刺激物の容易な経皮吸収により皮膚炎が再発したり,悪化する要因になっている。したがってこのアトピックドライスキンで減少したバリアー機能を回復させることはADの易刺激性を防止する観点からそのスキンケアーにおいて本質的に重要な課題と考えられる。本研究ではバリアー回復効果を有する合成セラミドクリームの無疹部皮膚への使用の意義を再検証するため,クリーム塗布を行わない無処理部コントロールとの比較において,TEWLおよびCapacitance値の変化を測定し,乾燥落屑性変化の改善およびその重症度レベルとの関連を解析した。合成セラミドクリームの3,4週間の前腕無疹部皮膚への塗布により乾燥・落屑スコアーは有意に減少したのに対し,無処理部皮膚でも3,4週間後には乾燥・落屑スコアーのわずかに弱いが有意な減少を示し,この減少効果は合成セラミドクリームが無処理に比べて有意に高い結果であった。平行して測定したTEWL値とCapacitance値は合成セラミドクリーム塗布皮膚で3および4週間後で処理開始時に比べ有意な減少および増加を示したが,無処理皮膚では3および4週間後でわずかな減少および増加は認められるものの,処理開始時に比べての有意な差は認められなかった。また合成セラミドクリームのTEWL減少効果およびCapacitance値増加効果は3および4週間後でいずれも無処理に比べて有意に高い効果を示した。TEWL値およびCapacitance値の相関プロット図で,AD重症度との関連で合成セラミドクリームの効果を検証したところ,合成セラミドクリーム3週間塗布および4週間塗布皮膚ではほぼ健常者レベル近くまでの改善が認められた。以上の結果は,皮膚所見の改善は必ずしもバリアー機能の改善を反映していないので,臨床経過の観察においては皮膚所見の評価とともに角層機能特にバリアー機能の測定が重要であること,またスキンケアー剤の使用なくしてはバリアー機能の改善は難しいことを示唆し,バリアー機能の改善能力をもつスキンケアー剤の使用意義が再確認された。

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© 2006 日本皮膚科学会西部支部
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