西日本皮膚科
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68 巻, 4 号
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図説
綜説
症例
  • 大石 正樹, 波多野 豊, 片桐 一元, 藤原 作平, 山本 貴弘
    2006 年 68 巻 4 号 p. 361-363
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    28歳,女性。初診の4ヵ月前より鼻背部に潰瘍が出現し,病理所見で真皮に密な好中球浸潤を認めた。潰瘍の細菌培養は陰性であった。壊疽性膿皮症と診断し,ステロイド,免疫抑制剤,DDS内服による加療を開始したが,潰瘍は拡大と縮小を繰り返し難治であった。プレドニゾロン局注を併用し潰瘍は縮小したが,効果は不十分であった。ニコチン貼付を開始したところ潰瘍の著明な縮小を認め,ステロイドの内服量を漸減したにも関わらず,約4ヵ月で潰瘍は完全に上皮化した。ステロイド内服に抵抗性の壊疽性膿皮症に対してプレドニゾロン局注とニコチン貼付は試みるべき治療法と考えられた。
  • 宮川 健彦, 鎌田 憲明, 小林 孝志, 新海 浤
    2006 年 68 巻 4 号 p. 364-366
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    症例は60歳の男性。10年前より尋常性乾癬を加療中。約半年前より,右前腕の屈側尺側に皮下硬結としびれが出現し,徐々に悪化した。皮膚の表面は常色で境界は不明瞭。Raynaud現象及び,強指症は認めなかった。激しい運動,有機溶剤の暴露,L-トリプトファンの摂取歴はなかった。病理組織では脂肪織隔壁,筋膜の硬化性変化と著明な肥厚を認めた。組織および末梢血の好酸球の増多はなかった。血清中抗核抗体は80倍陽性であった。Morphea profundaと診断した。ステロイド内服はせず経過観察中であるが,皮下硬結の拡大はない。
  • 寺本 由紀子, 菅 麻衣子, 中野 純二
    2006 年 68 巻 4 号 p. 367-370
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    29歳,女性。初回妊娠後期より四肢・腰部の筋痛および筋力低下を自覚していた。続いて手指背の角化性丘疹,顔面・背部の紅斑が出現した。妊娠第39週で健常女児を出産したが,出産後も皮疹・筋症状ともに悪化してきた。臨床所見,血中CK上昇,筋生検の結果より皮膚筋炎と診断した。プレドニゾロン0.5mg/kg/day内服開始後,皮疹・筋症状は急速に改善した。妊娠中に発症した皮膚筋炎・多発筋炎の報告例は少ないが,その特徴について文献的に考察した。
  • —剖検にて橋本病の合併が疑われた1例—
    牧野 公治, 前川 嘉洋, 三角 修子, 村山 寿彦, 山下 建昭
    2006 年 68 巻 4 号 p. 371-374
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    88歳,女性。前医入院中の2002年5月頃から全身の発赤腫脹があり,プレドニゾロン1日10mgなどの内服にて治療していた。2002年8月に上部消化管出血を来し,プレドニゾロンを中止したところ皮膚症状が悪化したため,2002年9月当科に入院した。全身の紅斑浸潤,四肢の緊満性水疱,浮腫を認め,生検にて表皮下の水疱と好酸球浸潤,蛍光抗体法で基底膜部のIgG沈着を認めたため,水疱性類天疱瘡と診断した。塩酸ミノサイクリン及びジアミノジフェニルスルホン内服等で水疱は上皮化した。しかし,入院20日目頃より呼吸困難を来し,30日目に死亡した。剖検にて,死因は敗血症と診断されたが,甲状腺濾胞の萎縮,濾胞上皮の好酸性変化,間質への細胞浸潤が認められ,橋本病の合併が示唆された。
  •  
    尾形 美穂, 三砂 範幸, 井上 卓也, 平島 徳幸, 成澤 寛, 石井 文人, 橋本 隆
    2006 年 68 巻 4 号 p. 375-379
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    87歳,女性。両側手掌,手背,足底に水疱が出現し,四肢に水疱が拡大したため当科紹介となった。膝関節周囲から大腿部,上腕にほぼ対称性に径0.5~1cmと小型の緊満性水疱を認めた。水疱部の病理組織では表皮下水疱を認め,周囲の真皮には好中球が主体で,好酸球,リンパ球などの炎症細胞浸潤がみられた。蛍光抗体直接法にて基底膜にIgG,C3の線状沈着を認めた。1M食塩水剥離皮膚を用いた蛍光抗体間接法ではIgGが真皮側に反応し,真皮抽出液を用いた免疫ブロット法にて200kDaタンパクと反応し,抗p200類天疱瘡と診断した。また,爪の白濁と肥厚を認め,疥癬の治療歴があったことから疥癬を疑った。爪下の角質から疥癬の虫体,虫卵を検出した。ステロイド投与および疥癬の治療にて水疱は速やかに改善した。抗p200類天疱瘡と共に疥癬との関連についても文献的考察を加えた。
  • 平島 徳幸, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2006 年 68 巻 4 号 p. 380-382
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    71歳,女性。1996年より膿疱性乾癬に対して,エトレチナートの内服による治療を行っていた。比較的良好にコントロールされていたが,2001年に著明な増悪を認めたため,エトレチナートを増量した。皮疹が軽快した後,羞明,眼痛などの眼症状が出現し,眼科にて点状表層角膜症と診断された。治療経過からエトレチナートの副作用ではなく,原疾患と関連して発症した眼症状と考えた。
  • 馬渕 智生, 梅澤 慶紀, 松山 孝, 小澤 明
    2006 年 68 巻 4 号 p. 383-386
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    25歳,男性。4歳頃より体幹・四肢に多発する褐色斑に気付くも放置していた。20歳頃より体幹・四肢に皮下腫瘤が出現,増数,増大した。初診時,略全身に大小様々な褐色斑が散在していた。また,褐色斑とは別に,体幹・四肢に,1×1cmから4×1cmの紡錘形まで大小様々,弾性比較的軟,皮表および下床との可動性の良好な皮下腫瘤も散在,背部の皮下腫瘤は軽度の圧痛を伴っていた。左前腕の皮下腫瘤のうちの1つを全切除した。臨床像,画像所見,病理組織学的所見から,nodular plexiform neurofibroma(nodular PNF)が多発した神経線維腫症1型(NF1)と診断した。追加切除はせず,現在,経過観察中である。Cutaneous neurofibromaがみられずに,nodular PNFが多発している症例は比較的まれであり,また,その診断,経過観察には画像診断が有用であると考えた。
  • 宇宿 一成
    2006 年 68 巻 4 号 p. 387-389
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    80歳,女性。セファゾリンナトリウム投与後2日後に,高熱とともに体幹四肢に痒みの強い紅斑が出現した。紅斑内には無数の非毛包性の小膿疱が散在していた。血液生化学検査ではサイトメガロウイルスIgG抗体価が54.6(EIA値)と高値を示した。病理組織学的には角層下に好中球を容れる海綿状膿疱を形成,真皮血管周囲性の炎症細胞浸潤がみられ,真皮上層の浮腫を示した。以上の臨床像,病理組織学的所見より,本症を急性汎発性発疹性膿疱症と診断した。経過より薬剤摂取が誘因と考えられたが,パッチテストは陰性,チャレンジテストは実施できなかった。乾癬の既往や水銀曝露歴はなかった。
  • 桑原 千晶, 稲沖 真, 藤本 亘, 和田 秀穂, 定平 吉都, 道満 寛子
    2006 年 68 巻 4 号 p. 390-394
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    67歳,男性,1年前から両下腿の浮腫と躯幹の血管腫が出現した。患者は当院受診前に,鼠径リンパ節の腫大,IgA-λ型M蛋白血症,甲状腺機能低下,貧血などの異常が認められていた。初診時,躯幹・四肢に紅色または紫色血管腫が多発し,その一部は,病理組織学的にglomeruloid hemangiomaの像を呈した。脾腫,末梢神経障害,原発性副腎皮質機能低下症,心嚢液貯留,皮膚のびまん性色素沈着を認め,Crow-Fukase(POEMS)症候群と診断した。血清中の血管内皮増殖因子(VEGF)は4900pg/mlまで上昇したが,プレドニゾロン1日20mg内服投与によりVEGF値の低下とともに症状の一部は徐々に改善した。
講座
治療
  • 滝脇 弘嗣, 藤本 和代
    2006 年 68 巻 4 号 p. 403-407
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    外用や紫外線療法などの治療で改善せず,顔面が白斑黒皮症様となった汎発型尋常性白斑の高齢女性3名に,ハイドロキノンモノベンジルエーテル外用による脱色素治療を行った。5%クリームで開始し,1ヵ月毎に濃度を上げた。全例2ヵ月後から淡色化が始まり,約4ヵ月で脱色素が完成した(最終濃度10~15%)。患者の満足度は大きく,このタイプの患者のQOLを考えると,治療効果を得にくい白斑治療を続けるより望ましい方法と思えた。本剤は半世紀前に我が国で化粧品に配合され,白斑黒皮症例が生じて使用が禁止された経緯がある。そのためか,本治療は有名であるにもかかわらず,邦文での症例報告や総説がほとんどない。自験例を通じて,治療の具体案を例示するとともに,その歴史や副作用に関しても記述した。
  • —VASとかゆみ日記を用いた臨床研究—
    東 裕子, 神崎 保
    2006 年 68 巻 4 号 p. 408-412
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    老人の皮膚そう痒症,皮脂減少性湿疹,痒疹等への漢方エキス製剤(梔子柏皮湯エキス細粒)の効果について,「患者かゆみ日記(VASスコア付き)」を用いて検討した。対象患者20例(男性14例,女性6例,年齢70.0±7.1歳)に本剤を4週間投与し,患者に「かゆみ日記」を交付して日々の痒みの程度を記録させた。また2週毎の外来受診時にVASにより痒みの程度を主治医が評価した。「かゆみ日記」の集計では,開始時3.4±1.5,2週目2.5±1.1,4週目1.8±0.5と痒みのスコアが有意に減少した(開始時vs.4週p=0.0005,Wilcoxonの符号付順位検定)。同じく主治医のVASスコアによる判定でも,開始時4.1±1.7,2週目2.5±1.0,4週目1.9±0.9と同じ減少傾向を示した(開始時vs.2週p=0.005,同4週p=0.001)。有用性は「有用以上」45%(9/20),患者印象は「良い以上」45%(9/20),有害事象は1例で血圧上昇と気分不快が認められ,投与中止により回復した。今回の研究により,梔子柏皮湯が老人のそう痒性皮膚疾患に有用な薬剤であることを示唆すると考えた。
  • —バリアークリームの塗布と無塗布との比較解析—
    松木 勇人
    2006 年 68 巻 4 号 p. 413-421
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)ではその無疹部皮膚(アトピックドライスキン)においてもバリアー障害が継続し抗原や刺激物の容易な経皮吸収により皮膚炎が再発したり,悪化する要因になっている。したがってこのアトピックドライスキンで減少したバリアー機能を回復させることはADの易刺激性を防止する観点からそのスキンケアーにおいて本質的に重要な課題と考えられる。本研究ではバリアー回復効果を有する合成セラミドクリームの無疹部皮膚への使用の意義を再検証するため,クリーム塗布を行わない無処理部コントロールとの比較において,TEWLおよびCapacitance値の変化を測定し,乾燥落屑性変化の改善およびその重症度レベルとの関連を解析した。合成セラミドクリームの3,4週間の前腕無疹部皮膚への塗布により乾燥・落屑スコアーは有意に減少したのに対し,無処理部皮膚でも3,4週間後には乾燥・落屑スコアーのわずかに弱いが有意な減少を示し,この減少効果は合成セラミドクリームが無処理に比べて有意に高い結果であった。平行して測定したTEWL値とCapacitance値は合成セラミドクリーム塗布皮膚で3および4週間後で処理開始時に比べ有意な減少および増加を示したが,無処理皮膚では3および4週間後でわずかな減少および増加は認められるものの,処理開始時に比べての有意な差は認められなかった。また合成セラミドクリームのTEWL減少効果およびCapacitance値増加効果は3および4週間後でいずれも無処理に比べて有意に高い効果を示した。TEWL値およびCapacitance値の相関プロット図で,AD重症度との関連で合成セラミドクリームの効果を検証したところ,合成セラミドクリーム3週間塗布および4週間塗布皮膚ではほぼ健常者レベル近くまでの改善が認められた。以上の結果は,皮膚所見の改善は必ずしもバリアー機能の改善を反映していないので,臨床経過の観察においては皮膚所見の評価とともに角層機能特にバリアー機能の測定が重要であること,またスキンケアー剤の使用なくしてはバリアー機能の改善は難しいことを示唆し,バリアー機能の改善能力をもつスキンケアー剤の使用意義が再確認された。
  • 杉田 和成, 小林 美和, 吉岡 学, 植村 文子, 吉木 竜太郎, 古賀 千律子, 西尾 大介, 戸倉 新樹
    2006 年 68 巻 4 号 p. 422-425
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    免疫抑制剤であるミゾリビンは,ループス腎炎や関節リウマチの治療薬に用いられている。今回,ミゾリビンの自己免疫性水疱症への効果を検討した。症例は,尋常性天疱瘡(1例),薬剤誘発天疱瘡(2例),水疱性類天疱瘡(2例)の5症例である。これらに,プレドニゾロン,ミゾリビン併用療法を行った。この治療により,いずれも皮膚症状は軽快し,加えて血中抗デスモグレイン1抗体,抗デスモグレイン3抗体価は低下した。このことからミゾリビンが自己抗体産生を抑制する可能性が考えられた。また,ミゾリビンはシクロスポリンやアザチオプリンと比べ副作用が少ないのが特徴で,今回の検討でも骨髄抑制や肝機能障害などの副作用はみられなかった。プレドニゾロン,ミゾリビン併用療法は,ステロイド単独療法抵抗例やステロイドの副作用軽減に有用と考える。
  • —高濃度TV-02軟膏との群間比較試験(第III相臨床試験)—
    高濃度TV-02ローション乾癬研究会
    2006 年 68 巻 4 号 p. 426-444
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル 認証あり
    高濃度TV-02ローション(タカルシトールを20μg/g含有するローション剤)の有効性と安全性を高濃度TV-02軟膏(タカルシトールを20μg/g含有する軟膏剤)と比較検討することを目的として,尋常性乾癬の難治性皮疹を対象に,1日1回12週間塗布の並行群間比較試験を実施した。有効性の解析では,12週における有効率は,高濃度TV-02ローション群が71.9%,高濃度TV-02軟膏群が73.0%であった。また,2群間の差の点推定値は-1.1%(両側95%信頼区間-17.1~+14.9%)であり,両割付群で同程度の有効性が認められた。安全性の解析では,局所性副作用(治験薬塗布部位に発現した副作用)は,高濃度TV-02ローション群では8.8%,高濃度TV-02軟膏群では7.1%に認められた。これらの副作用は,ボンアルファ®軟膏2μg/g,ボンアルファ®クリーム2μg/g,ボンアルファ®ローション2μg/g,及びボンアルファ®ハイ軟膏20μg/gで報告されている既知の事象であり,高濃度TV-02ローション群に特有の新規なもの及び重篤なものは認められなかった。その他の副作用(局所性副作用を除く副作用)及び臨床検査値の異常変動(副作用)は,いずれの群においても認められなかった。以上から,高濃度TV-02ローションは,尋常性乾癬の難治性皮疹に対して高濃度TV-02軟膏と同程度の有効性が期待でき,かつ安全な薬剤であると考えた。
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