2009 年 71 巻 1 号 p. 38-41
症例1:65歳,女性。2年ほど前より右乳房部に皮下腫瘤を自覚していたが放置していた。腫瘤が徐々に増大し皮膚表面から隆起した腫瘤となり,やがて自潰し,出血,強い悪臭を伴うようになったため当院外科を受診した。初診時すでに多発性肺転移,骨転移をきたした乳癌stage IVの状態であり,手術適応はなく局所処置について当科を紹介された。出血,疼痛,多量の滲出液,強い悪臭のコントロールを目的としてモースペースト塗布で局所処置を行った。処置を繰り返し行うことで腫瘤は徐々に縮小した。またモースペースト使用後も残存する腫瘍からの滲出液,悪臭に対してメトロニダゾール軟膏を使用し軽減をみた。症例2:61歳,女性。症例1と同様に乳癌の皮膚浸潤による腫瘍にモースペースト,メトロニダゾール軟膏の併用を行った。症例1,2とも腫瘤の縮小のみならず,出血,滲出液のコントロール,悪臭の軽減が可能であった。皮膚原発腫瘍あるいは転移性皮膚腫瘍においては,その表面が自潰し多量の滲出液,出血,悪臭を伴うようになることが多く,患者のQOLが著しく損なわれる。根治的治療ではないものの患者の全身状態,局所病変の状態にあわせてモースペースト,メトロニダゾール軟膏を使用することでQOLの改善が得られた。その使用法を含め文献的考察を加え報告する。