2009 年 71 巻 1 号 p. 33-37
57歳,男性。幼少期より左臀部に2~3cmの疣状の結節があった。2006年11月頃から結節は増大し,潰瘍を伴うようになったが放置していた。その後患者は座位が困難となり2007年3月近医を受診した。皮膚生検の結果,有棘細胞癌と診断され当科に紹介となった。初診時,左臀部に潰瘍を伴う表面不整な130×90×15mmの易出血性の腫瘤があり,その周囲に瘢痕を認めた。患者は入院時より全身倦怠感があり,検査の結果高カルシウム血症(高Ca血症),副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTH-rP)の上昇とSCC関連抗原の上昇がみられた。またクォンティフェロンTB-2G(QFT)は陽性であった。治療は高Ca血症に対して輸液,パミドロネート,エルカトニンの投与を行い,血清Ca値は正常化した。腫瘍に対しては切除術と化学療法を施行した。11ヶ月間経過したが,腫瘍の再発・転移は認めていない。また,腫瘍周囲に萎縮性瘢痕がみられ,QFTが強陽性であり,左内腸骨リンパ節にラングハンス型巨細胞を伴った乾酪性肉芽腫がみられた。このことから結核性リンパ節炎および皮膚結核による瘢痕が示唆され,有棘細胞癌の発症に結核性病変が関与した可能性が高いと考えられた。