2012 年 74 巻 6 号 p. 608-613
73 歳,女性。初診 3 年前に右大腿伸側に小豆大紅色丘疹が出現し,以後増大してゆき,初診時には右大腿伸側に径 50 mm,不整形の紅色肉芽様腫瘤がみられた。その中央部に径 20 mm 大の暗赤色結節が出現した。CT スキャンでは右鼠径リンパ節から傍腹部大動脈周囲にかけてリンパ節腫大を認めた。原発巣切除標本の病理組織検査により,紅色腫瘤は有棘細胞癌と判明した。中央部の暗赤色結節では異型を示す小型の好塩基性細胞が索状に配列していた。免疫組織学的検討で,cytokeratin 20(-) であったものの,chromogranin(+),synaptophysin(+)を示したことからメルケル細胞癌と診断した。腫大した右鼠径リンパ節は切除標本の組織検査によりメルケル細胞癌転移と判明した。メルケル細胞癌に対し,カルボプラチンとエトポシドによる化学療法と放射線療法を施行しリンパ節転移は一旦縮小したが,4 ヵ月後にはリンパ節転移が再燃し 6 ヵ月後に死亡した。今回,同一部位でメルケル細胞癌と他の皮膚悪性腫瘍を合併した例に関して,文献的考察を加えて報告する。