西日本皮膚科
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治療
気虚を伴うアトピー性皮膚炎患者の皮膚症状に対する補中益気湯の効果
— 皮疹要素別の検討 —
小林 裕美石井 正光古江 増隆
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2012 年 74 巻 6 号 p. 642-647

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抄録

我々は,標準的治療を受けている「気虚」(虚弱体質:薬剤の効能効果として) を伴うアトピー性皮膚炎患者を対象に,補中益気湯またはプラセボを 24 週間経口投与する二重盲検プラセボ対照無作為化試験 (以下 DB 試験とする) により,補中益気湯群では,有意な差はなかったが皮疹重症度スコアがより改善し,治療期間中の外用薬 (ステロイド,タクロリムス) の使用量が有意に少なくなったことを,以前に報告した。漢方治療には,その症状を引き起こしている原因となる患者の体質を改善する本治と,目の前に表われている症状を改善する標治がある。補中益気湯は易疲労や易感染性を示す生体防御能低下状態,すなわち, 「気虚」を改善する本治の代表処方の一つであり,これまで皮疹の状態に関する使用目標は必ずしも明らかではなかった。そこで,補中益気湯をアトピー性皮膚炎の治療に用いる場合に,適用すべき皮疹の状態を明らかにすることは,漢方治療における処方選択の参考になるものと考え,DB 試験のデータ (補中益気湯 : n = 37, プラセボ : n - 40) を皮疹要素別に再度解析した。その結果,補中益気湯群では「紅斑・急性期の丘疹」,「湿潤・痂皮」,「慢性期の丘疹・結節・苔癬化」,「皮疹の面積」の各要素別の皮疹重症度スコアにおいて,いずれも有意な改善 (p<0.01) を示したが,プラセボ群では, 「湿潤・痂皮」では有意な改善がなく, 「紅斑・急性期の丘疹」では有意水準が p<0.05 に留まった。また,補中益気湯群においては,皮疹改善率は,試験開始時の皮疹性状 3 要素における「湿潤・痂皮」の比率と負の相関を,「慢性期の丘疹・結節・苔癬化」の比率とは正の相関を示した。一方,プラセボ群においては何の相関性も認めなかった。補中益気湯は,アトピー性皮膚炎患者の皮疹症状として「湿潤・痂皮」の比率が低く, 「慢性期の丘疹・結節・苔癬化」の比率が高い患者に適応があることが示唆された。

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© 2012 日本皮膚科学会西部支部
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