西日本皮膚科
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症例
進行期の肛門部有棘細胞癌に同時化学放射線療法が奏効した 1 例
粟澤 剛粟澤 遼子林 健太郎眞鳥 繁隆山本 雄一高橋 健造上里 博
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2015 年 77 巻 3 号 p. 230-234

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抄録
症例は 50 歳,女性。他院で生検され肛門部の扁平上皮癌の診断で当科を紹介された。再度生検を施行して肛門部有棘細胞癌と確定診断し,さらに PET/CT,CT,MRI などの画像精査により病期を T3N2M1,Stage Ⅳと診断した。また腫瘍病変からは HPV-16 が検出された。腫瘍が肛門管内に進展していたことから,National Comprehen sive Cancer Network(NCCN) のガイドラインを参考に肛門管扁平上皮癌の標準治療に準じて,5-fluorouracil(5-FU)/mitomyein C(MMC) 療法を併用する同時化学放射線療法を実施した。同治療は奏効し,画像精査や原発巣の再生検にて完全寛解を得られた。治療開始より 1 年 6 カ月経過した現在,患者は無再発生存中であり,また肛門機能も良好に温存され QOL の低下も認めていない。有棘細胞癌は早期に治療介入できれば比較的予後もよく治療方針に迷うことも少ないが,進行期になると他の癌腫と同様に治療に難渋することが多い。原発巣の部位にもよるが手術可能症例であっても,根治的切除をすれば手術侵襲による機能的障害や審美的損失は無視できず,癌の根治と患者の QOL・ADL とのギャップにジレンマを感じることが多い。我々は本症例での治療経験から,肛門部有棘細胞癌,特に肛門歯状線に近接するような有棘細胞癌の場合には,肛門管癌に準じた同時化学放射線療法も根治的治療として有力な選択肢になりうると考えたので報告する。
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© 2015 日本皮膚科学会西部支部
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