抄録
73 歳,男性。初診の 2 カ月前から顔面に瘙痒を伴う紅斑が出現し,近医にてステロイド外用で加療されたが症状が増悪したため当科を受診した。初診時,頭部と両頰部を中心に浸潤性紅斑を認めた。病理組織学的にリンパ濾胞様構造を伴う密なリンパ球浸潤巣が真皮全層に散在しており,表皮下に grenz zone を有していた。リンパ球に異型性は認めなかった。免疫染色では,CD20,CD79a の B 細胞系マーカーに強陽性だった。サザンブロット法では遺伝子の再構成は認めず,腫瘍細胞のモノクロナリティーはみられなかった。以上より多発性偽リンパ腫と診断した。Mild class のステロイド外用を 3 カ月間継続し,瘙痒,浸潤は軽快したが紅斑は持続している。偽リンパ腫の多発例や難治例では,経過中に真の悪性リンパ腫に移行したとの報告がある。本症例は病理組織学的所見や遺伝子再構成検査から悪性リンパ腫を示唆する所見は認めなかったが,臨床的に難治例であるため今後も注意深い経過観察が必要である。