2型糖尿病の 74 歳,男性。過去にインスリンの使用歴はない。血糖コントロールのため,インスリンアスパルト (ノボラピッド
®) とインスリンデテミル (レベミル
®) の皮下注射が導入された。その約 2 週間後より,腹部のレベミル
® 皮下注射部位に一致して,軽度の瘙痒を伴う浸潤性紅斑が生じた。数種類のインスリン製剤を1/100 濃度に希釈して皮内テストを施行したところ,レベミル
® のみ 24 時間後より浸潤性紅斑を認め,72 時間後も持続した。以上より,レベミル
® による遅延型アレルギーと診断し,同剤を中止した。続いて,新たに使用したインスリングラルギン (ランタス
®) によっても,投与翌日から注射部位に同様の浸潤性紅斑が生じた。レベミル
®およびランタス
® は,ともに持効型溶解インスリンアナログ製剤で,その製剤特徴から注射部位反応を起こしやすいと言われている。非アレルギー性の機序も報告されているが,自験例では,レベミル
® は十分な感作期間を経て症状が出現し,皮内テストの結果からも遅延型アレルギー反応と考えた。ランタス
® はレベミル
® との交叉反応か非アレルギー性の反応かは判然としなかった。糖尿病患者数の増加とともにインスリンの需要が高まる中,注射部位反応の診断と精査は,皮膚科医の重要な役割である。
抄録全体を表示