西日本皮膚科
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治療
トリクロロ酢酸が著効した小児難治性疣贅の 2 例
江川 清文
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2017 年 79 巻 4 号 p. 391-395

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抄録

トリクロロ酢酸 (trichloroacetic acid:TCA) 外用療法は,よく知られた尖圭コンジローマ治療法であるが,尋常性疣贅や足底疣贅等の尖圭コンジローマ以外の疣贅に使用した報告は殆んど無い。医中誌で検索した限り,本邦皮膚科医による報告は見当たらない。今回,液体窒素凍結療法,サリチル酸,グルタルアルデヒドや活性型ビタミン D3 外用療法およびヨクイニンエキス剤内服療法等を用いて無効であった 7 歳の女児と 9 歳の男児の爪囲/爪下疣贅を含む手足の難治性疣贅に対し,45% TCA 外用療法を試みたところ著効した。疣贅は週毎の塗布により徐々に消退し,2 症例とも約 3 カ月の治療で完治した。汎用される液体窒素療法に必発の副作用である疼痛は,自験例でもそうであったように,しばしば治療に対する患者のアドヒアランス低下の原因となっている。疼痛が無い点で,TCA 外用療法は液体窒素凍結療法に勝るかもしれない。自験例は,TCA 外用療法が,尋常性疣贅や足底疣贅等尖圭コンジローマ以外の疣贅にも,特に小児例等において,有効で有用な治療法になりうることを示している。しかしながら,今回の報告には 2 例報告という限界がある。また,既報告は尋常性疣贅や足底疣贅の治療に 30∼80%の TCA を用いている。今後,尋常性疣贅や足底疣贅等に対する TCA 外用療法については,有用・有効性や安全性とともに,至適濃度に関する良質のエビデンスが集積され,治療選択肢の一つとして確立されることが望まれる。

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© 2017 日本皮膚科学会西部支部
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