西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
有棘細胞癌,Bowen 病が多発した表在播種型汗孔角化症の 1 例
武 信肇中原 真希子中原 剛士内 博史古江 増隆
著者情報
ジャーナル 認証あり

2017 年 79 巻 6 号 p. 569-573

詳細
抄録

93 歳,男性。30 年前より全身に角化性褐色斑が多発し,汗孔角化症と診断されていた。初診の 3 年前より皮疹にびらんが伴うように,さらにびらん上に紅色結節が出現したため受診した。腹部褐色斑の病理組織所見では錯角化性円柱 (cornoid lamella) を認め,腹部の紅斑では異型角化細胞が表皮内に増殖し,左前腕と右下腿の紅色結節では異型角化細胞が表皮から真皮上層に浸潤している所見を認めた。以上より,汗孔角化症より多発した有棘細胞癌,Bowen 病と診断した。一部の汗孔角化症は常染色体優性遺伝形式を示すが,大半の症例は孤発例である。皮膚悪性腫瘍を併発する症例が多数報告されていることから,汗孔角化症は単なる角化異常症ではなく高発癌性遺伝性皮膚疾患であると考えられている。自験例同様,皮膚癌が多発している汗孔角化症の症例も報告されていて,汗孔角化症の患者は定期的なフォローアップと全身の診察が必要と考えた。

著者関連情報
© 2017 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top