西日本皮膚科
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79 巻, 6 号
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目次
図説
綜説
症例
  • 岡 大五, 林 宏明, 山本 剛伸 , 川上 民裕, 藤本 亘
    2017 年 79 巻 6 号 p. 547-551
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル 認証あり

    IgA 血管炎は,皮膚,消化管,腎糸球体の小血管に IgA の沈着を認め,関節痛,糸球体腎炎を合併する疾患である。成人,特に高齢者の IgA 血管炎では小児よりも大型の紫斑,皮膚潰瘍や慢性腎不全を生じやすい。IgA 血管炎により下腿に潰瘍が多発した IgA 血管炎の 81 歳,女性例を報告する。蛍光抗体直接法にて血管壁に IgA,IgM,C3 の沈着がみられた。プレドニゾロン 30 mg/日の内服を行ったが,潰瘍が上皮化するのに約 3 カ月を要し,腎障害の改善も遷延した。病理学的に真皮血管の血栓像を認めたが,抗ホスファチジルセリン・プロトロンビン複合体抗体は検出しなかった。潰瘍の治癒遷延は加齢による皮膚の脆弱化,静脈うっ滞や感染など複数の要因が関与したものと推測した。

  • 屋宜 宣武, 山口 さやか, 高橋 健造
    2017 年 79 巻 6 号 p. 552-557
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル 認証あり

    83 歳,女性。1 カ月前より外陰部の疼痛があり近医を受診した。悪性腫瘍を疑われ当科を紹介され受診した。初診時は外陰部全体に疣状局面があり,経過中に腋窩や口唇のびらん,舌の肥厚が出現した。病理検査では肥厚した表皮内に水疱が形成され,水疱内には好酸球が多数みられた。蛍光抗体直接法では表皮細胞間に IgG が沈着していた。血清抗デスモグレイン 1,3 抗体がいずれも陽性だった。臨床所見と病理所見,血清学的所見を併せて,本症例を増殖性天疱瘡と診断した。ステロイド内服のみでは皮疹のコントロールができず,免疫グロブリン大量静注療法を併用することで症状は劇的に改善した。

  • 川上 佳夫, 光井 聖子, 今城 健二
    2017 年 79 巻 6 号 p. 558-561
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル 認証あり

    79 歳,女性。四肢,体幹部に自覚症状を伴わない環状の角化性褐色斑が出現してから 7 年後に,特に誘因なく既存の皮疹部に瘙痒と紅色調の変化が出現し,さらに紅色丘疹の新生も認められた。病理組織学的には錯角化性円柱 (cornoid lamella) があり,真皮上層の血管周囲にリンパ球と好酸球の浸潤を認めた。 臨床検査所見では末梢血好酸球増多がみられた。このような炎症期間が 16 カ月間続いた後,瘙痒を伴った紅色調の変化や末梢血好酸球増多は次第に軽快し,軽度の角化を伴う環状の褐色斑が残った。自験例では,表在播種型汗孔角化症の経過中に,一過性の炎症期が認められたことが特徴的であり,“inflammatory stage of disseminated superficial porokeratosis” に合致していた。

  • 久場 友加里, 井上 卓也, 森 槙子, 永瀬 浩太郎, 成澤 寛
    2017 年 79 巻 6 号 p. 562-565
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル 認証あり

    68 歳,男性。徐々に増大する後頚部の皮下腫瘤を主訴に当科を受診した。初診時,後頚部に径 15 cm の軟らかい皮下腫瘤を認め,体幹・四肢にも対称性に境界不明瞭な軟らかい皮下腫瘤が多発していた。生検にて成熟脂肪細胞の増生を認め,アルコール性肝硬変・高尿酸血症の既往があったことより,良性対称性脂肪腫症と診断した。良性対称性脂肪腫症は,頚部・体幹・四肢近位部を中心に左右対称性に脂肪組織が増生する疾患で,アルコール性肝障害,耐糖能異常,高脂血症,高尿酸血症などを伴うことが知られている。今回,自験例を含めた本邦報告 125 例の検討を行ったところ,男性が 85%と圧倒的に多く,50∼60 代に多かった。発生部位は頚部・背部・上腕など上半身に多い傾向であった。機序は解明されておらず,他臓器への圧迫解除や整容的な理由で外科的切除がなされることもあるが,再発も多く,確立された治療法はない。

  • 久保 秀通, 久保 秀徳, 山村 健太郎, 青木 恵美, 松下 茂人
    2017 年 79 巻 6 号 p. 566-568
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル 認証あり

    49 歳,女性。3 年前より背部のしこりを自覚し,放置していたところ徐々に増大してきた。初診時,背部に径 20 mm,弾性硬,常色調の境界明瞭な無症候性の皮下結節を認めた。臨床的に表皮囊腫を考え,局所麻酔下に全摘した。組織学的には,真皮から脂肪織にかけて,顆粒層がある重層扁平上皮で構成された囊腫壁で覆われ,内腔に角質成分を含む囊腫を認め,表皮囊腫と診断した。さらに囊腫壁外の辺縁に異所性骨化を認めた。表皮囊腫は重層扁平上皮の囊腫壁で構成され,日常の診療でよくみられる皮膚腫瘍であるが,異所性骨化を伴う表皮囊腫は稀である。我々は,異所性骨化を伴った表皮囊腫を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

  • 武 信肇, 中原 真希子, 中原 剛士, 内 博史, 古江 増隆
    2017 年 79 巻 6 号 p. 569-573
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル 認証あり

    93 歳,男性。30 年前より全身に角化性褐色斑が多発し,汗孔角化症と診断されていた。初診の 3 年前より皮疹にびらんが伴うように,さらにびらん上に紅色結節が出現したため受診した。腹部褐色斑の病理組織所見では錯角化性円柱 (cornoid lamella) を認め,腹部の紅斑では異型角化細胞が表皮内に増殖し,左前腕と右下腿の紅色結節では異型角化細胞が表皮から真皮上層に浸潤している所見を認めた。以上より,汗孔角化症より多発した有棘細胞癌,Bowen 病と診断した。一部の汗孔角化症は常染色体優性遺伝形式を示すが,大半の症例は孤発例である。皮膚悪性腫瘍を併発する症例が多数報告されていることから,汗孔角化症は単なる角化異常症ではなく高発癌性遺伝性皮膚疾患であると考えられている。自験例同様,皮膚癌が多発している汗孔角化症の症例も報告されていて,汗孔角化症の患者は定期的なフォローアップと全身の診察が必要と考えた。

  • 米倉 直美, 永瀬 浩太郎, 小川 始主夏, 木村 裕美, 井上 卓也, 成澤 寛
    2017 年 79 巻 6 号 p. 574-577
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:88 歳,女性。左頰部から鼻翼部にかけて,径 15 mm で弾性硬な紅色腫瘤を認めた。病理組織像で,小型類円形で細胞質に乏しい腫瘍細胞が胞巣状に増殖していた。免疫組織化学的所見では,CK20,chromogranin A および synaptophysin が陽性であった。以上よりメルケル細胞癌と診断した。症例 2: 77 歳,男性。右下顎部に径 55 mm で弾性硬な紅色腫瘤を認めた。症例 3:83 歳,男性。前胸部に径 35 mm で弾性硬の広基性紅色腫瘤を認めた。症例 2 および 3 ともに,症例 1 と同様の病理組織像・免疫組織化学的所見を認め,メルケル細胞癌と診断した。ダーモスコピー検査では,3 症例いずれにおいてもlinear irregular vessels を含む polymorphous vessels や,milky red areas,non-shiny white areas 等の所見がみられた。メルケル細胞癌のダーモスコピー像は多彩で,疾患特異的な所見はない。しかし,①linear irregular vessels や milky red areas などを含む多彩な血管所見,② structureless areas やarchitectural disorder などの構築異常所見,③組織の線維化を反映した white areas の所見,などが高率にみられる。

  • 太田 征孝, 福代 新治, 白築 理恵, 森田 栄伸
    2017 年 79 巻 6 号 p. 578-581
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル 認証あり

    75 歳,女性。2013 年に右踵部に易出血性の紅色腫瘤が出現した。2014 年に近医で腫瘤を切除され,悪性黒色腫の診断で当院を受診した。原発巣の拡大切除および骨盤内・鼠径リンパ節郭清,DAVFeron(ダカルバジン+ニムスチン+ビンクリスチン+インターフェロン β)投与を受けた。2015 年に皮膚・肝・肺・骨盤内・骨に腫瘤形成がみられ,悪性黒色腫の転移と診断されてニボルマブ点滴投与を開始された。 腫瘍縮小効果に乏しく,ベムラフェニブ内服に変更された。ベムラフェニブ投与開始後,皮膚・肺・肝・骨盤内転移は速やかに縮小傾向となったが,骨転移は縮小傾向に乏しかった。投与開始 3 カ月の時点で食欲低下やふらつき,失見当識が出現した。頭部 CT,MRI 画像では異常所見は認めなかった。投与開始 4 カ月で意識障害が出現し,造影 MRI および髄液細胞診を行ったところ,癌性髄膜炎および脳転移の所見がみられ,入院後 2 週間で永眠した。ベムラフェニブ投与により転移巣の縮小効果が得られたが,髄液移行性が低いことから中枢神経系転移には効果がみられなかった。また,本症例はメラニン含有量の少ない悪性黒色腫であり,単純 MRI 画像では描出されず,造影 MRI の撮影が必要であった。

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