2019 年 81 巻 3 号 p. 170-174
71 歳,男性。初診の 3 カ月前に特発性血小板減少性紫斑病と診断され,プレドニゾロン内服(15 mg/日)を開始された。初診の 1 カ月前に右外踝骨折の手術を受けた。術後にニューモシスチス肺炎を発症し,ステロイドパルス療法,抗生剤と抗真菌薬の投与が行われた。体幹部を中心にびまん性の紅斑が出現したため当科を受診し,薬疹の診断で被疑薬の中止で経過をみた。しかし,翌日に全身に水疱とびらん,粘膜病変が出現し,Stevens-Johnson 症候群の診断となった。プレドニゾロン内服(15 mg/日)を継続し,免疫グロブリン大量静注療法(γ-グロブリン 400 mg/kg/日 ×5 日間)を行った。徐々に皮疹は改善したが,初診の 1 週間後に突然呼吸苦が出現し,循環器内科にて肺血栓塞栓症と診断された。緊急で血管内治療が行われ,人工呼吸器管理と経皮的心肺補助装置導入を行われたが,2 日後に死亡した。免疫ブログリン大量静注療法は重篤な血栓症を誘発し,時に致死的となる可能性があり,その施行には注意が必要である。