西日本皮膚科
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症例
難治性皮膚潰瘍に対して自家末梢血単核球移植が奏効した閉塞性動脈硬化症の 1 例
石松 翔子工藤 英郎新森 大佑米村 雄士梶原 一亨牧野 雄成尹 浩信
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2019 年 81 巻 3 号 p. 175-179

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抄録

65 歳,男性。Fontain 分類Ⅳ度の閉塞性動脈硬化症であり,右大腿動脈人工血管置換術ならびに血管内治療を施行されるも,右第 2∼5 趾の骨髄炎から黒色壊死に至り,切断術を受けた。その後,左大腿動脈狭窄による左足全体の色調不良を認め,当院心臓血管外科で左外腸骨動脈-左浅大腿動脈バイパス術が施行された。しかし,バイパス術後間もなく左第 1,3,4 趾の黒色壊死を認めたため,当科に再入院となった。血行再建術実施後であり,通常の治療では改善は見込めないと考え,自家末梢血単核球移植を実施することにした。自動血液成分分離装置で単核球を採取後,濃縮し,手術室にて局所麻酔下に患肢に少量ずつ筋注した。術後,患肢の皮膚組織灌流圧は著明に改善し,維持された。また,左母趾の難治性皮膚潰瘍は投与後 16 週で上皮化に至り,その後も再発を認めていない。自家末梢血単核球移植は,今回のような既存治療抵抗性の難治性皮膚潰瘍の症例に対して高い有効性を示すことが報告されている。本治療は,これまで循環器内科および心臓血管外科においてのみ実施されてきたが,日常的に難治性皮膚潰瘍を診療する皮膚科医にとっても新たな治療法の選択肢となりうる。当科における取り組みについて文献的考察を加えて紹介する。

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© 2019 日本皮膚科学会西部支部
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