2019 年 81 巻 4 号 p. 297-301
90 歳,女性。左頰部の紅色結節を主訴に,前医を受診し,生検でメルケル細胞癌(Merkel cell carcinoma ; MCC)が疑われる組織像であった。当科紹介時には,径 2 cm のドーム状に隆起した潰瘍を伴う鮮紅色腫瘤がみられた。側方マージン 1 cm,superficial muscular aponeurotic system(SMAS)を含める深さで腫瘍を切除した。病理組織では,真皮内で異型を示す N/C 比のやや低い好塩基性細胞が索状に配列し,浸潤性に増殖していた。CK20 は陰性だったが,その他神経系腫瘍マーカー所見(synaptophysin 陽性,chromogranin A 陽性,CD56 陽性)から MCC と診断した。Merkel cell polyoma virus(MCPyV)は陰性であった。一方,腫瘍内には,淡好酸性の細胞質と不整形な核を有する異型扁平上皮(有棘細胞癌〈squamous cell carcinoma ; SCC〉)が混在しており,両者に移行像を認めた。SCC を合併した MCC の過去の報告例では,MCPyV は16 例中 15 例で陰性であり,MCPyV が発癌に関与せず,MCPyV 陽性 MCC と比較して発症機序がより複雑であると考えた。