西日本皮膚科
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81 巻, 4 号
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目次
図説
  • 矢野 温子, 三苫 千景, 永江 航之介, 内 博史, 古江 増隆
    2019 年 81 巻 4 号 p. 277-278
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    症例 : 82 歳,男性

    主訴 : 右口角の常色丘疹

    現病歴 : 右頰部の黒色結節に対し,拡大切除と右頚部リンパ節のセンチネルリンパ節生検を施行し,悪性黒色腫 stage ⅡA (pT3aN0M0) と診断した。再発なく経過していたが,手術の 3 年 4 カ月後,右口角の術創付近に約 3 mm の常色丘疹が出現した。診断のため,切除生検を行った。

    既往歴 : 2 型糖尿病,膵管内乳頭粘液性腫瘍,潰瘍性大腸炎

    家族歴 : 特記事項なし

    初診時現症(図 1 ) : 右口角の術創付近に約 3 mm の常色丘疹がみられた。

    病理学的所見 (Hematoxylin-Eosin (H&E) 染色) : 病変部はドーム状に隆起していた。角層は錯角化を伴い肥厚していた。真皮の表皮直下では隆起する部分に一致して無構造の好塩基性物質がみられた(図2 a)。

    特殊染色像 : Elastica van Gieson (EVG) 染色では,表皮直下から網状層浅層にかけて黒色に濃染される弾性線維が密に集簇していた(図2 b)。Masson Trichrome (MT) 染色では,膠原線維はみられなかった(図2 c)。なお,Dylon 染色ではアミロイド物質はみられなかった。

    診断 : Papular elastosis

  • 江川 清文
    2019 年 81 巻 4 号 p. 279-280
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    症例 : 73 歳,男性

    主訴 : 左腹部の疼痛を伴う集簇性水疱

    現病歴 : 3 日前より,左腹部に疼痛を伴う水疱が多発してきた。

    既往歴 : 5 年前に腎癌にて右腎部分摘出

    家族歴,血液検査 : 特記事項無し

    初診時現症 : 左腹部 Th11 領域に,疼痛を伴う水疱を集簇性に認めた。

    診断および治療経過 : 帯状疱疹(herpes zoster : HZ)の診断のもと,バラシクロビル塩酸塩 3000 mg/日とアセトアミノフェン 600 mg/日の分 3 内服を 7 日間行った。1 週間後には著明に改善したが,3 週間後の受診時に,立位で増強する病側腹部の膨隆を認めた(図 1 )。便秘等の消化器症状は無く,近医内科にて “超音波検査上異常所見無し” の診断を受けたため無治療で経過観察したところ,約 4 カ月後に腹部膨隆は消失した(図 2 ab)。

綜説
症例
  • 佐藤 清象, 中原 真希子, 宮崎 玲子, 古江 増隆
    2019 年 81 巻 4 号 p. 284-288
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    39 歳,女性。2 年前に Raynaud 現象,多発関節炎,手指に限局した皮膚硬化,抗 U1-RNP 抗体高値,白血球減少から混合性結合組織病(MCTD)と診断された。1 年前に両手指に皮下結節が出現し,徐々に増加した。両手指に最大径 3 mm の皮下結節を 12 個認めた。皮膚生検では,真皮深層から皮下にかけて変性した膠原線維とムチンを取り囲むように palisading granuloma を認め,MCTD 患者に生じた皮下型環状肉芽腫と診断した。我々が調べえた限りでは環状肉芽腫と MCTD との合併の報告は国内外を含め自験例が初めてであった。皮疹の分布が手指に限局していたことから,Raynaud 現象が環状肉芽腫の発症に関与したと考えた。

  • 堀口 亜有未, 宮城 拓也, 山口 さやか, 高橋 健造
    2019 年 81 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    80 歳,男性。約 4 カ月前から体幹四肢に瘙痒を伴わない浮腫性紅斑と皮膚の硬化,疼痛があり,当科を受診した。手足を除く上下肢に左右対称性に皮膚の硬化と皮膚表面に光沢があり,下肢には敷石状に凹凸があった。爪上皮出血点や後爪郭の血管拡張,レイノー症状はなかった。MRI T2 強調像で大腿二頭筋膜の肥厚と高信号があり,病理組織検査で筋膜の肥厚と筋膜に併走するように帯状の細胞浸潤があり好酸球性筋膜炎と診断した。プレドニゾロン(PSL)40 mg/日で治療を開始したが,PSL を漸減する過程でアルドラーゼ値の上昇があったためメトトレキサート(MTX)を併用した。以後,皮膚硬化は改善,アルドラーゼ値は低下し,PSL を漸減できた。現在まで MTX による副作用はない。ステロイド抵抗性の好酸球性筋膜炎において,MTX は有用であると考える。

  • 田中 佳世, 永瀬 浩太郎, 成澤 寛
    2019 年 81 巻 4 号 p. 293-296
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    7 歳,女児。自覚症状のない左大陰唇の腫大を主訴に当科を受診した。病理組織学的検査では真皮内の血管および線維芽細胞の増殖と膠原線維の増生を認め,免疫組織化学的検査ではエストロゲン受容体陽性,プロゲステロン受容体陰性,CD34 陽性であった。MRI 検査の所見と合わせて prepubertal unilateral fibrous hyperplasia of the labium majus(PUFH)と診断した。自験例は現在無治療で経過観察しているが,症状の増悪は認めない。PUFH は主に片側性の陰唇腫大を主訴とする疾患であり,思春期前∼早期の女児に生じ,通常自覚症状を伴わない。国内外の症例報告数は自験例を含め 42 例と稀な疾患で,陰唇腫大の原因として性ホルモンが関与している可能性も指摘されている。これまでに報告された PUFH のまとめと,原因についての文献的考察を加えて報告する。

  • 多田 瑞穂, 曽根崎 萌江, 生野 知子, 石川 一志, 西田 陽登, 横山 繁生, 駄阿 勉, 上尾 大輔, 波多野 豊
    2019 年 81 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    90 歳,女性。左頰部の紅色結節を主訴に,前医を受診し,生検でメルケル細胞癌(Merkel cell carcinoma ; MCC)が疑われる組織像であった。当科紹介時には,径 2 cm のドーム状に隆起した潰瘍を伴う鮮紅色腫瘤がみられた。側方マージン 1 cm,superficial muscular aponeurotic system(SMAS)を含める深さで腫瘍を切除した。病理組織では,真皮内で異型を示す N/C 比のやや低い好塩基性細胞が索状に配列し,浸潤性に増殖していた。CK20 は陰性だったが,その他神経系腫瘍マーカー所見(synaptophysin 陽性,chromogranin A 陽性,CD56 陽性)から MCC と診断した。Merkel cell polyoma virus(MCPyV)は陰性であった。一方,腫瘍内には,淡好酸性の細胞質と不整形な核を有する異型扁平上皮(有棘細胞癌〈squamous cell carcinoma ; SCC〉)が混在しており,両者に移行像を認めた。SCC を合併した MCC の過去の報告例では,MCPyV は16 例中 15 例で陰性であり,MCPyV が発癌に関与せず,MCPyV 陽性 MCC と比較して発症機序がより複雑であると考えた。

  • 越智 康之, 千貫 祐子, 林田 健志, 石川 典由, 森田 栄伸
    2019 年 81 巻 4 号 p. 302-305
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    疣状癌(verrucous carcinoma,以下 VC)の病理組織像においては,個々の細胞は高分化傾向を示し異型性は軽度であることが多い。したがって,部分生検では診断が難しい場合が多く,全摘による病変の全体像の把握が重要とされている。しかしながら,足底発症例においては足趾や荷重部が好発部位であり,術後再建も視野に入れた場合,全摘生検を躊躇する場合がある。症例は 69 歳,男性。右足底の難治性角化病変を主訴に来院した。皮膚部分生検標本の HE 染色では明らかな悪性所見を認めなかったが,p16 染色と MIB-1 染色で陽性結果を得たことから悪性を強く疑い,全摘した結果 VC と診断された。p16 染色は子宮頚部病変においては悪性化の判断に有用と考えられており,MIB-1 染色は高い増殖能を有する腫瘍細胞で濃染し,悪性度の判定に用いられている。VC の診断においても,生検標本における p16 染色と MIB-1 染色は,広範囲の切除に踏み切るか否かについての判断根拠の一つになり得ると共に,verrucous skin lesions on the feet in diabetic neuropathy などの良性疾患との鑑別に有用なマーカーとなり得る可能性がある。

  • 芦澤 慎一, 松尾 佳美, 白石 剛章, 末岡 愛実, 森田 知世, 静川 寛子, 高萩 俊輔, 平郡 隆明, 秀 道広
    2019 年 81 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    73 歳,男性。58 歳時より躯幹・四肢に瘙痒を伴う紅斑が出現し,69 歳時に紅皮症となった。皮膚生検にて,菌状息肉症と診断された。その後,白血球増多があり当科を紹介され受診した。初診時,全身に落屑性紅斑を認め,両鼠径部に径 4 cm 程のリンパ節を触知した。末梢血では,白血球数が21,650/μl(Sézary cell 66%),CD4/8 比が 132.8,血液および骨髄の TCRβ 鎖遺伝子再構成が陽性であり,続発性 Sézary 症候群(T4NXM0B2,stage ⅣA1)と診断した。皮膚組織の腫瘍細胞は CCR4 陽性であったため,ヒト化抗 CCR4 モノクローナル抗体(モガムリズマブ)を投与した。週 1 回 1 クール(計 8 回)の投与を行い,grade2 の皮膚障害を生じ,皮膚病変は不変であったが,リンパ節病変と血液病変は完全寛解した。しかし,1 クール終了 7 カ月後に血液病変が再発し,2 クール目の投与を開始した。週 1 回の通院が困難で,やむを得ず月 1 回の間隔で計 8 回の投与を行ったが,血液病変は再度完全寛解し,皮膚病変は投与終了後 6 カ月経過した後,部分寛解した。また,皮膚障害は生じなかった。自験例を通して,モガムリズマブは血液と皮膚において効果発現時期に違いがあり,投与間隔を延長しても,疾患の病態や進行度,年齢によっては,効果を維持しつつ,重篤な皮膚障害などの発生を減少させる可能性があることが示唆された。

  • 青山 由貴子, 中島 英貴, 寺石 美香, 藤岡 愛, 木戸 一成, 佐野 栄紀
    2019 年 81 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    G 群溶血性連鎖球菌により toxic shock-like syndrome(TSLS)に至った,広範囲の両下肢および鼠径部の紅斑に対して,デブリードマンにより救命,下肢温存できた 1 例を経験したため報告する。57 歳,女性。初診前日から倦怠感,発熱,両大腿の疼痛が出現し,歩行困難となったため救急搬送された。両大腿に比較的境界明瞭な強い疼痛を伴う紅斑と腫脹がありショックバイタルを伴っていたため,toxic shock syndrome または TSLS を疑った。集中治療室にて全身管理下にメロペネム,クリンダマイシンの投与を開始した。第 3 病日に,左大腿と左膝関節周囲に紫斑および水疱が出現した。筋膜まで切開したところ,典型的な壊死像はなく皮下に強い浮腫を認めた。細菌培養では,皮下組織および血液から G 群溶血性連鎖球菌が検出されたことより TSLS と診断した。第 6 病日に左膝関節周囲の紅斑が左鼠径部まで拡大,対側の右膝関節部にも紅斑,水疱が新生したため,全身麻酔下に左鼠径部と両大腿部を筋膜上でデブリードマンを施行した。翌日に右鼠径部,両下腿に紅斑,熱感が拡大したため,デブリードマンを追加施行した。アンピシリン/スルバクタム,クリンダマイシン投与と連日の創傷処置によって発赤の拡大は停止した。第 14 病日から分層植皮術を 1 週間おきに計 6 回施行し潰瘍は全て上皮化し,半年後に退院した。

統計
  • 山口 和記, 大賀 保範, 国見 侑花, 柴山 慶継, 内藤 玲子, 古賀 文二, 伊藤 宏太郎, 今福 信一
    2019 年 81 巻 4 号 p. 316-320
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    乾癬の全身療法は生物学的製剤の登場により大きく変化したが,それまで全身療法で中心であった内服薬のその後の使われ方については調査が少ない。我々は 2010 年 1 月 1 日から 2016 年 3 月 31 日までの期間で当科を受診し,乾癬と診断され,シクロスポリン,エトレチナート,メトトレキサートの処方が新たに開始された患者 149 例について,性別,年齢,内服薬の種類,内服期間,他の薬剤への移行,薬剤の併用,生物学的製剤への移行の有無の項目について検討した。シクロスポリンは 107 例に用いられ,単独群,他の薬剤も使用していた群共に平均使用期間が他の薬剤よりも長かった。シクロスポリンは生物学的製剤への移行が 40.0%であったが,2000 日以上にわたり長期使用されている例もあり,現在も生物学的製剤への切り替えができずに頼っている症例があることが明らかとなった。エトレチナートは 44 例に使われており,高齢の症例に多く生殖可能年齢の症例には少なかった。その継続の中央値は 255 日とやや短く,一時的に用いられているものであった。メトトレキサートは 30 例に開始され,生物学的製剤への移行が 54.5%と 3 剤の中で最も高い結果となった。関節痛を伴う例に多く使用されていることが一因だと考えられた。内服薬の毎年の推移ではメトトレキサートの使用が増加していた。今回の調査は生物学的製剤の発売後でかつアプレミラスト発売前の内服薬の使われ方を観察する意義があると考えられた。

世界の皮膚科学者
  • Emma Guttman-Yassky
    2019 年 81 巻 4 号 p. 323-324
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル 認証あり

    Emma Guttman-Yassky, MD, PhD, the Sol and Clara Kest professor of dermatology, is vice chair for research at the Department of Dermatology, director of the Center for Excellence in Eczema, and the Laboratory of Inflammatory Skin Diseases at the Icahn School of Medicine at Mount Sinai Medical Center, New York. She earned her MD from Sackler in Tel-Aviv, and a PhD. from Bar-Ilan, Israel. After her Israeli Board certification in dermatology at the Rambam Medical Center at the Technion, Dr. Guttman moved to the U.S. to pursue a postdoctoral fellowship at Laboratory for Investigative Dermatology at The Rockefeller University and a second dermatology residency at Weill-Cornell, NY.

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