西日本皮膚科
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症例
肺炎・尿路感染症による全身状態の悪化に伴い再燃した医原性カポジ肉腫の 1 例
堀口 亜有未山口 さやか粟澤 遼子高橋 健造
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2019 年 81 巻 6 号 p. 491-495

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抄録

75 歳,女性。初診の約半年前に左下腿に紫紅色の結節が出現した。その後,左下腿を中心に同様の腫瘤が徐々に増加してきた。結節部の病理組織では,真皮全層に紡錘形の腫瘍細胞が管腔を形成して増殖し,管腔内部には赤血球が充満し,赤血球の血管外漏出がみられた。免疫組織化学染色では腫瘍細胞は LANA-1 陽性であった。以上の所見よりカポジ肉腫と診断した。初診の 1 年半前,視神経脊髄炎に対してステロイドパルスを実施後,プレドニゾロン(PSL)50 mg とタクロリムスの内服を開始しており,当科初診時は PSL 10 mg とタクロリムス 4 mg を内服中であった。HIV 抗原,抗体陰性であり,医原性カポジ肉腫と診断した。胸部 CT で肺結節影があり,上下部内視鏡検査,気管支鏡検査で胃体部,気管支にも播種性病変があり,いずれもカポジ肉腫の病変と考えられた。診断後 3 カ月間で,タクロリムスを漸減中止し,PSL を 10 mg/日から 7 mg/日に漸減し,下腿の結節は縮小した。しかし,肺炎と尿路感染症を併発して全身状態が悪化し,それと同時に結節が増大して両下腿に広がり,胸部 CT でも肺結節影が増加していた。肺炎,尿路感染症を発症して約 2 カ月後,呼吸不全のため死亡した。医原性カポジ肉腫は多くの場合,免疫抑制剤の減量や中止により軽快するが,自験例は,免疫抑制剤の減量中止で一旦改善したものの,全身状態の悪化とともにカポジ肉腫も悪化した。

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© 2019 日本皮膚科学会西部支部
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