西日本皮膚科
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症例
アプレミラストが著効したリチウム製剤関連薬剤性乾癬
日置 紘二朗林 宏明青山 裕美
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2021 年 83 巻 1 号 p. 26-29

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抄録

60 歳,男性。もともと双極性障害で近医通院治療中であった。20XX 年 6 月に尋常性乾癬を発症し,その直後,双極性障害に対してリチウム製剤の内服を開始した。同年 9 月に皮疹が四肢に広がり,ジフルプレドナートを外用した。外用しても,症状の増悪が続くため,20XX+1 年 5 月に当院を受診した。初診時,体幹と四肢に鱗屑を伴った爪甲大からメガネレンズ大までの浸潤の強い紅色局面が散在し,頭皮にびまん性に鱗屑を伴う紅斑がみられた。Psoriasis area and severity index が 20.3,皮疹面積は 15%であった。病理組織学的に尋常性乾癬と診断し,リチウム製剤により増悪した可能性を考え,直ちにリチウム製剤の内服を中止した。リチウム製剤の drug-induced lymphocyte stimulation test の stimulation index は 106%で陰性であった。リチウム製剤の中止後も皮疹の改善は乏しく,追加の治療が必要であった。そこでリチウム製剤による乾癬増悪の機序を考慮して,効果が期待できるアプレミラストの内服を開始した。 アプレミラストを内服後,直ちに皮疹は著明に改善した。アプレミラストを徐々に減量し,最終的に 30 mg を 3 日に 1 回の内服に減量したが,効果は持続している。有害事象として内服初期に倦怠感と嘔気があった。リチウム製剤による乾癬の悪化の機序がアプレミラストの作用機序と拮抗しているため自験例は速やかに改善したと考えた。リチウム製剤とアプレミラストの作用機序について考察し報告する。

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