西日本皮膚科
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83 巻, 1 号
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目次
図説
  • 藤井 晴香, 中原 真希子, 佐藤 清象, 末永 亜沙子, 西尾 紀一郎, 江藤 綾桂, 吉田 舞子, 辻 学, 中原 剛士, 桐生 美麿, ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    患者:37 歳,男性

    主訴:右手背の褐色結節

    現病歴:3 年程前から,右手背に疼痛を伴う褐色結節が出現したため当科を受診した。

    初診時現症:右手背に境界明瞭な 6×5 mm の褐色結節を認めた(図 1 )。

    ダーモスコピー所見:結節の中央部に白色調の無構造な部分(central white patch)がみられた(図 2 )。

    病理組織学的所見(全切除生検):真皮から皮下組織にかけて境界やや不明瞭な単結節状病変を認め(図 3 a),膠原線維や線維芽細胞様の紡錘形細胞が増生し,泡沫細胞も多数みられた(図 3 b)。

    免疫組織化学的所見:病変内の紡錘形細胞は factor XIII a が, 泡沫細胞は CD10,CD68,CD163 が陽性となり,CD34,S100 は陰性であった。

    診断:以上の所見より lipidized dermatofibroma(以下 LD)と診断した。

  • 中島 真帆, 石川 博士, 千綿 雅彦, 森 隆浩, 三浦 史郎, 伊東 正博, 室田 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    患者:88 歳,女性

    主訴:多発性皮下結節

    既往例:先天性完全房室ブロック,心不全

    現病歴:1 カ月前から頚部に皮下結節を自覚していた。2 週間前から腋窩,体幹にも皮下結節が増数した。同時期に発熱と体重減少も認めた。

    現症:前頚部に一部数珠状に連なる多発性皮下結節がみられ(図 1 a),左腋窩,右頬部,下腹部(図 1 b)にも紫紅色の弾性硬の皮下結節が多発していた。

    病理組織学的所見:皮下脂肪織内に限局して境界明瞭な腫瘍塊を認めた(図 2 a)。核小体が明瞭で切れ込みのない大型核を有する異型リンパ球が増殖し,細胞分裂像も散見された(図 2 b)。免疫組織化学的に,異型リンパ球は,CD20>CD3 陽性細胞であり,CD5 陰性,CD10 陰性,Bcl-2 陽性,Bcl-6 陰性,MUM1 陽性,Ki-67 強陽性であった(図 3 )。EBV-LMP は陰性であった。

    診断:Diffuse large B-cell lymphoma(DLBCL),ABC type

  • 江川 清文
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 5-6
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    患者:61 歳,女性

    職業:介護士

    主訴:左肘窩部に多発する瘙痒を伴う紅色小丘疹

    現病歴:10 日ほど前より,左肘窩部に瘙痒を伴う紅色小丘疹が多発していた。

    初診時現症:肘窩を中心とする左上肢屈側に瘙痒を伴う紅色小丘疹が多発しており,一部の丘疹上に軽度の落屑を認めた(図 1 )。同様の皮疹は,右上肢屈側にも少数認められた。指間を含む身体他部には皮疹を認めなかった。

    検査:ダーモスコピーにて,疥癬トンネルを疑わせる紅斑を伴う蛇行した線状落屑を認め,KOH 直接鏡検法により疥癬虫が検出された(図 2 )。

    診断および治療:疥癬の診断にて,イベルメクチン 4 錠/回の 1 週ごと 2 回内服とオイラックスクリーム外用にて治癒した。

綜説
症例
  • 安富 陽平, 川上 佳夫, 篠倉 美理, 平井 陽至, 山﨑 修, 森実 真
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    1 歳,女児。乳児早期発症てんかんで治療中であったが,けいれん発作のコントロールが不良で臭化カリウムの内服を開始した。内服開始 2 カ月半後に四肢に紅色丘疹が出現し,膿疱を伴う紅色局面に進展した。病理組織では表皮内に好中球の浸潤,真皮では全層にわたって膠原線維束に分け入るような好中球の浸潤があり,とくに毛包周囲や毛包上皮への好中球の浸潤が顕著であった。血中臭化物濃度は 91.8 mg/dl と高値であり,臭素疹と診断した。臭化カリウムを減量してステロイド軟膏の外用で皮疹は軽快した。内服減量により皮疹が軽快したことから,臭素疹の機序はアレルギー性ではなく,用量依存性に発症する機序が推測される。

  • 岩元 凜々子, 佐久川 裕行, 宮城 拓也, 山口 さやか, 山本 雄一, 高橋 健造
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    特に既往症のない 79 歳,男性。四肢に環状の紅斑が出現し,その後,胸痛,多発関節炎,有痛性皮下結節,発熱,リンパ節腫脹,上強膜炎が次々に生じ,最終的に,初発の皮膚症状の 4 カ月後に生じた耳介腫脹により,再発性多発軟骨炎の診断に至った。気道や心病変は合併しておらず全身状態は良好であるが,ステロイド内服と免疫抑制剤の併用では,いまだ病勢はコントロールできていない。
    再発性多発軟骨炎は,軟骨組織を主体に多彩な全身性の自己免疫性の臨床症状を呈し,寛解再燃を繰り返す。半数以下の症例に皮疹を伴うが,皮疹自体も多様で特異的なものはない。自験例の様に,軟骨炎や鼻軟骨炎などの典型的な症状がない病期での診断は非常に困難である。

  • 日置 紘二朗, 林 宏明, 青山 裕美
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    60 歳,男性。もともと双極性障害で近医通院治療中であった。20XX 年 6 月に尋常性乾癬を発症し,その直後,双極性障害に対してリチウム製剤の内服を開始した。同年 9 月に皮疹が四肢に広がり,ジフルプレドナートを外用した。外用しても,症状の増悪が続くため,20XX+1 年 5 月に当院を受診した。初診時,体幹と四肢に鱗屑を伴った爪甲大からメガネレンズ大までの浸潤の強い紅色局面が散在し,頭皮にびまん性に鱗屑を伴う紅斑がみられた。Psoriasis area and severity index が 20.3,皮疹面積は 15%であった。病理組織学的に尋常性乾癬と診断し,リチウム製剤により増悪した可能性を考え,直ちにリチウム製剤の内服を中止した。リチウム製剤の drug-induced lymphocyte stimulation test の stimulation index は 106%で陰性であった。リチウム製剤の中止後も皮疹の改善は乏しく,追加の治療が必要であった。そこでリチウム製剤による乾癬増悪の機序を考慮して,効果が期待できるアプレミラストの内服を開始した。 アプレミラストを内服後,直ちに皮疹は著明に改善した。アプレミラストを徐々に減量し,最終的に 30 mg を 3 日に 1 回の内服に減量したが,効果は持続している。有害事象として内服初期に倦怠感と嘔気があった。リチウム製剤による乾癬の悪化の機序がアプレミラストの作用機序と拮抗しているため自験例は速やかに改善したと考えた。リチウム製剤とアプレミラストの作用機序について考察し報告する。

  • 免疫染色による ROS1 過剰発現と BRAF V600E 変異蛋白の証明
    山下 珠代, 山﨑 修, 高田 実, 松浦 能子, 谷口 恒平, 後藤 啓介, 森実 真
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    25 歳,女性。初診の約6 カ月前より右上腕に紅色結節が出現し,急速に増大した。肉眼所見では 5×10 mm の境界明瞭な紅色扁平結節が存在しそれと隣接して 2 mm の黒褐色の小色素斑が認められた。病理組織学的に結節部は Spitz 母斑,小色素斑は黒子様色素細胞母斑であった。さらに,免疫組織化学的に結節部には ROS1 蛋白の過剰発現が,色素斑には BRAF V600E 変異蛋白が検出され,両者は発生機序の異なる病変であることが示された。

  • 加古 志織, 加藤 裕史, 中村 元樹, 村井 太郎, 芝本 雄太, 森田 明理
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    96 歳,女性。2010 年頃より右内眼角部に出現した褐色斑が徐々に拡大し,径 10 mm 程度のびらんを形成した。外用処置にて改善なく,2017 年に当院へ紹介となり,皮膚病理組織検査にて基底細胞癌と診断した。高齢であり,整容面からも外科的治療はリスクが高いと考えられ,強度変調放射線 2 Gy×20 回照射,電子線 2 Gy×13 回照射を行ったところ,大きな合併症もなく,腫瘍の消失を認めた。照射終了後 3 年が経過するが,再発を認めていない。腫瘍の部位が内眼角にあることから,機能や整容性,また年齢を考慮し,基底細胞癌に対して放射線治療を行った 1 例を報告する。

  • CDX2 染色の診断学的意義
    橋本 弘規, 辻 学, 永江 航之介, 仲本 すみれ, 江藤 綾桂, 大野 文嵩, 大野 麻衣子, 伊東 孝通, 中原 剛士, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:83 歳,男性。初診 2 年前より肛門周囲にびらんが出現し,出血を伴っていた。初診時,肛門部に扁平隆起性の紅色局面を認めた。症例 2:80 歳,女性。初診 3 年前より肛門周囲に疣状結節を自覚していたが,外陰部まで病変が拡大した。初診時,肛門を中心に一部に結節を混じる隆起性局面を認めた。両症例において,表皮内に胞体の明るい異型細胞が増殖し,増殖細胞は CK7 陽性,CK20 陽性,GCDFP15 陰性,CDX2 陽性であり,直腸/肛門管癌の表皮内進展と診断した。肛門 Paget 病と直腸/肛門管癌の表皮内進展は HE 染色では鑑別が困難であるが,CDX2 染色は消化器癌に対する感度・特異度が高く,乳房外 Paget 病との鑑別に有用であると考える。

  • 菅原 有紗, 阿部 俊文, 矢口 貴志, 谷川 亜紀, 磯田 美和子, 川口 文, 名嘉眞 武国
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 83 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    67 歳, 男性。初診の約 3 カ月前より左下腿屈側に皮下腫瘤を自覚し,その後増大し当科を受診した。 初診時には左下腿屈側に 50×50 mm の表面平滑で淡い紅色の皮下腫瘤を認めた。MRI 検査所見から神経鞘腫や血管腫が疑われたため全摘出術を行う予定であった。手術中,腫瘍性病変がはっきりせず膿汁の流出があったため,組織提出とともに各種培養を提出し,肉眼的に炎症を伴っている組織の周辺の正常組織を含めて可及的に切除した。組織では膿瘍形成と PAS 染色および Grocott 染色で連珠状の胞子と有壁性の菌糸を認めた。ポテトデキストロース寒天培地にて,黒色で灰色菌糸に覆われた糸状菌様の巨大集落を形成した。リボゾーム RNA 遺伝子の ITS 領域の解析の結果 Exophiala jeanselmeiE. jeanselmei)と同定され,E. jeanselmei による黒色菌糸症(Phaeohyphomycosis)と診断した。追加の治療としてイトラコナゾールを 3 週間投与した。その後 1 年以上再発は認めていない。基礎疾患は軽症の糖尿病のみであったが,趣味に植木の剪定があり,外傷により土壌もしくは植物片からの感染を起こしやすい状況であったと考えた。外傷を受けやすい趣味や職種を持ち,免疫低下が想定される高齢者に皮下腫瘤を認めた場合には,黒色菌糸症を含めた真菌感染症も考慮すべきである。

統計
  • 馬場 まゆみ
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 83 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル 認証あり

    当院における接触皮膚炎の原因物質はハゼの木であることが圧倒的に多い。またマンゴーは特産品の一つであり食することも多いが,ハゼの木とマンゴーの交叉反応を呈する患者は,文献的な報告よりも少ないように感じる。以上から当院の傾向や,ハゼの木とマンゴーの交叉反応率に関して検討した。
    対象は 2014~2018 年の 5 年間に受診した接触皮膚炎患者とし,患者属性・原因物質・受診月・ハゼの木とマンゴーの交叉反応率について,医療記録および問診をもとに検討した。5 年間の接触皮膚炎患者実数は 436 名,ハゼの木による接触皮膚炎患者実数は 202 名,マンゴーによる接触皮膚炎患者実数は 25 名であった。問診にてハゼの木とマンゴーの交叉反応を確認できた症例は 19 名(8.5%)であった。温暖な気候の奄美大島では,ハゼの木による接触皮膚炎は年間を通じて発症するが,草取りをする機会が多い春から秋に多く,とくに台風の前後に庭の掃除をした際に接触してしまうことが多くみられた。マンゴーによる接触皮膚炎は,栽培者は 4 月~9 月に,非栽培者はマンゴーの旬である 7~9 月にみられた。
    江戸時代,木蝋を収穫するため薩摩藩は島民に植樹を命じ,奄美大島には現在でも生活圏にハゼの木が多く生えているため,今後も感作されやすい環境にあると考えられる。また局所のみならず接触皮膚炎症候群,全身性接触皮膚炎,空気伝搬性接触皮膚炎を発症することもあり,啓発が必要である。

研究
  • 中川 秀己, 磯前 和男, 岡元 忠雄, 江藤 隆史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 83 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル オープンアクセス

    日本人尋常性乾癬患者を対象に,カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(Cal/BDP)配合フォーム剤と Cal/BDP 軟膏剤の有効性と安全性を比較検討した。尋常性乾癬患者(182 例)を無作為に Cal/BDP フォーム剤群(87 例)と Cal/BDP 軟膏剤群(95 例)に割り付け,体部標的病変に 1 日 1 回最長 4 週間塗布し,ベースライン時からの乾癬症状の改善度で有効性を評価した。また,両治験薬は標的病変以外の病変部にも実施可能な範囲で塗布した。主要評価項目である 4 週時の標的病変の全般改善度は,Cal/BDP フォーム剤群 98.9%(86/87 例),Cal/BDP 軟膏剤群 93.7%(89/95 例)で,両群間に統計学的な有意差は認められなかった。1 週時および 2 週時の全般改善度は Cal/BDP フォーム剤群では Cal/BDP 軟膏剤群に比べて有意に高く,臨床症状の総スコア減少や略治に至った被験者割合も Cal/BDP フォーム剤群では Cal/BDP 軟膏剤群に比べて早期から高かった。治験薬塗布に要した時間が以前の外用薬と比べて「短縮」したと評価した被験者は,Cal/BDP フォーム剤群(39.5%)では Cal/BDP 軟膏剤群(4.3%)に比べて有意に増加(オッズ比:7.29,p<0.001)していた。副作用が Cal/BDP フォーム剤群の 3 例で認められたが,いずれも軽度であった。本試験で Cal/BDP フォーム剤は,臨床症状の速やかな改善,高い有効性,良好な忍容性を示し,さらに,塗布時間を短縮し,塗布し易い剤形であることを示した。以上により,Cal/BDP フォーム剤は尋常性乾癬外用治療の中心になると期待される。

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