西日本皮膚科
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症例
自然消退傾向を示した Circumscribed Palmar Hypokeratosis
中川 浩一岡林 綾東田 理恵
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2021 年 83 巻 3 号 p. 209-211

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抄録

66 歳,女性。右拇指球部に 25×16 mm の卵円形の皮膚陥凹がみられ,境界は明瞭で表面は紅色調であった。ダーモスコピーでは全体に紅色調であり,細かな red dots やこれより大きい white spots が観察された。境界部を生検したが,陥凹部は健常部より明らかに角質が菲薄化していた。病変内の汗腺開口部は正常角層の残存がみられた。以上の所見から Circumscribed Palmar Hypokeratosis(CPH)と診断した。 自覚症状も軽微であり,患者自身も治療を強く望まなかったので無治療で経過をみた。次第に陥凹が弱くなり紅色調も消退した。初診の 2 年 6 カ月後にはほとんど目立たなくなったので終診とした。終診時のダーモスコピー所見では,病変部の色調は一部に red veil をかぶったような部分もあるが大部分は健常部と同じ色調であり,white spots もほとんど確認できなかった。CPH の治療についてはステロイドをはじめとした各種外用剤は無効とされている。切除や遊離植皮術といった手術,液体窒素による凍結療法を行った報告も散見されるが確立されたものはない。自験例は無治療で経過をみたが,2 年 6 カ月後にはほとんど目立たなくなった。内外の文献を渉猟し考察を加えた。

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