西日本皮膚科
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症例
表皮内外毛根鞘癌
―― 特にその病理組織像について ――
三原 基之
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2022 年 84 巻 1 号 p. 46-52

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抄録

94 歳,女性。病変は左側前頭部の著明な乳頭状変化を示す角化性丘疹であった。腫瘍病変は外方増殖性で,真皮上層までに限局し,部位によって病理組織像は異なっていた。病変中央部は分葉構造を示し,各小葉は最外層の外縁細胞,その内層に基底細胞様細胞,さらなる内層に澄明細胞があった。外縁細胞は部位によっては柵状配列を示した。この部位の腫瘍細胞は全体として異型性の強いものはなく,腫瘍胞巣は毛包下部の外毛根鞘の組織像に類似するものであり,外毛根鞘腫様変化とみなされた。病変辺縁部は外毛根鞘腫とボーエン病の病理組織像を併せもつものであり,悪性外毛根鞘腫とみなされた。正常表皮との境界部では腫瘍細胞の表皮内転移,すなわち Jadassohn 現象がみられた。腫瘍胞巣内に稀に渦巻き構造がみられ,これは外毛根鞘性角化類似変化を示した。また腫瘍胞巣内に毛幹をもつ毛包がみられ,これは毛包中心性の所見であった。腫瘍胞巣の最内層あるいは各腫瘍小葉の接触部位は澄明細胞が好酸性壊死物質となっていた。また稀に各腫瘍小葉の接触部位に囊腫が形成されていた。これらの病理組織学的所見は本例が新しい疾患概念として表皮内外毛根鞘癌 trichilemmal carcinoma in situ の名称で表すことができると思われる。

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