西日本皮膚科
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研究
特発性後天性全身性無汗症に対するステロイドパルス療法の治療成績: 単施設後方視的研究
樋口 実里鍬塚 さやか早稲田 朋香室田 浩之
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2024 年 86 巻 1 号 p. 62-67

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抄録

特発性後天性全身性無汗症(AIGA:acquired idiopathic generalized anhidrosis)では,生活の質に大きな支障をきたしている症例に対してステロイドパルス療法の適応が検討される。当該施設におけるステロイドパルス療法の奏効率を評価する目的で,2014 年から2022 年の 9 年間において当該施設でステロイドパルス療法を施行した AIGA 患者 22 例について後方視的検討を行った。当該施設の AIGA 患者は若年の男性に多く,重症度にばらつきがあった。ステロイドパルス療法の有効例は 11 例(50%)であり,男性患者,若年患者で有効率が高い傾向にあった。他に有効率の高かった影響因子は,ステロイドパルス療法前の抗ヒスタミン薬の増量服用,ステロイドパルス療法前の運動習慣,1 年未満の病歴,メチルプレドニゾロン(mPSL)1000 mg/ 日によるステロイドパルス療法,夏季にステロイドパルス療法実施,ステロイドパルス療法後の発汗トレーニング等であった。また,血清中 CEA についての検討を行ったところ,CEA が10.0 ng/ml 以上の患者群で ステロイドパルス療法の有効例が多かった。CEA が10.0 ng/m 以上の患者群においては,病理所見で汗腺・汗管周囲のリンパ球浸潤,汗腺分泌細胞の膨化,角層の過角化など,AIGA に特徴的な病理所見を認める傾向にあった。

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