西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
最新号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
目次
図説
  • 竹内 聡, 石倉 侑, 米田 玲子, 友延 恵理, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    患者:63 歳,男性

    主訴:鼻部の発赤,腫脹,熱感

    既往歴:特になし

    現病歴:初診の 1 年 3 カ 月前より鼻尖部の発赤を生じた。両耳介も赤かったが初冬のため凍瘡と考えていた。 夏季にも完全に軽快せず,初診 2 カ 月前より鼻部の発赤と腫脹が増悪し,前医で鼻部蜂巣炎としてミノサイクリン,セフジニル,クラリスロマイシンを内服したが難治であった。

    現症:鼻尖から鼻背部,両耳介の耳輪,対耳輪上脚と同下脚にかけて熱感伴う発赤,腫脹がみられた(図 1 a c)。右耳垂には紅暈を伴う痂疲の付着があった(図 1 b)。喉頭浮腫や気管狭窄,眼症状,神経症状,弁膜症症状はなく,心電図は早期再分極のみであった。

    病理組織学的所見:右耳輪部から軟骨を含めて生検した。真皮から皮下組織にかけて単核球細胞の浸潤と脂肪織の変性,線維化がみられ,軟骨周辺部は好塩基染色性が失われ好酸性に変化していた(図 2 ab)。浸潤細胞は CD3,CD4,CD8 陽性の T リンパ球,CD20 陽性の B リンパ球が主体であった(図 2 cf)。

    血液検査所見(下線は異常値):白血球 4100/ul,赤血球 446 万 /ul,血色素 15.2 g/dl,血小板 18.3 万 /ul,CRP 0.03 mg/dl,AST 28 U/l,ALT 27 U/l,クレアチニン 0.87 mg/dl,BUN 20 mg/dl,抗Ⅱ型 コラーゲン 抗体 25.9 EU/ml(陰性:<20,境界:20~25,陽性:>25),リウマチ 因子 5.8 IU/ml,抗核抗体<40 倍,抗 dsDNA 抗体<10 IU/ml,抗 Sm 抗体 2.0 U/ml,PR3-ANCA<1.0 U/ml,MPO-ANCA<1.0 U/ml

    診断:再発性多発軟骨炎

    治療および経過:プレドニゾロン(PSL)15 mg/ 日内服開始 2 週間で症状は鼻尖部の紅斑を残しほぼ消退し,その後もPSL は 3 週間継続し以降は同 10 mg,同 7.5 mg,同 5 mg,同 5/2.5 mg 隔日,同 2.5 mg/ 日と 4~5 週間毎に漸減し,以降同 2.5 mg/ 日隔日を 4 カ 月,一時 PSL 2.5 mg/ 日連日を 4 週間,PSL 2.5 mg/ 日隔日を 7 週間,1 mg/ 日隔日内服を 8 週間と計 1 年 4 カ 月かけて漸減し,終了した。PSL 内服終了後 4 年 9 カ 月時点で症状の再燃はない。

  • 中川 浩一, 東田 理恵, 德田 一三, 大磯 直毅
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    患者:74 歳,女性

    主訴:顔面の色素沈着

    既往歴:高血圧,シェグレン症候群

    薬歴:ジルチアゼム塩酸塩(へルベッサーR®カプセル)100 mg/day,バルサルタン(ディオパン®錠)40 mg/day を 2 年前から内服していた。

    現病歴:初診の半年ほど前から顔面に小色素斑がみられるようになり,次第に増加し,色調が濃くなってきたため近医より紹介された。

    現症:顔面,前頚部に灰青色の小色素斑が散在・集簇していた。特に口囲,下眼瞼に多くみられた(図 1 )。

    病理組織学的所見:表皮基底層には軽度の液状変性がみられ,真皮上層にメラノファージが観察された。

    診断と経過:ジルチアゼムによる Diltiazem-associated photodistributed hyperpigmentation(DAPH)と診断し,ジルチアゼムを休薬させるとともに,タクロリムス軟膏の外用と遮光を指示した。色素斑は次第に消退し,約 1 年 6 カ 月後にはほとんどみられなくなった(図 2 )。

  • 竹内 聡, 石倉 侑, 米田 玲子, 中園 亜矢子, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 5-6
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    患者:50 代,男性

    主訴:鼻部左側の紅色および常色丘疹

    既往歴:両鎖骨骨折で手術(高校生の頃)

    現病歴:初診1 年前より鼻部左側に一部赤みを伴う丘疹が集簇性に多発してきた。近医皮膚科にてナジフロキサシンクリームを処方されていたが難治のため前医を受診し当科を紹介され受診した。

    現症:鼻部左側に紅色~常色の丘疹が集簇性に多発していた(図 1 ab)。

    病理組織学的所見(HE 染色):紅色丘疹と常色の丘疹をそれぞれ生検した。紅色丘疹の角層・表皮には著変なく,真皮には浅層の血管拡張や膠原線維の増生,毛包脂腺周囲へのリンパ球や好中球浸潤と類上皮肉芽腫形成があり(図 2 a),一部では変性物を取り囲むように島状に増生し,多核巨細胞もみられた(図 2 b)。常色丘疹の角層・表皮には著変なく,真皮では浅層の血管拡張と豊富な皮脂腺と膠原線維の増生と毛包脂腺周囲にリンパ球や好中球の小集簇がみられた(図 2 cd)。いずれの丘疹にも標本中に毛包虫はみられず,Grocott 染色,Ziehl-Neelsen 染色では真菌,抗酸菌様構造はみられなかった(図示なし)。

    診断:肉芽腫性酒皶

    治療および経過:確定診断後,ドキシサイクリン 100 mg/ 日の 2 週間内服と桂枝茯苓丸 6.0 g/ 日の内服,メトロニダゾールゲル 1 日 2 回外用による治療開始 8 週後には鼻部左側の紅色,常色丘疹ともにかなり軽快した(図 1 c)。メトロニダゾールゲルは 16 週間で中止し,治療開始 20 週現在,紅色丘疹もさらに落ち着き再燃なく経過している。

  • 篠田 英和, 篠田 大介, 桐生 美麿
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 7-8
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    症例:40 歳,男性

    現病歴:数年前に右陰囊部の赤色丘疹に気づいたが放置していた。徐々に増大した。

    現症:右陰囊に径 8 mm の有茎性,軟性の紅色小腫瘤を認める(図 1 )。

    病理組織学的所見:腫瘍巣は表皮から舌状に連続性の増殖を示し(図 2 a),好塩基性,類円形の核を有し,細胞質の乏しい N/C の高い細胞(poroid cell)で構成されていた(図 2 b)。間質には毛細血管の拡張,増殖と形質細胞,リンパ球,組織球の浸潤を認めた。

    診断および治療:Pinkus 型の Eccrine poroma と診断し,局麻下で全摘出した。

綜説
  • 海老原 伸行, 今福 信一, 栗本 沙里奈, 大槻 マミ太郎
    原稿種別: 総説
    2024 年 86 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル オープンアクセス

    皮膚科医が日常診療で多く診察するアトピー性皮膚炎患者には,眼瞼炎や角結膜炎以外にもアトピー眼症といわれる円錐角膜,白内障,網膜剝離,緑内障などが合併することが知られている。その発症機序は,アトピー性皮膚炎患者の結膜や眼瞼皮膚の強い瘙痒に対する搔破行動によるものと考えられている。 本稿では,アトピー性皮膚炎に伴うアトピー性角結膜炎の病態と近年注目されている生物学的製剤である抗 IL-4 受容体α 鎖抗体製剤(デュピルマブ)および抗 IL-13 抗体製剤(トラロキヌマブ)によって惹起される結膜炎に焦点を当てて解説する。 これらの抗体製剤を使用する皮膚科医は,アトピー性角結膜炎についての十分な知識を有するとともに,抗体製剤使用に伴う眼科的副反応についても精通し,発現する症状を早期に発見して迅速かつ適切に眼科との連携を図ることが重要である。

症例
  • 小池 貴之, 千貫 祐子, 荻野 龍平, 横大路 智治, 松尾 裕彰, 東儀 君子, 三原 祐子, 和久本 圭子, 山﨑 修
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)は,原因食物摂取に二次的要因が加わった際にアレルギー症状が出現する食物アレルギーの一病型である。 FDEIA の原因食物としては小麦が最も多く,次いで甲殻類が多い。今回我々は,血中エビ特異的 IgE 検査(ImmunoCAP®)陰性の,エビによる FDEIA の 3 例を経験した。いずれもプリック-プリックテストを実施し,1 例目はバナメイエビで陽性(2+),ブラックタイガーで陰性(-),2 例目と 3 例目はバナメイエビ,ブラックタイガー共に陽性(2+)であった。エビによる FDEIA は粗抗原を用いた抗原特異的 IgE 検査の感度が低い可能性があり,またエビの種類によって抗原性が異なる可能性があるため,注意を要する。3 症例について,好塩基球活性化試験やウェスタンブロット法による解析結果と併せて報告する。

  • 松田 杏奈, 安野 秀一郎, 須田 孝博, 白水 舞, 小泉 明子, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    75 歳,男性。初診 4 カ 月前より顔面に紅斑が出現した。次第に背部や前胸部にも皮疹が拡大し,初診 1 カ 月前より両眼瞼に紅斑を伴う浮腫が出現した。ステロイド軟膏,メトロニダゾール軟膏やタクロリムス軟膏の外用を行うも難治だったため当科を受診した。初診時,淡い紅斑を伴う両上下眼瞼の浮腫と前胸部,上背部に浮腫性の紅斑を認めた。紅斑はいずれも鱗屑を伴っていなかった。また,瘙痒や関節痛,筋力低下もなかった。血液検査,尿検査と造影 CT 検査で特記所見を認めなかった。病理組織学的所見では表皮基底膜部の軽度の液状変性や血管,付属器周囲のリンパ球の浸潤に加え,真皮全層にかけてムチンの著明な沈着を認めた。蛍光抗体直接法では IgG が表皮基底膜に線状に付着していた。Lupus erythematosus tumidus(LE tumidus)と診断し,ヒドロキシクロロキン内服で治療した。開始約 6 週間で眼瞼浮腫は著明に改善した。エリテマトーデスに関連する眼瞼浮腫は比較的稀であり,広く認識されていない。LE tumidus は,露光部に好発する滑らかな結節や蕁麻疹様の局面で,鱗屑や萎縮がないのが特徴である。病理組織学的には,表皮の変化はほとんどなく,血管周囲や付属器周囲の著明なリンパ球の浸潤と真皮のムチンの沈着を特徴とする。一般的に予後は良好である。紅斑を伴う眼瞼浮腫が持続する患者を診察する際には,エリテマトーデスを鑑別すべき疾患にあげる必要があることを自験例は示唆している。

  • 駄阿 也眞人, 古森 環, 川上 かおり, 安野 秀一郎, 久本 岳史, 髙旗 博昭, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    61 歳,男性。X-1 年 5 月より全身の瘙痒を自覚し,近医皮膚科で プレドニゾロン(PSL)10 mg/day の内服,クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏の外用,光線療法で治療されたが難治であった。徐々に症状の増悪を認めたため,血液検査を行ったところ抗 BP180 抗体の上昇を認め,X 年 2 月に前医総合病院皮膚科を紹介され受診した。蛍光抗体直接法で表皮真皮境界部に IgG と C3 の線状沈着がみられ,水疱性類天疱瘡(Bullous Pemphigoid:BP)の診断で高用量ステロイド内服(PSL 1 mg/kg/day),シクロスポリンやミゾリビンなどの免疫抑制剤の追加,ステロイドパルス療法,IVIG(免疫グロブリン静注)療法,血漿交換療法が施行され,入退院を繰り返しながら加療されたが,瘙痒と水疱の新生が持続し,精査・加療を目的に X 年 5 月に当院を紹介され受診した。初診時の BPDAI(Bullous Pemphigoid Disease Area Index)は 95 点,抗 BP180 抗体は 3830 U/ml と高値であった。高用量ステロイド内服に加え,アザチオプリンの追加,IVIG 療法を施行されたが瘙痒と水疱の新生が持続していた。既往症にアトピー性皮膚炎があり,Th2 炎症が強力に病態に関与している可能性を考慮されデュピルマブの投与が開始された。その後,瘙痒と水疱新生は速やかに消退し,病勢のコントロールが可能となり,以後 PSL の減量も可能となった。重篤な副作用がなく,アトピー性皮膚炎で使用経験のあるデュピルマブは BP の有力な治療選択肢の 1 つになりうると考えられる。

  • 筒井 ゆき, 古賀 文二, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    37 歳,男性。幼少期より掌蹠,手背,足背の角化を伴う紅斑があり,当科初診の 4 年前より,近医にてステロイドもしくは活性型ビタミン D3 製剤の外用治療が行われたが難治であった。徐々に皮疹は前腕,肘部まで拡大したため当科を受診した。父方祖母と父の掌蹠に病変があったようだが詳細は不明であった。受診時,掌蹠にびまん性の角化性紅斑がみられ,手背には光沢を有する常色~橙色の丘疹が多数みられ,一部は集簇し局面を形成していた。同部の病理組織像は,過角化と顆粒変性を伴わない表皮肥厚がみられ,臨床像と併せて transgrediens を伴うびまん性掌蹠角化症と考えた。患者血液から全エクソーム解析を行い,AQP5 遺伝子にヘテロ接合性に病原性のミスセンス変異を検出し,ボスニア型掌蹠角化症(palmoplantar keratoderma, Bothnian type;以下 PPKB)と診断した。エトレチナート 20 mg/day 内服を開始し,手背から前腕の丘疹は徐々に平坦化した。PPKB は,AQP5 遺伝子変異による常染色体顕性(優性)遺伝を示す稀なびまん性掌蹠角化症の一型で,確定診断には家族歴の聴取,臨床像,病理組織像の検討に加え,遺伝学的検査が必要である。本邦で頻度の高い長島型掌蹠角化症とは遺伝形式が異なるため検査を行う意義は大きいと考える。確立された治療法はないが,自験例では少量エトレチナート内服で角化性局面の改善がみられた。

  • 水田 康生, 瀧川 充希子, 眞部 恵子, 浅越 健治
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    55 歳,男性。コントロール不良の2 型糖尿病および高度の末梢神経障害を認めていた。10 カ 月前より左母趾に水疱,びらんが出現した。6 カ 月前より同部に角化性の紅色局面や腫瘤を形成し,増大してきたため当科を受診した。職場で安全靴を使用しており,日常的に左母趾に圧迫を受けていた。左鼠径に無痛性,弾性硬のリンパ節を複数触知した。有棘細胞癌も鑑別に隆起が強い部の部分切除生検と左鼠径リンパ節生検を施行した。腫瘤部の病理組織では,表皮は著明な角化を伴って内外方向に乳頭状に肥厚していたが,増生する角化細胞に異型性はなく,間質には毛細血管と膠原線維の増生を認めた。生検リンパ節には悪性所見なく反応性の変化であった。患者背景や臨床所見と合わせてverrucous skin lesions on the feet in diabetic neuropathy と診断した。患部の除圧,角質溶解剤およびステロイド外用剤塗布にて経過をみたところ縮小傾向となった。自験例では隆起部の部分切除により効果的に除圧することができ,良好な結果が得られたと思われた。外科的切除が無効であったとする症例報告もみられるが,自験例のように大型の腫瘤を形成する場合,腫瘤の減量手術は治療選択肢の一つとなり得ると考えられた。

  • 松田 絵奈, 佐藤 絵美, 筒井 ゆき, 桐生 美麿, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    21 歳,男性。10 歳頃から灰青色斑が生じ 12 歳から頰部まで急速に拡大した。頰部を搔破すると時々小さな毛塊が出ることがあり近医より当科を紹介となった。初診時,前額および両頰部に灰青色斑がみられた。同部位の皮膚生検を施行したところ,病理組織では真皮深層に内部に軟毛を有した囊胞が複数認められ eruptive vellus hair cyst(EVHC)の診断となった。EVHC の発症部位は躯幹が最も多く,次いで下腿,頭頚部,上肢に多い。EVHC は毛囊腺腫系由来の囊腫であり,類似する腫瘍としてsteatocystoma multiplex が挙げられる。両者は若年者の胸部に好発する点,多発性小囊腫である点は類似しているが,steatocystoma multiplex では囊腫壁に脂腺が付着している点,囊腫の内容物が脂腺排出物であることから鑑別することができる。両疾患は過去に KRT17 変異が病態形成に関わる可能性が指摘されている。本症例は父と妹にも同様の症状があり顕性遺伝する KRT17 変異の存在が疑われたが,全エクソーム解析では KRT17 に既報の病原性と考えられるバリアントは認められなかった。EVHC についての文献的考察を加えて報告する。

  • 田中 由華, 須田 孝博, 上田 茜, 浅野 伸幸, 赤松 洋子, 中村 好貴, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    55 歳,女性。初診 1 年 2 カ 月前に腰部に圧痛のない皮下硬結が出現した。徐々に増大したため,初診 10 カ 月前に前医を受診した。同部位の生検を施行され,病理組織診断が自壊した粉瘤の疑いだったことから,経過観察されていた。その後,右肩部にも同様の皮下硬結が出現したため,初診 3 カ 月前に切除したところ,Rosai-Dorfman 病の診断だった。全身検索のため,初診 1 カ 月前に全身 CT を施行した結果,他臓器病変はなく,右肩・腰部・背部に皮下腫瘤を指摘された。病変が多発し,切除後の再発も認めたため,精査加療目的に当科を紹介され受診した。全身麻酔下に腫瘍部を切除され,腰部背部は縫縮,右肩部は欠損が大きかったため人工真皮を貼付した。病理組織学的に,真皮から皮下脂肪織に多数の組織球が浸潤し,emperipolesis を認めた。免疫組織化学染色では S-100 蛋白陽性,CD1a 陰性であり,皮膚 RosaiDorfman 病と診断した。右肩の病変については,筋膜を含めて切除されたものの,断端陽性だったために追加切除後に全層植皮術を施行された。皮膚 Rosai-Dorfman 病は比較的予後良好な疾患とされているが,再発のリスクを常に念頭に置きながら注意深い経過観察を要する。

  • 上井 貴絵, 土橋 人士, 池田 志斈
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    今回胆囊癌から臍へ転移をきたした 2 例を経験した。症例 1 は 83 歳,女性。初診 3 カ 月前より臍部に結節が出現した。腹部単純 CT で胆囊に不整形の腫瘤があり,肝門部を中心に肝内に進展する腫瘤・多発リンパ節転移・腹膜播種がみられ,胆囊癌の Stage Ⅳと診断した。緩和ケア目的に療養型病院に転院し,発症から 7 カ 月後に永眠した。症例 2 は 69 歳,男性。初診 1 カ 月前に近医かかりつけ内科の血液検査で肝胆道系酵素の上昇があり,造影 CT を施行した。肝門部に腫瘍がみられた。2 カ 月前から自覚していた臍部結節の精査のため当科を受診した。造影 CT で肝門部に不整形の腫瘤があり,肝内に進展する腫瘤と多発リンパ節転移,腹膜播種,多発肺転移を認め,胆囊癌の肝門部浸潤と診断した。臍部結節は皮膚生検より胆囊癌の皮膚転移と診断した。外来でゲムシタビン + シスプラチン療法を施行中で,腫瘍は縮小し浸出液もなくなり経過は良好である。臨床で臍部の腫瘍をみた場合,常に本疾患を念頭に置くことが重要であると考えられた。

  • 杉本 紘子, 高須 啓之, 山本 薫, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    51 歳,男性。初診 1 カ 月前より左頰部に皮膚腫瘤が出現し,急速に増大した。初診時,左頰部に 27.5 × 22.1 mm の紅色腫瘤を認め,37.6 × 31.4 mm の硬結を伴っていた。病理所見では,表皮直下から真皮全層にかけて中型から大型の核を有するリンパ球がびまん性に浸潤し,免疫組織化学染色では腫瘍の大部分で CD3,CD4,CD30 が陽性,ALK は陰性であった。遺伝子再構成では T 細胞受容体 Cβ1 鎖および ɤ 鎖 Jɤ 鎖でモノクローナルな遺伝子の再構成を認めた。造影 CT では全身の転移の所見はなく,末梢血に異型リンパ球はみられなかった。以上より,原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma ; Pc-ALCL, T1aN0M0)と診断した。トリアムシノロンアセトニドの局所注射を 3 回行ったが,腫瘍は増大傾向であったため,腫瘍から 1 cm 離して全切除を行った。深部断端が陽性であり追加切除を行った後に,浅腸骨回旋動脈穿通枝皮弁で再建を行った。術後 1 年 4 カ月の造影 CT で右肺底部の結節を認め,PET-CT で同部位に FDG の集積があったため,右下葉切除術を行った。病理所見で ALCL と診断し,術後 BV-CHP 療法を開始した。Pc-ALCL は予後良好とされているが,自験例のように単発であっても急激に腫瘍が増大する症例では治療後も注意深い経過観察が必要であると考えた。

  • 中山 優香, 石倉 侑, 竹内 聡, 阿南 健太郎, 舟橋 ひとみ, 松本 大輔, 玉江 昭裕, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 86 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 は 67 歳,男性。当科初診 5 年前に骨髄異形成症候群に対し同種造血幹細胞移植をし,ボリコナゾール(VRCZ)を内服していた。4 カ 月前から頭頂部に生じた有棘細胞癌(SCC)に腫瘍切除と分層植皮,術後放射線照射を行ったが,右頚部リンパ節転移及び局所再発した。5 カ 月後に頭蓋骨外板含めた拡大切除,右側頚部リンパ節郭清と耳下腺を摘出し,皮弁形成と全層植皮で再建した。再手術 25 日後に SCC の肝転移が判明し,1 年 5 カ 月後に SCC で死亡した。症例 2 は 77 歳, 男性。当科初診 13 年前に急性リンパ性白血病で臍帯血移植後,8 年前より肺アスペルギルス症で VRCZ を内服していた。1 年前より頭頂部に生じた疣贅状皮疹から転じた SCC で,腫瘍切除と人工真皮植皮を行った。術後は創部感染を繰り返し,6 ~7 カ 月後に頭蓋骨外板を含めた拡大切除と分層植皮を行ったが,術後は次第に体力が低下し,10 カ 月後に急性腎不全,基礎疾患により死亡した。VRCZ による光線過敏症と SCC 発症の本邦報告は未だ少ないが,SCC の侵襲度が高く予後不良例も多い傾向である。VRCZ 長期内服患者は基礎疾患も多彩で,高齢,免疫抑制状態など発癌リスク・予後不良因子を併せ持つ患者が多く,遮光指導,定期的な皮膚観察に加え,SCC の病期進行前の早期発見が重要と思われる。今回 VRCZ の長期内服中に生じ,予後不良であった SCC の 2 症例を本邦既報例と併せ報告する。

研究
  • 樋口 実里, 鍬塚 さやか, 早稲田 朋香, 室田 浩之
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 86 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    特発性後天性全身性無汗症(AIGA:acquired idiopathic generalized anhidrosis)では,生活の質に大きな支障をきたしている症例に対してステロイドパルス療法の適応が検討される。当該施設におけるステロイドパルス療法の奏効率を評価する目的で,2014 年から2022 年の 9 年間において当該施設でステロイドパルス療法を施行した AIGA 患者 22 例について後方視的検討を行った。当該施設の AIGA 患者は若年の男性に多く,重症度にばらつきがあった。ステロイドパルス療法の有効例は 11 例(50%)であり,男性患者,若年患者で有効率が高い傾向にあった。他に有効率の高かった影響因子は,ステロイドパルス療法前の抗ヒスタミン薬の増量服用,ステロイドパルス療法前の運動習慣,1 年未満の病歴,メチルプレドニゾロン(mPSL)1000 mg/ 日によるステロイドパルス療法,夏季にステロイドパルス療法実施,ステロイドパルス療法後の発汗トレーニング等であった。また,血清中 CEA についての検討を行ったところ,CEA が10.0 ng/ml 以上の患者群で ステロイドパルス療法の有効例が多かった。CEA が10.0 ng/m 以上の患者群においては,病理所見で汗腺・汗管周囲のリンパ球浸潤,汗腺分泌細胞の膨化,角層の過角化など,AIGA に特徴的な病理所見を認める傾向にあった。

治療
  • 梅澤 慶紀, 横田 成彬, 吉岡 大輔, 可児 毅, 村上 尚史, 松井 慶太
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 86 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    マキサカルシトール / ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル配合製剤(マーデュオックス® 軟膏,以下,本剤)について,尋常性乾癬に対する観察期間 1 年間の特定使用成績調査を実施し,使用実態下における安全性および有効性について検討した。 安全性解析対象は 324 例で副作用は 2.8%(9/324 例)に発現したが,医薬品リスク管理計画で重要な特定されたリスクとした高カルシウム血症や急性腎不全は認められなかった。また,本剤投与終了後に未投与期間を経て再投与された際に副作用の発現は認められなかった。副作用は全て既知,非重篤であり,安全性上の懸念は認められなかった。 有効性解析対象は 321 例で,医師の総合評価(Investigatorʼs Global Assessment,以下,IGA)に基づき皮膚所見を 5 段階(0~4)で評価した。本剤初回投与期間における最終評価時の Treatment Success 症例割合は 38.0%(120/316 例)であり,IGA で評価した改善割合は 69.6%(220/316 例)であった。Treatment Success 症例割合が約 4 割,改善割合が約 7 割であり,再投与症例や4 週を超える長期使用症例においても効果が維持されたことから,有効性が確認できたと考える。 本調査により本剤の安全性および有効性が明らかとなり,実臨床においても尋常性乾癬の治療に有用な薬剤であることが示された。

世界の皮膚科学者
  • Chao-Kai Hsu
    原稿種別: letter
    2024 年 86 巻 1 号 p. 83-84
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル 認証あり

    Dr. Chao-Kai Hsu currently serves as a Professor in the Department of Dermatology at National Cheng Kung University Hospital in Tainan, Taiwan. He completed his dermatology residency at the same institution and obtained a PhD from the Institute of Clinical Medicine at National Cheng Kung University. Dr. Hsu has been a research fellow at Hokkaido University Graduate School of Medicine's Department of Dermatology in Japan (Feb-Apr, 2008) and at St John's Institute of Dermatology in the UK (Dec 2014 to Dec 2016). In 2018, he received a Diploma in Dermatopathology from the International Committee for Dermatopathology. With a background in dermatopathology and molecular genetics, Dr. Hsu focuses on various challenging or rare skin conditions, including keloids and epidermolysis bullosa (EB).

feedback
Top