2024 年 86 巻 6 号 p. 592-598
当科では 2016 年 4 月から 2023 年 3 月の間に,躯幹部に多発する紅斑や褐色斑を認め,病理組織学的に皮膚への形質細胞浸潤を認める症例を 4 症例を経験した。全員女性で当科初診時の平均年齢は 39.5 歳であった。そのうち 2 症例は複数領域でリンパ節腫脹があり,リンパ節生検にて濾胞間に多クローン性の形質細胞増多を認めた。2 症例とも高ガンマグロブリン血症,高 IL-6 血症を認め,HHV-8 は陰性であった。これら 2 症例は診断基準を満たしたため特発性多中心性キャッスルマン病(Idiopathic Multicentric Castleman Disease:iMCD)と診断した。残りの 2 症例は初診時にリンパ節腫脹はなく,全身症状や臓器障害はなかった。これらは iMCD の診断基準を満たさず,皮膚形質細胞増多症(Cutaneous Plasmacytosis:CP)と診断した。しかし 1 症例は高 IgG 血症を認め,倦怠感や鉄剤不応性の貧血などの全身症状が徐々に進行した。リンパ節腫脹も出現し初診 6 年後に施行したリンパ節生検にて iMCD と診断した。残りの 1 症例は全身症状やリンパ節腫脹なく経過しており CP としてフォローしている。これら 4 症例の肉眼的・病理組織学的皮膚所見は共通したものであり,CP として発症し iMCD の診断に至った症例もあることから,両者は主要病変の分布が異なる同一スペクトラムの疾患の可能性がある。