西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
ジアフェニルスルホンが有効であった DPP-4 阻害薬関連水疱性類天疱瘡の 1 例
馬場 まゆみ
著者情報
ジャーナル 認証あり

2025 年 87 巻 2 号 p. 132-136

詳細
抄録

65 歳,女性。皮疹出現の 2 年半ほど前から糖尿病にてビルダグリプチンを内服していた。体幹や四肢に強い痒みを伴う 1 cm 以下の水疱が繰り返し出現し,ステロイド外用療法に難治であった。皮疹は搔破によるびらん,色素沈着が散在しているが,膨疹や紅斑はごく軽度であった。病理組織学的所見,抗 BP180NC16a 抗体陽性より DPP-4 阻害薬関連水疱性類天疱瘡と診断し,ビルダグリプチン中止とステロイド外用療法を行うも軽快しなかったが,ジアフェニルスルホン治療開始 1 カ月後には軽微な症状は持続するものの症状の改善を認めた。内服開始から 2 カ月後,感冒にて体調を崩した際に患者判断で内服を中断してしまったが症状の悪化なく経過している。また,ジアフェニルスルホンの副作用として生じた貧血により HbA1c は偽低値となり,内服中止により貧血と HbA1c の回復を確認した。ジアフェニルスルホンによる溶血性貧血は常用量でも内服 1 カ月前後で生じる。著明な貧血症状を呈さず,内服継続可能な場合が多いが,赤血球寿命が影響する HbA1c は偽低値を呈するため,DPP-4 阻害薬関連水疱性類天疱瘡の治療中においては,血糖値の評価にグリコアルブミンを用いるよう推奨されている。2 型糖尿病の薬物療法において DPP-4 阻害薬は低血糖発作を起こしにくい特徴からシェアを拡大しているが,使用頻度の増加に伴い DPP-4 阻害薬関連水疱性類天疱瘡の報告が増えており,糖尿病治療医との連携が重要である。

著者関連情報
© 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top