2006 年 55 巻 4 号 p. 422-424
【症例】79歳女性.歩行中に車と接触し転倒し右大腿骨転子部骨折受傷.7日後,麻酔管理下にCHS施行した.術後4日目,大腿部の腫脹増大し,Hb 4.5と著しく低下した.輸血施行後,造影CTにて右大腿骨内側に出血と思われる造影効果を認め,大腿深動脈損傷が考えられたため,血管塞栓術施行し止血した.【考察】牽引手術台を用いての下肢の牽引によって大腿深動脈の緊張が強くなり,横止めスクリュー刺入のドリリングの際に損傷が起こったものと思われた.またTAEによる塞栓術は侵襲が少なく選択的に止血が行えるため,有効な治療法であった.大腿骨転子部骨折に対する骨接合術はありふれた手術ではあるが,大腿深動脈損傷について認識し,注意深く手術を行う必要がある.