2007 年 56 巻 3 号 p. 414-417
合併症をもたない高齢者の膝蓋腱断裂の症例を2例経験したので報告する.〈症例1〉72歳,女性.階段を1段踏み外した際に受傷した.膝蓋腱実質部での断裂に対して,腱の縫合,半腱様筋腱での補強,膝蓋骨・脛骨間をワイヤーで固定した.〈症例2〉72歳,女性.歩行中に段差につまずき受傷した.膝蓋腱は浅層・深層の2層に分かれており,それぞれ脛骨粗面,膝蓋骨付着部で断裂していた.浅層は脛骨粗面に,深層は膝蓋骨へ引き込み縫合し,膝蓋骨・脛骨間をワイヤーで固定した.両者共に術後7ヶ月以上経過しているが,膝関節屈曲は100度で屈曲制限が残存した.〈考察〉基礎疾患のない高齢者の膝蓋腱断裂は非常に稀である.若年者の良好な成績とは異なり屈曲制限が残存する可能性があり,治療に際しては,今後も検討する必要があると考える.