2007 年 56 巻 4 号 p. 626-629
日常生活における前屈動作は股関節と脊椎の協調動作であり互いに密接に関わりあっている.変形性股関節症患者における股関節と脊椎の前屈時の動作関係を明らかにするために,立位中間位および座位前屈位の単純X線側面像を用いて股関節可動域と腰椎可動域を測定した.対象は初回人工股関節全置換術を受けた40~88歳(平均62歳)の変形性股関節症の女性患者164例であり,術前の単純X線で評価した.中間位からの前屈動作で股関節と腰椎と合計して80~120度屈曲していた.腰椎変性の強い高齢者ほど前屈時の腰椎可動域が小さく,変形性股関節症があるのにもかかわらず主に股関節で前屈していた.中高年者は腰椎変性が進行していないため,主に腰椎で前屈しており股関節可動域は小さかった.そのため変形性股関節症の罹病期間が長くなると腰椎へ過度の負荷がかかることとなり,腰痛や腰椎変性の原因となることが予想される.