2008 年 57 巻 1 号 p. 143-145
【はじめに】手掌部に発生したガングリオンにより,尺骨神経,正中神経の運動枝に麻痺が生じた2例を経験したので報告する.【症例】症例1:第3,4CM関節から発生したガングリオンにより,尺骨神経深枝のみが圧迫されていた.顕微鏡視下に摘出行い,速やかに症状回復した.症例2:母指球部に発生したガングリオンにより,正中神経運動枝が圧迫されていた.手根管開放,ガングリオン摘出,母指対立再建行い,ADLは向上した.【考察】ガングリオンにより尺骨神経,正中神経麻痺を呈する症例は多数報告されているが,本症例のように手掌部に発生し,かつ特異な神経症状を呈する症例は稀である.手根管及びギオン管以遠での絞扼性神経障害は,多種多様な症状を呈するため,正確な理学所見が重要であり,MRI,筋電図等の補助診断を追加することにより,速やかに診断を下す必要がある.