2012 年 61 巻 1 号 p. 41-44
受傷時に見逃された舟状骨遷延治癒骨折に対し,低出力超音波パルス(LIPUS)を併用した保存治療を行った1例を報告する.症例は,16歳女性.3ヵ月前にバレーボールで右手関節を捻り受傷したが,近医で捻挫と診断された.1週間のギプス固定を受け一時,手関節痛は改善したが,2週間前より疼痛が再発し当科を受診した.圧痛が嗅ぎタバコ窩(snuff box)にあり舟状骨骨折を疑ったがX線像で骨折を認めず,MRIで骨折が判明した,いわゆる舟状骨不顕性骨折であった.8週間の保存治療を行うも疼痛の改善なく,thumb spica splintを併用したLIPUS治療を開始し,8週間で疼痛・圧痛の改善とMRI信号強度の改善を認め,競技へ復帰した.受傷後1年11ヵ月のMRI T1強調像で低信号域はほぼ消失し,疼痛や圧痛,可動域制限はなく,バレーボールを継続している.