2016 年 65 巻 3 号 p. 532-535
近年,高齢者の骨折増加に伴い,骨盤輪骨折が占める割合も増加傾向にある.今回,当院における高齢者骨盤輪骨折症例の治療経過を検討した.2008年4月から2015年6月までに当院に搬入された全骨盤輪骨折240症例の中で70歳以上の高齢者骨盤輪骨折85症例を対象とした.年齢は70歳から92歳の平均79.8歳,骨折型はAO分類に従いTypeAは19例,TypeBは46例,TypeCは20例であった.治療は56症例に経カテーテル的動脈塞栓術(以下TAEと略す),20症例に創外固定術,9症例に内固定術を施行した.一般的にTypeA症例は安定型骨折と称されるが,約半数にTAEを要した.高齢者は予備能が低く容易にショックとなり得るため,循環動態が不安定もしくは経過中に破綻を来し得る症例では骨折形態に関わらず,早期TAEによる動脈性出血のコントロールが推奨され,初期治療が重要である.