2007 年 104 巻 8 号 p. 1172-1182
炎症性腸疾患(IBD)の自然史あるいは長期経過をreviewし,その時代的な改善の有無をみた.その理由は,IBDに対する治療が進み,その自然史が改善されたと推定されるからである.しかし,実際の欧米からの報告をみると手術率や死亡率などの指標の改善は確実でない.その理由として,強力な治療法のうち,緩解維持に使われる薬物や経腸栄養療法がまだ徹底していないことが挙げられる.緩解維持の目標にも,粘膜治癒をもたらすまで強力に推し進めることが重要とされつつある.その際には粘膜病変治癒を評価するための画像診断を活用することが求められよう.さらに,緩解導入剤を適切に選択し,開始する時期の決定,緩解維持療薬の投与量の調節など改善の余地は大きいと考えられた.