2008 年 105 巻 7 号 p. 994-1002
食道表在癌に対する主な治療法はEMRと食道切除再建術であり,化学放射線療法(CRT)の適応も拡大しつつあるが,位置付けはなお不明確である.粘膜癌のほとんどはEMRにより根治が得られ,内視鏡治療の適応を外れた例や,EMR後に転移リスクの高いことが判明した例は外科治療やCRTの適応となる.内視鏡治療ではEMRに加えESDが保険収載され,急速な普及が見込まれる.しかし,既にEMRを中心とする内視鏡治療の適応は広く局所制御成績も非常に良好であるため胃や大腸の場合と異なり,内視鏡切除術の適応拡大,生存率やQOLの向上には大きく影響しない可能性が高い.胸腔鏡下食道切除術は臨床研究段階にあるが,粘膜下層癌はその最も良い適応病変の1つである.