わが国の全死亡者に対する膵癌死亡者の割合は経年的に増加しており,またその増加のスピードも速いといえる.また,腫瘍最大径2cm以下の膵癌(ts1膵癌)であっても生命予後が不良な場合もある.したがって膵癌は正常膵に突如として出現し急速に進展すると考えがちであるが,膵癌は多段階発癌が本体であるとする報告が増加しつつある.このため膵癌診断に先行して幾つかの前駆画像所見を呈する可能性がある.本稿では,膵癌の前駆画像所見としての「膵石」,「膵管拡張」,「膵嚢胞」,「膵萎縮」について自験例を交えて概説した.膵癌高リスク群を効率よく設定して,膵癌前駆画像から膵癌発生を早くに捉えて根治術に結びつけることが必要と考える.