日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
106 巻, 8 号
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総説
今月のテーマ:膵癌のリスクファクターと前駆病変
  • 正宗 淳, 粂 潔, 下瀬川 徹
    2009 年 106 巻 8 号 p. 1147-1155
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    近年,遺伝子異常を背景とする慢性膵炎症例が少なからず存在することが明らかとなった.カチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子は遺伝性膵炎の原因遺伝子として同定され,膵分泌性トリプシンインヒビター(SPINK1)遺伝子変異は若年性の特発性慢性膵炎や家族性膵炎と関連する.遺伝的背景を有する慢性膵炎は若年より炎症を繰り返すことで,膵癌発症のハイリスクとなる可能性がある.実際,PRSS1遺伝子やSPINK1遺伝子に変異を有する慢性膵炎症例では,膵癌発症が高頻度にみられることが報告されている.遺伝子解析が成因解明のみならず経過観察や治療方針の決定に有用な情報を与えると期待される.
  • 阪上 順一, 片岡 慶正, 鈴木 教久, 信田 みすみ, 十亀 義生, 保田 宏明, 吉川 敏一
    2009 年 106 巻 8 号 p. 1156-1162
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    わが国の全死亡者に対する膵癌死亡者の割合は経年的に増加しており,またその増加のスピードも速いといえる.また,腫瘍最大径2cm以下の膵癌(ts1膵癌)であっても生命予後が不良な場合もある.したがって膵癌は正常膵に突如として出現し急速に進展すると考えがちであるが,膵癌は多段階発癌が本体であるとする報告が増加しつつある.このため膵癌診断に先行して幾つかの前駆画像所見を呈する可能性がある.本稿では,膵癌の前駆画像所見としての「膵石」,「膵管拡張」,「膵嚢胞」,「膵萎縮」について自験例を交えて概説した.膵癌高リスク群を効率よく設定して,膵癌前駆画像から膵癌発生を早くに捉えて根治術に結びつけることが必要と考える.
  • 水野 伸匡, 清水 泰博, 澤井 勇悟, 山雄 健次
    2009 年 106 巻 8 号 p. 1163-1167
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/05
    ジャーナル フリー
    膵癌は罹患率と死亡率がほぼ同数である極めて予後不良な疾患である.膵癌の予後不良の原因のひとつは早期発見が困難なことで,発見時には既に切除困難な場合が多い.最近,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に通常型膵癌が高率に合併することがわかり,膵癌のリスクファクターとして重要であるとの認識が拡まってきている.しかし,IPMNの自然史やIPMN合併膵癌とIPMN由来浸潤癌との鑑別が必ずしも容易でないことなど,未解決な問題も残されており,今後の研究によってそれらが明らかにされ,膵癌の早期発見におけるIPMNの臨床的意義がさらに増すことが予想される.
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