日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
今月のテーマ:大腸鋸歯状病変へのアプローチ
大腸鋸歯状病変の臨床病理と分子異常
菅井 有山本 英一郎木村 友昭山野 泰穂鈴木 拓
著者情報
キーワード: SSA/P, 鋸歯状腺腫, MSI, CIMP, BRAF
ジャーナル フリー

2015 年 112 巻 4 号 p. 661-668

詳細
抄録

鋸歯状病変は,過形成性ポリープ(HP),鋸歯状腺腫(TSA),SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)に主に分類される.HPの分子異常にはKRASおよびBRAF変異がある.TSAは左側大腸に好発し有茎性形態を示す.TSAにはBRAF変異とKRAS変異を機転とする2つの経路があるが,いずれも癌化の際の分子病型はMSS(microsatellite stable)型とされる.一方SSA/Pは右側大腸にしばしばみられ,無茎性病変が多い.SSA/Pの分子異常は,BRAF変異,CIMP(CpG island methylation phenotype)が特徴的であるが,MSI(microsatellite instability)はSSA/Pの癌化の際にみられることが多い.Annexin A10(ANXA 10)がSSA/Pに特異的であることが報告された.ANXA 10はMSI陽性大腸癌にも特異的に発現しており,MSI陽性大腸癌の分子マーカーになる可能性がある.大腸鋸歯状病変の臨床病理像および分子異常の特徴が明らかになることで,早期の治療ターゲットとして癌の予防や早期治療が可能になるものと思われる.

著者関連情報
© 2015 (一財) 日本消化器病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top