年齢調整大腸がん死亡率は治療法の進歩などにより近年減少しているものの,大腸がん患者数自体は増加している.罹患数増加に対して有効な先制医療の確立は医療経済学的にも非常に期待される研究課題/政策課題であり,現時点における答えの1つは,アスピリンを大腸がん化学予防剤として利用することだと思われる.果たして「がん予防により2050年までに80歳未満のがん死亡者をなくす」ことが実際可能なのか? アスピリンのがん予防介入試験を端緒として,ゲノム情報,環境要因,政策上の問題点など,がん化学予防“薬”の実用化に向けての克服すべき課題・問題点を本稿にて考えてみたい.